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おはなし書いてます!

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誰にでもあるような一人ぼっちで寂しい気持ちとか、ひっかかってること、読むと少しあったかくなるものから、心が焦げる匂いがするような嫉妬や執着、憎しみみたいなものまで。 絵本のような… もっと読む
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記事一覧

【絵とお話】夜、風船のヒモを切る

こんにちは。 作家ユニットソラニエの、尾崎レミです。 やったー短編を書いたので載せよう!!と思ったんですが、挿絵を描いたらファンタジーになってしまいました。。 この話は全くファンタジーではなく、文体的には結構リアルです…。 表現って難しいですねえ〜…。。(でも絵はやっぱり楽しかった) 普段の戯曲の書き方に近いです。 いつもと比べて少しだけ長めですが、お暇があれば、 読んでもらえたら嬉しいです。 身体中に付いた、風船の糸を切る女の話。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【短編】大きなハサミで断ち切ろう

私の町では、卒業すると立派なハサミが送られてくる。 学生の黒い髪にはわだかまりや青さが宿っている。 髪を切り落とすことによって、 私たちは自由に羽ばたくことが出来る、のだそうだ。 私は早速、大きくて重いハサミで 長いおさげを切り落とした。 編んだままの髪が床に落ちる。 髪は縄のようにしっかりと結ばれていて、 床に落ちた後もほどけることなくそこにあった。 黒黒とした、さっきまで自分の一部であった塊が 恨めしそうにこちらを見ている。 そこには友達と色違いで買ったリボンが付いて

【短編】失敗占い

不条理なお話。 軽く読めます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ある所に占い師がいた。 その占い師は、少し先の未来までに失敗することが分かるという。 毎日行列ができる人気占い師だった。 ある日、占い師の元に男がやってきた。 占い師が水晶を覗くと、車で事故を起こして死んでしまう彼が写った。 これは大変だと他の未来を見てみると今度は強盗がやって来て刺されて死んだ。 バナナの皮で転んで死ぬ。 恋人を怒らせ振られて死ぬ。 どんな未来を見ても、今日中に男

【短編のお話】黒くんとまだ名前も知らない色

久しぶりに絵本のようなお話を書きました。 こどもたちへ。 そして、こどもでも大人でもないあなたへ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あるところに真っ黒な 黒くん がいました 黒くんはとても複雑な色でした 色々な色が混ざって黒くんは生まれたのでした 黒くんはいつも悩んでいました まっすぐ夢を追いかける赤くんや 自分に自信を持っている青くんに憧れました 二人はとてもシンプルな色でした でも黒くんの中にはいつも様々な色が渦巻いて 二人のようにはなれませんで

【絵と超短編】泳げる道

絵付きのおはなし、第二弾、できた!!!!!!!!!! わーーーー!!!!!!! 昨日、1日一本書けるんじゃない?と言われて挑戦したら なんと1日で本と絵、完成まで持っていけました!!! ちょっとした短編ですが、見てもらえたら嬉しいです。 こんな春になりかけの時期に、真夏の話です☺️ 今回はインスタを始めようと思ってインスタサイズで作りました。 画像粗かったらごめんなさい!!! 頭がホワホワするので今日はここまで。 明日も…できるだろうか… 無理せず、でもやってみる!!!

【絵とおはなし】星ネコとおさかな星

こんにちは。 作家ユニット ソラニエの尾崎レミです。 ずっと、書いたおはなしにイラストをつけて発表してみたいと思っていたのですが、目標どおり昨日完成しました…!!!! 昨日Twitterには載せたのですが、Twitterサイズで作ったので多少のぼやけ…ご容赦ください…! 夜空に星を吊り下げているネコのおはなし。 読んでくれてありがとうございました!

どこかの私のパラレルワールド、1月29日。

最近絵を描いてる時に気付いたこと。 フィクションでもノンフィクションでもない、 パラレルの世界の、どこかにいる私や貴方の話。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 夕方。仕事終わりの、しいんと静まりかえった部屋。 外は少し日が傾いてオレンジ色に染まっている。 それを見て僕は何だか寂しい気持ちになった。 「適応できるもんなんだなあ」 一人呟く。 在宅勤務になって三ヶ月。 例の宣言前はお気に入りのカフェで仕事をするのが日課だった。 以前は行かないと落ち着かなか

