見出し画像

古来より伝わるハーブの力「ローズマリー」を知る

ローズマリーは、庭に植えておけばほっておいても元気に育ち、1年中収穫を楽しむことができます。

また、ハーブティーや料理、掃除やクラフト、手作り化粧品の材料として活用でき、ハーブの万能選手と言っても過言ではありません。

「いつでも収穫できること」「育てるのが簡単なこと」「活用法が多岐にわたること」これらの理由から、私が一番生活に取り入れているハーブがローズマリーです。

今回はそんなローズマリーの自然療法の歴史を、いくつかの時代と共に振り返ってみたいと想います。

■ ローズマリーはどんなハーブ?

【 基本情報 】

ローズマリーは地中海沿岸原産で、シソ科のマンネンロウ属の多年生常緑灌木です。大きく分けると、立性、匍匐性ほふくせいの2つに分かれますが、この両方の性質をもつ半匍匐性のローズマリーも存在します。

我が家にあるローズマリーは、ウッドローズマリーと呼ばれる半匍匐性で、初めは上に向かって伸び、そのあとは下に向かって垂れ下がるタイプです。毎年、青みがかった濃い紫の花を咲かせて楽しませてくれます。

□ 学名【Rosmarinus officinalis】


属名のRosmarinus「ロスマリヌス」は、ラテン語が語源の「海のしずく」からきています。これは、ローズマリーが海に面した崖によく見られることが由来とされています。
種小名のofficinalids「オフィキナリス」は、「薬用の」という意味があり、ローズマリーが昔から薬用に用いられてきたことが伺えます。

■ 歴史からみる自然療法


ローズマリーについての記述が残されている最古の物は、紀元前500年頃の石板と言われています。ですが、それよりももっと昔、紀元前3100年頃のエジプト第1王朝の墓からローズマリーの枝が発見されました。つまり、今から約5000年以上前から、ローズマリーは人々にとって身近な植物だった事が伺えます。

では、自然療法としてはどのように活用されてきたのでしょうか?
歴史で追って説明していきます。

□ 古代ギリシャ


古代ギリシャでは、記憶力を高めるためにローズマリーを髪に挿す風習がありました。同じ理由で、学者や学生たちはローズマリーの冠を頭に載せていたとも言われています。

現在でも、「若返りのハーブ」「記憶力のハーブ」として知られるローズマリーですが、それを裏付けるように東京工科大学では「ローズマリー由来の物質がアルツハイマー病を抑制」との研究結果を報告しています。

また、研究結果の中には記憶機能の回復も見られたというのですから、古代の人々は体感としてローズマリーの効能を理解していたのでしょう。

▼外部リンク
プレスリリース 東京工科大学

□ 古代ローマ


ローマ皇帝ネロの軍医だったペダニウス・ディオスコリデス。

彼が書いた著書に、17世紀まで薬のバイブルとしてヨーロッパで絶大な影響力を持っていたとされる薬草学の本『マテリア・メディカ(薬物詩)』があります。

その中で、ローズマリーは非常に優れた薬草として紹介されており、医療や美容に適しているとされています。

・「体を温める作用があり、ローズマリーを煮たものを飲むとあらゆる病気  
  によい」
・「ローズマリーの香りには、心身の若さを保つ働きがある」など 

< マテリアメディカ抜粋 >

□ 14世紀 中世ハンガリー


<ハンガリー・ウォーターの逸話>
ローズマリーとアルコールで作られた薬水を、1年間使い続けたハンガリー王妃イザベラは、どんどん健康と若さを取り戻し、77歳という高齢にもかかわらず、ポーランドの王から求婚されました。

この話は、博識の隠者から、高齢となったハンガリー王妃イザベラに献上された「若返りの処方箋」がもとになったと言われています。

アルコールを利用した香水のはじまりとも言われ、手書きの処方がウィーン王立図書館に今でも保存されています。

ちなみに、ハンガリー王妃は当時リウマチと痛風に悩まされていたそうですが、ローズマリーは現在でも関節痛などに用いられるハーブとしても有名です。

また、ハーブやアロマが好きな人は、ほとんどの人が知っていると言われるくらい有名なお話なので、実際に作ってみたことがある。という人も多いのではないでしょうか?

私も、よく講座で生徒さんとハーブとウォッカで作り、化粧水として、また料理や手作りハーブ酒として楽しんでいます。

■ 中世ヨーロッパ・ローズマリーの活用法


代表的なローズマリーのお話をさせて頂きましたが、この他にもどのような使い方をされてきたのか、一例をあげてみたいと思います

□ ローズマリーの香りで殺菌


ローズマリーを燃やすことで、病室や病人の部屋を香りで消毒していたとされ、これは20世紀初めまで続けられたとされています。

□ スローイングハーブ


疫病が蔓延しないように、殺菌・抗菌作用を持つハーブを床に敷き詰め予防する方法で、ローズマリーも代表的なスローイングハーブの1つでした。

□ 厄除けの為の花束


14世紀から18世紀ごろまで、香りのよいハーブを花束にして、疫病除けに持ち歩く習慣がありました。有名な物に「タッジー・マッジー(別名ノーズゲイ)」がありますが、殺菌力の強いローズマリーは必ず花束に加えられたそうです。

■ 最後に・昔から伝わる先人の知恵


近年、「統合医療」「予防医学」の考えが注目されるに伴い、「クナイプ療法」「アーユルヴェーダ」「メディカルハーブ」「フラワーレメディ」など、自然療法(伝統療法)を生活に取り入れる人達が急速に広がっています。

私もハーブ講師として、「ハーブの持つ力をもっと身近に感じてほしい」という思いから、料理やクラフト、ハーブティーなど簡単に楽しく取り入れられる情報を発信させていただいています。

その際に大切にしているのが、今日紹介した様なハーブの歴史を合わせて紹介していくことです。

薬草としてだけでなく、料理や宗教、また文化の象徴として、ハーブがどれだけ人間の身近に存在し、その力を分け与え寄り添ってきた物だったのか。

古来より伝えられ続けた先人たちの知恵。

それを知ることによって、より深くハーブを身近に感じることができるのだと思います。

ハーブが好きな方
これからハーブを学びたいと思っている方
講師として活動している方

少しでもハーブに興味がある人は、ぜひハーブの歴史にも目を向けて頂けると嬉しいです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?