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こどもの読みもの

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こどもにおすすめの本。 かつて、こどもだった大人におすすめの本。
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2021年9月の記事一覧

生まれ出づる悩み

生まれ出づる悩み

有島武郎 1918

(    悩める君へ )

中学生の君は作家である私を訪ねてきて、画を見てもらいたいと言う。私は君を高慢ちきな若者だと思ったが画を一目みて、あまりの素晴らしさに驚かずにはいられなかった。画の欠点はどこかと聞いてきたので、私がいくつかの指摘をすると「今度はもっといいものを描いてきます」言う。聞くと君は東京の学校に通っていたが、事情があって郷里に帰ると言う。そして君からは、その後

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銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

宮澤賢治 (作品は死後発見される。)

この作品と作品に描かれている星の世界に魅了された人は、それこそ「星の数」。
ある人は、夜空を表現する文体に美しさを感じ、ある人は、星の世界を擬似として夢を見ながら旅をする。また、ある人は・・・・。悲哀感と死の深淵を・・・・。

「ではみなさんは、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐたこのぼんやりと白いものがほんたうは何かご存知で

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耳なし芳一

耳なし芳一

小泉八雲
「怪談」より

今から数百年も昔のことの話で御座います。赤間関、今で言う下関の壇ノ浦ですな。ここの阿弥陀寺に、盲目ながらも琵琶が巧みな少年がおりました。「芳一」という名の彼の平家語りの妙技は「人をして感泣せしめ、鬼神をうごかす」と言われる程に優れたものであったようで御座います。・・・・実際私も聴き入りたいものですな。琵琶法師の語りは鎮魂供養の役割を担うともいいます。この私の哀愁と悲哀の感

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時をかける少女

時をかける少女

筒井康隆 1967

発表からもうこんなに月日が経っている。初めての出会いは映画の形でした。主演は原田知世さん。監督は大林宣彦さん。公開は1983年、角川映画が全盛期の頃。主題歌のイントロを聴くだけで、当時の自分の姿もみえてきて、泣きそうになります。

🎶 あなた
   私の元から
     突然消えたりしないでね・・・・

中学三年生の和子は同級生の、一夫、吾郎と一緒に理科室の掃除を行なってい

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