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God of Speed! ~映画『世界最速のインディアン』~

『世界最速のインディアン』2005年ニュージーランド・アメリカ
監督)ロジャー・ドナルドソン
出演)アンソニー・ホプキンス クリストファー・ローフォード ダイアン・ラッド

あらすじ)ニュージランドで暮らす男 バード・マンローの夢は、アメリカ ボンヌヴィルで行われる競技会に行き、愛車インディアンで世界最速記録に挑むこと。老年にいたり夢果たせずにいたが、先が長くないことを悟り、一念奮起して貨物船に乗り込み渡米する。

金もない、右も左も分からぬアメリカでの旅。
しかし、バードは初めて出会う人々に助けられながら、憧れの地ボンヌヴィルに辿りつく。
見渡す限りの塩平原ー
地球の裏側からやってきたバードに、スピードの神様は微笑むのか?

1000cc以下のオートバイ 最速記録保持者バード・マンローの実話に基づいた作品。


God of Speed

 映画好きライダーM氏から借りて観た作品。

 アンソニー・ホプキンズ主演のロード・ムービーである。ニュージランドの田舎街で暮らす男が、バイクのスピード記録に挑むため、遠くアメリカはボンヌヴィルの塩平原を目指す。レクター博士(『羊たちの沈黙』)の強烈なイメージがあるアンソニー・ホプキンスが、一転して愛すべきバイクキチガイを演じている。

 こんなふうに書くと、バイクやスピードに興味がない人は、楽しめるかいささか不安になるかもしれない。けれども、アンソニー・ホプキンス扮するバード・マンローは情熱と人情味にあふれ、周囲の人々を惹きつけるチャーミングな男。オカマ、寡婦、休暇中の兵士・・・旅先で出会う様々な人をバードは愛したように、きっと観る人すべてに温かいメッセージを伝えてくれるだろう。老若男女問わずおススメの一作だ。

 クリック!→1920年製インディアンのレプリカの画像が見れます。

 自分のためとバイクに詳しくない人のために、バードが乗った1920製インディアンについて少し触れておく。

 インディアンというと、バイク好きの人にはとても懐かしいもののようだ。
 インディアンはかつてハーレー・ダビットソンと競合していたインディアン・モトサイクル社が世に送り出したバイクで、1921年には世界最速の176km/hという記録を出す。当時インディアンというと高性能、高品質の代名詞となっていたそうだ。
 この頃の代表的なモデルはSCOUT(スカウト)とCHIEF(チーフ)で、バード・マンローが乗っていたのはインディアン・スカウト。ノーマルでは80km/h程度しか出ないこのバイクをバードは改良を重ね、200km/h出るようにしてしまう。非公式の速度記録はなんと331km/h!!
 作中、雪のように白い塩平原を赤い流線形のインディアンが駆けてゆく光景は圧倒的。そのスピード、迫力の姿はロケットというべきか、魚雷というべきか。想像がつくと思うが、そんな高速を出せばメカも熱くなって火を吹く。バードは脚を火傷する。

 ちなみに、インディアン・モトサイクル社は世界大恐慌や第2次世界大戦の煽りを受け、1953年にはインディアンの工場を閉鎖している。
 今となっては、幻の名車なのだ。

 バードは若い頃に惚れ込んだこの名車とともに夢を追う。年金をもらう年齢になっても果敢に記録に挑むバードの姿は、夢を追うのに年齢は関係ないことを思い出させてくれる。それと同時に、夢は自らの力だけではなく、周囲の人々の力によって叶えられてゆくのがよく分かる。
 バードは人々を愛す。ゆえに、人々はバードを愛す。バードの人生には夢がある。夢があるから、バードの人生はパワフルに人々を巻き込んでゆく。

「夢を追わない人間は野菜と同じだ」

「(レース中の)5分は一生にまさる。
 一生より充実した5分間だ」

「人間の一生は草に似ている。
 春が来ると元気に伸びて
 中年を迎えて実り、
 秋風が吹くと枯れ尽きて
 もう生き返らない。
 死んだらそれで終わり。
 昔からそう思っている…」

 いずれも作中の台詞だが、本物のバード・マンローが語った言葉をそのまま使っている。もし、DVDを買おうという人がいれば、特別版DVDの付いたゴット・オブ・スピードエディションをおススメする。バード・マンロー本人のインタビューが収録されており、映画には脚色があるとはいえ、実際のバード・マンローがいかに個性的で自由に生きた、稀有な人物であるかを見ることができるだろう。
 そして、俳優に負けない魅力的な風貌。作中のバードは女によくもてるが、実際のバードもどうやらそうだったようだ。しかし、もてるのはあたりまえ。彼はただの飛ばし屋じゃない。バイクを通して人生哲学を実践した唯一無二のライダーなのだから。

 God of Speedに命を捧げた夢追い人。
 予備知識があっても、心熱くなることまちがいなしの一作。
 そして、笑えます!

-2009年4月16日 DVDにて初鑑賞-
(この記事は、SOSIANRAY HPに掲載した記事の再掲載です。写真はKENRO撮影)


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