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銀河鉄道の夜

宮澤賢治 (作品は死後発見される。)

この作品と作品に描かれている星の世界に魅了された人は、それこそ「星の数」。
ある人は、夜空を表現する文体に美しさを感じ、ある人は、星の世界を擬似として夢を見ながら旅をする。また、ある人は・・・・。悲哀感と死の深淵を・・・・。

「ではみなさんは、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐたこのぼんやりと白いものがほんたうは何かご存知ですか。」

星祭りの夜、ジョバンニは銀河鉄道に乗る。見ると前の席にはみんなと川へ烏瓜の燈火を流しに行ったはずの唯一の友達、カムパネルラが座っている。
悲しみと孤独と憧れを乗せて、銀河鉄道は天の川の左岸を北の十字(白鳥座)から南十字星に向かう。そこは、闇と光が織りなす幻想の世界。(銀河鉄道が辿るその道は、ある世界へ続く道だと、後にわかる。)

「もうぢき白鳥の停車場だねえ。」「あゝ、十一時かっきりには着くんだよ。」
「・・・・南十字へ着きますのは、次の第三時ころになります。」

宮澤賢治の世界は五感を刺激します。心の琴線を軽く、時には深く響かせる。音、光、色彩、匂い・・・・。

物語の情景は、文字から。音から。・・・・それも過去の。

川縁には沢山の人だかり。いくつもの灯りが川面を照らす。橋の上に立ってそれらと反対側の暗い川面を見つめるジョバンニ。そこには天空が映り込んでいる。
ぼんやりと白いもの。・・・・天の川。

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