コンサル会社は人材登用もフレキシブル
モデル美女こと佳乃2号登場に翻弄されるヒルズ氏たち。さらに、ボツ案にするはずだった「湯けむり蕎麦打ち」企画のキャストに佳乃2号を使えとの指示を聞き、思わぬ飛び火に驚愕するのであった。(前回)
読者諸君、私は知っているのだよ。社長が人差し指のみでタイピングしていることをーー。だからか、社長からのメールは異常に句読点が多いのだよ。うん? それはまた別の問題?
さ、仕事仕事、、、
◆お嬢&新人Boy、出陣
「「 では、行ってきます。。。」」
Xデーが来てしまった。
何としてでも阻止したかった「湯けむり蕎麦打ち」企画は、わが社の社長、クライアントである某メディア狸役員、広告代理店の前髪カール、この3人により完全に仕組まれていたのだ。
こうなっては腹をくくるしかない。
コンサルは常に論理的にプロジェクトを遂行している風に見えるかもしれないが、その実、こういった謎の横やりに悩まされることも多い。ふつうは横やりなど全力回避なのだが、自社の親分までグルとなると不可避だ。
残された対処方法は、被害範囲の限定だ。
我々メディアチームは、一切結果に責任を取らないこと、稼働は撮影当日の立ち合いのみに限ること、ブラインドタッチ講座は後回しにすること、を約束し企画を渋々飲むこととなった。
「衣装はトリーパーチじゃなきゃヤダァ」
佳乃2号の勘違い要求をスルーし、無事United Arrrrowsオリジナルブランドに変更することで経費を抑える。
いやー疲れる!疲れるぞ!!!
とにかく、この忙しい最中ではあるが撮影にお嬢&新人Boyを送り込むはめになってしまった。
「お嬢氏さん、ここまできたら楽しみましょう!ね!?」
両手にお嬢氏の荷物をすべて持ち、笑顔で機嫌をとる新人Boy氏。
能力差が社内格差に発展ーー。
美しいまでの事例だ。お嬢の昇進も近いだろう。
◆佳乃氏の昇格
申し訳なさから二人をビル出口まで見送り、やれやれストレスで禿げそう、と戻った時だ。
おや?
ドアを開けた先には、並んで立つ社長と佳乃氏。
念のため、これは1号のほうだ。
2号出現で最近ご機嫌斜めなのだが、、、
「この度、佳乃くんは総務部長に昇格した」
総務部長?
そんな役職はなかったはずだが、、、
「おめでとう!!!」
パチパチ、、、パチパチ、、、
まばらに起こる拍手。
年収上げて、ご機嫌取りかーー。
加速度的に悪化する社内の雰囲気。転職してきたときも空気の悪さに目がやられそうになったが、2号出現以降まるで冬の北京(*)ではないか。
◆爆乳総務の活用
「疲れマーックス!」と叫びたい衝動を抑え席に着く。と同時に、左前方から何らかの圧が、、、これは、、、
人呼んで、爆乳総務だ。
「ヒルズさん、メディカルチームがお呼びです」
また何かあったのか?
不審に思いつつ角刈り氏&ギャル氏の待つ会議室へ向かう。
「あーごめんね急がしいときに、15秒くれるかい」
コンサルの「15秒くれ」は信用してはいけない。絶対だ。(*2)
「爆乳総務君に、一時的にプロジェクト支援してもらうことになった」
なに!?
実は、人が足りなくてな。
困った顔をする角刈り氏を見て、少し心が痛む。メディカルチームを兼任しているお嬢氏が、佳乃2号騒動のせいで実質稼働していないからだ。
「彼女、前職でバイオベンチャーの総務をしていたんだって」
ギャル氏が改めて爆乳総務を紹介する。
そうか、だから妙に有能だったのか。
角刈り氏とチーム全体の稼働を調整し、なんとか年末まで乗り切れそうなことを確認。クライアントにも、新メンバー追加は連絡&了承済みだ。
爆乳総務こそ昇給させるべきだ!との話になったが「逆に気負ってしまいます」と本人が断ったそう。まさかの助っ人だが、久々に希望が見えてきた。
とはいえ、爆乳がメディカルチームへーー。
角刈り、ギャル、爆乳。並んだだけで濃すぎるメンツだが、そこじゃない、この違和感は、、、
何かが、引っ掛かる。
しかし、考える暇もない。
ブラインドタッチ&湯けむり騒動で他プロジェクトの準備が遅れている。
違和感を追いやり、冬の北京化したフロアに戻るのだった。
(次へ)
(*) エレベーターピッチの影響か、「15秒だけくれる?」と言う方が多いが、大抵ややこしい話題をふられ10分以上に膨らむ。今回のように。
(*2) 冬の北京は暖房による排気ガスで大気汚染がひどく、まったく行く先が見えない状況になる。まるで私のヒルズ勤務のようだ。
Twitter: @soremaide
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