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ゲーム開発における『スクリプター』の役割とは? 演出と編集作業を通じて、仕上げを行う重要なお仕事です(ノベルゲーム制作講座38 スクリプト編①)

スクリプトとは、直感で操作できる簡易プログラム言語。
絵素材を表示するなど、ゲーム内演出を行うために必要。
ト書き=演出指示に従い、スクリプトを打ち込んでいく。

●ヒント

スクリプターとは?

スクリプトを用いて、
ゲーム内の映像や画像の切り替えを行ったり、
キャラの立ち絵の動きを制御して演出として組み込む仕事。

プログラム知識は必要なく、演出&編集のセンスが問われます。

 ※ 台本=スクリプト と混同しやすいのでご注意ください。


■スクリプトの定義

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スクリプトとは、プログラムが行う一連の処理手順を、
簡易な言語(これをスクリプト言語と呼ぶ)で記述したものです。
ちょっと何を言ってるかわかりませんね。

詳しくはググってもらうとして、ここでは簡単に
「人間が直感で理解できるような『やさしい言語』で
プログラムの処理命令を記述したもの」

と覚えておいてください。


■演出を行うには、スクリプトを打つ必要がある

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テキストとイラスト、BGMだけでは、ノベルゲームは作れません。

各種素材をゲームエンジンに実装し、ゲームとして成立させるのは
上記した『スクリプト』と呼ばれる簡易機械言語を用いて、
『テキストやイラストを画面上に表示(or BGMを鳴らす)』
という命令を実行しなくてはなりません。



スクリプトを打つ際に参照するのが、
前の記事で説明したト書きに残した演出メモです。

------------------
;※BGM:ここで悲しそうなメロディを鳴らす
------------------

とト書きに書いてあったら、
演出を組み込むスクリプターは、
「えっと、悲しそうなBGMは……5番と指定してある」な
リストから該当するBGMを選び、

------------------
[BGM file005 loop=true]
------------------

と、スクリプト命令文を打ち込みます。


[BGM file005 loop=true]と書いた謎文字列がスクリプトの正体です。


■実際のスクリプトはこんな感じ

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スクリプトがどのようなものかは、
例文を見てもらった方が理解が早いと思います。

たとえば「背景:教室」をゲーム画面に表示させたい場合。
通常は、プログラム言語を用いて命令文を書かなくてはなりませんが、
スクリプトエンジンを使うと

---------
[bg class=back    file=bg_001  fade=normal time=1000]
(↑背景表示する命令 ↑ファイルを参照 ↑フェードイン形式
---------

という記述だけで済みます。
(命令式はエンジンにより異なります)

「背景CG:教室(bg_001)を1秒かけてフェードイン表示させる」
という命令(スクリプト)をエンジン側が解読して、
自動的にコンピューター言語へ変換(コンパイル)してくれるわけです。
「file=bg_001」の内容を変えれば、別の背景を表示できます。


スクリプト構文に書かれた文章の意味さえ理解できれば、
誰でも簡単に演出を組めます。

習うより慣れろ。
入門書かリファレンスを読みながら
試作ゲームを作るのがスクリプトを覚える近道ですよ。


初心者さんへ個人的なオススメは、ティラノスクリプト。

最新版だと、スクリプトを用いずとも
素材をドラッグ&ペーストすることでノベルゲームが作れて、
PCやスマホなどマルチプラットフォームにも対応。
スクリプト入門講座の書籍もあります。

スクリプト命令ってどんな書き方するんだろう?
というサンプルもご覧になれます。


■ト書きと演出とスクリプト

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スクリプト=演出は、テキストに書かれたト書きを目安に行います。
ト書きがなければ、手探りで演出を組まなくてはなりません。

スクリプトを意識しないでシナリオを書くと
「服装差分が指定されていない」「どこの背景を使えばいいかわからない」
「イベントCGを表示するタイミングが不明」
と現場が混乱して、
意図しない演出を組ま(さ)れることになります。


「だったら、キャラの登場時に毎回服装を指定しないといけないの?」

と驚いた方もいらっしゃるかもしれませんが

「はい。その通りです」

シナリオの冒頭や、場面(シーン)が変わったら
「登場するキャラの服装差分、背景(時刻)」を「必ず」指定します。


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とはいえ、そこまで身構える必要はありません。

プロットを作る段階で、
該当シーンに登場するキャラと服装、背景の情報をまとめたはずです。
それらの情報を、ト書きとして冒頭に書いておけば事足ります。

シーンの途中で背景が移動したとき、時間帯が変わったとき、
キャラの服装が変わったとき、キャラが登場or退場したときは、
その旨を書いたト書きを残しましょう。


■指定する素材の名称はリストに従って!(切実)

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ト書きに残す演出メモですが、
基本的に仕様書に沿って素材を指定してください。

たとえば
「校舎:小学校」「校舎:高校」という二種類の背景素材があり、
それぞれに「昼」「夕方」時間帯差分があった場合、
ト書きには「校舎:小学校。昼」と書いてください。

ト書きに「校舎」とだけ書かれると「どっちの校舎だ?」と混乱します。
また、背景の時間帯を指定しないと「昼? 夕方? どっち」となります。

ト書きとはスクリプト指示書です。

意図する演出が行われるように、
正確&詳細な指示を書くように心がけましょう。


■指定する素材はリストに従って!(二度目)

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それともうひとつ。
仕様書に存在しない素材や、実現不可能な演出を書かないでください。

たとえば、仕様書には城の背景は存在しないのに
「ここでロックハート城の応接間の背景を表示」と書いたり、
「BGMリストにはないけど、フルオーケストラの生演奏が聞こえてくる」
と書いたりですね。


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(実際に空下が撮ってきたロックハート城)


「リストにはないけど、どうしてもこの素材がほしい!」という場合は、
演出に必要な素材をテキストにまとめて、ディレクターに渡しましょう。
無茶な演出要求でも、時間とコストが許せば実現可能だったりします。

最悪のケースは開発が佳境を迎えた段階で、追加素材が発覚することです。
「時間があれば追加できたのに……」と悔し涙を浮かべるパターンは、
全員が不幸になるので絶対に避けましょう。


■スクリプターとは演出家で編集家

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内勤ライターとして、美少女ゲーム業界で15年以上働いてきた経験と、そこで得たノウハウを文章にまとめています。ゲーム業界特有の謎規則や技術解説、仕事に取り組む際の心構えなどもご紹介。応援してくださると定期的に記事が更新されます(人間だもの)