赤い靴の旅

玄関に二つ並んだ、真っ赤な靴。 それは少女のお気に入りの靴だった 所々少し傷んで味が出ている 優しい少女はその靴を毎日磨き、とても大事にしていた。 でも赤い靴は荒っぽくて少女とは正反対の性格だった だいたいの靴は主人の見てない所でワックスを使って「自分磨き」をするが彼は決してそんなことはしなかった 「みんな主人に媚びやがって」 赤い靴は主人なんか要らないと思っていた 「俺は一人でどこへだって行けるんだから」 ある日、玄関のドアが大きく開け放たれていた 外からふわふわと黄

ペトリコールの夜

夜の坂道、バケツをひっくり返したような土砂降り雨の後。 街灯の光で地面はキラキラと白く光っている。 さっきから口元のマスクが苦しい。 僕は梅雨が嫌いだ。 「苦しいね」 隣にいた彼女がふふと笑った。僕の上司だ。 あまりにも苦しいので、僕は思い切ってマスクを下にずらした。 その瞬間、懐かしいような雨の匂いがした。 マスクをするだけでこんなにも匂いがわからなくなるんだ…僕はすごく驚いた。 どうりで、今年になってから日々が無味無臭なわけだ。 「雨の匂いに名前があるんですけど

どこかの私のパラレルワールド、6月13日。

そのトンネルはとても長くて、出口は全く見えなかった。 ナビが古いのか、トンネル自体も表示されていない。 僕はあくびをしながらハンドルを握る。 「今年も、半分来ちゃったね」 彼女が横でため息をついたので僕は驚いた。 もう六月。でも実感がない。 まるで自分たちの日常が何者かに食べられてしまったような感じだった。 今年はとてもおかしな年だ。 春はいつもより早い春一番に綺麗さっぱり吹き飛ばされてそのまま行方不明になった。 だから今年は桜を見ていない。 さよならもはじめましても同

あの世で待ち合わせ

ピンクと水色と紫の巨大なモクモク雲がうずまく、マーブル模様の空の下。 地面は舗装されておらず、どこまでも黄土色の土が広がっている。 そこにある、少し傾いた「あの世 一番地」という看板。 その看板に、学生服の男の子が腰掛けている。 そこに砂埃を舞い上げながら、自転車に乗ったガイコツ男が通りかかる。 ガイコツ男は彼に気付き、声をかける。 「見ない顔だな。新入りか?」 「あ、はい」 ジロジロと見る。 「はあ…お前何歳だよ? 可哀想にね…」 ため息をつき、再び自転車に乗ろう

あの感情は、きっと龍の姿をしている。

小学校、中学校、高校。 鉛筆、消しゴム、やがてシャープペン。 書いては消し 間違えては消し 紙が汚れて真っ黒になる なんてのは高校ぐらいまでだった 大学では手がすれて汚くなるからとペンを使い 大人になったらあとも残らず画面は真っ白に戻り 新規作成すればなかったことになる 筆圧が強くて 消した文字が分かってしまうことも 跡が残って白が濁ってしまうことも 消し過ぎて紙が破れてしまうことも 今はない 筆圧が強いのは自己主張が強い証拠だと どこかで聞いた事があるけど 筆圧が強い

佐野くんの消しゴム

あるクラスに佐野という生徒がいた 彼は休み時間 クラスメイト達のことをじっと見ていた 長い前髪、光のない真っ黒な目 話しかけても返事はない 担任教師も空気のように扱い、みんな気味悪がって彼を避けていた クラスの問題児の中原にとっても佐野は居ないも同然だった ある日 職員室に忍び込んだ中原はそこで佐野の姿を目撃する 佐野は担任教師の手帳を手に取り、眺めていた 無表情でパラパラとめくり、手を止める そこには猫の写真が挟んであり「可愛いうちの猫」とメモしてあった 彼はポケットか

どこかにある、5月25日。

少し違う世界線の、どこかにいる私達の話。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 静かな夜の、公園のベンチ。 僕はホットコーヒー、 親友の男は缶ビール。 少しみんながそわそわしている、5月25日。 「あいつを倒して全部が終わったらさ、ゆっくり旅行にでも行きたいなあ。見た事ない景色を見て、その場にいるのを体感して。みんな同じこと考えてるだろうな」 親友は缶ビール片手に大声で言った。 僕たちは横並びになったベンチにバラバラに座っていて だから大声なのかと一瞬思ったが、 はじめか