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「野に咲く花のように生きていきたいと、実は保育園児の頃から憧れていたのかも知れない」


♪ 野に咲く花のように 風に吹かれて 野に咲く花のように 人を爽やかにして そんな風に 僕達も 生きてゆけたら 素晴らしい 時には 暗い人生も トンネルぬければ 夏の海 そんな時こそ 野の花の けなげな心を 知るのです ♪       「野に咲く花のように ダ・カーポ」


 小さい頃、両親の好んで見るテレビ番組を、一緒に座って見ていた。時代劇、刑事ドラマ、洋画、邦画。自分達子どものセレクトとなると専らアニメかNHK教育だったが、新聞のテレビ欄を読んでセレクトできる大人たちは、知らない世界をいっぱい教えてくれた。

 ドラマ「裸の大将」もそう云うものの内の一つだった。いつ放送されていたか、時間帯も曜日も何も知らない。ただ今夜はあるよと聞けば、やったーと答え、それまでに多分、風呂とご飯を済ませるよう急かされながらみんなで協力して、それで茶の間に集まってテレビを見ていたような、うっすらとした記憶が或る。映画って本当にいいものですね、それでは、さよならさよなら、さよなら。の時間も、パジャマに着替えて見ていたような気がする。朝ちゃんと起きなさいよ。はい。を合言葉に、見せて貰う。映写機を回すところから、さよならを三回聞けたら、「見た!」と云う気がした。欠伸噛み殺しながら、歯を磨きなさいと急き立てられながら、夜更かししたと満足でいた。

「裸の大将」のドラマの内容は殆ど憶えていない。けれど面白かったから見ていた事は確かだ。独特な口調と、真っ赤な傘と白いタンクトップ、おにぎり、それに主題歌。この歌が好きで、大きくなればなるほど好きで、今でも日常で口ずさんでいる事がある。洗濯物を干しながら、食器を洗いながら。風呂掃除をしながら。部屋で一人、くじけそうになった時も、呟いてみる。優しい歌詞。本当に素朴で、歌いながらトンネルの向こうを想像する。「夏の海」、簡潔な表現が、こうもあっさりと胸に響く。単純なのだけれど丁寧で、だからこそ誰にでもイメージできて、そこはやっぱり眩しいのじゃないかしらと思う。それから、野に咲く花たちのけなげな心に想い寄せて和む。歌う程に物凄く励まされている。更に声音、メロディー。自然風景。どこまでも優しい歌である。寄り添う歌。

 どうやら自分は昔から天然自然が好きで、そこを目指して生きて来たのかも知れないと思い始めている。ここ数年で至った心境とばかり考えていたけれど、自分の根本は変わっていないのかも知れないと思い始めている。

 数日前、不意に「野に咲く~」と歌った鼻歌を、ほんの些細な好奇心で掘り下げていくと、思わぬ自分の人生道が見えて来た。これが「まさか」である。加えて言うと、歌詞を確認するために調べて初めて、ダ・カーポが歌っていることを知った。

 ダ・カーポだとは知らずにずっと口ずさんでいた。ダ・カーポと云えば「空からこぼれたストーリー」である。大好きな歌である。ええ声の犬のシャーロックホームズが活躍するアニメの歌である。今脳内で再生してみればナルホド確かに歌声が同じである。知らないって凄い。全部バラバラで出会って来たものが、何十年の時を経て、突然ぴんと張った糸で繋がる奇跡の妙か、或いは必然。これだから人生は面白いし、知らないことが多くていいなと思う。まだ知る楽しみが残っているから。

 人生道と、共通点。鼻歌を掘り下げてまさかこんなに新しい知識が加わるとは思ってもみなかった。ただ単純に、この歌が好きです、とっても優しい歌でしょう、誰か御存知の方はいらっしゃいませんかと、聞いてみたかっただけだったのですが。これからも誰かに優しくなりたい時、自分を励ましたいときは、「野に咲く~花のように~」と歌って歩いていこうと思う。        

                          いち

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