見出し画像

食の風景「ホットケーキで朝食を」

朝一番の日差しが降り注ぐお台所の窓前は、わが家の一等地です。そこには古いテーブルが置いてあります。今朝はこのテーブルで朝ごはんを頂く事にします。

春めかしいテーブルクロスを広げたら、お気に入りのお皿たちを次々と並べます。桜色の平皿には果物を、今朝は苺とキウイとりんごを用意。夕べ作ったトマトスープをコンロで温めて、菜の花色のスープカップへ二人分。コーンの黄色、人参の橙色が食欲をそそります。それから飲み物。今日は紅茶にしようと決めていたのです。銘柄は主役に合わせてスモーキーなアッサムに。そして、メープルシロップと蜂蜜と、どちらを使おうかいつも迷ってしまいますが、今朝も両方テーブルへ出してみます。後はナッツだけれど、これは自分の取り皿へちょこんと載せようかな。

少しずつ仕上がっていくテーブル上と同時に、お部屋の中にはふんわり甘くて、ほかほかの優しい香りが漂ってきます。私が卓上を整える傍ら、コンロの前ではフライパンへ黙々生地を落とし込んでいる子がいます。今日は休日ですから、朝のごはんは一人ではないのです。

さあ、主役のホットケーキが焼けたら、いつもより少しおしゃれな朝食のはじまりです。ティーカップへ映り込んだレースの模様、透き通るメープルシロップの瓶。心も自然にうきうきしています。

画像1

ホットケーキを食べる日は、いつも家族に焼いてもらうのです。自分でも作れますが、ホットケーキだけは、焼いてもらうのが良いのです。ほかほかのを二枚重ねて目の前へ「どうぞ」と出して貰うのが好きなのです。いつもは食べないものを、いつもとは違った形で頂くところに、他にはない特別な時間を感じます。まさに贅沢を味わう時間です。

更に今朝は趣向を凝らして、絵本の様な朝食を気取ってみようと思い立ったものですから、クロス迄引っ張り出して演出してみました。すると途端に目の前が春めいて、食器棚から持ち出すお皿たちも華やかになりました。今日の朝食の相方も私同様食いしん坊さんです。パンやお菓子を上手に作るわが家のいち料理人さんです。甘いホットケーキとのバランスを取る為、粉引の一皿が異彩を放つ盛り合わせになったのは御愛嬌として下さい。

ホットケーキには四角いバターを載せて、そこへメープルシロップや蜂蜜をかけて食べるのが画になりますね。ただ、自分が食べなくなったものですから家にはバターもマーガリンもありません。全く摂らないわけではないので、偶には買っておくのもいいなと思いつつ、出先では忘れているんです。しかし目の前には出来立てのホットケーキ、フォークを手にしたら、もう全てほったらかしです。先ず一枚目はメープルで。ホットケーキの上へたらり落として、みるみる沁み込んでいくメープル。きらきらと香りが立ちます。カナダの森でメープルの木に囲まれたら、一体どんな匂いがするのでしょうか。子どもの頃からメープルを口にするたびにそう思います。おや、もう待ち切れませんね。

それでは今朝も美味しい朝ごはん「いただきます」

画像3


                     文と料理と写真・いち

                      ※ホットケーキは家族作




お読み頂きありがとうございます。「あなたに届け物語」お楽しみ頂けたなら幸いにございます。