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映画レビュー

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2020年6月の記事一覧

肉弾

あらすじ:昭和二十年の盛夏。魚雷を脇に抱えたドラム岳が、太平洋に漂流していた。この乗組員、工兵特別甲種幹部候補生のあいつは、まだ終戦を知らなかった。あいつが、ここまで来るには可笑しくも悲しい青春があった。 岡本喜八監督の『独立愚連隊』や『独立愚連隊西へ』等のコメディタッチで描かれた作品が私的にどうも駄目だったので、今作品も同様の演出の為期待はしていなかった。しかし、今作品のコミカルな演出が戦争の無意味さを際立たせる相乗効果となっており驚愕させられた。特攻へ行く前日、青年(寺

わたしを離さないで

あらすじ:緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校“ヘールシャム”。そこは、牧歌的な田園地帯にありながら外界からは完全に隔絶され、徹底した管理が行われている謎めいた施設だった。そんな環境の中で、幼い頃からずっと一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミー。やがて18歳となった3人はヘールシャムを卒業し、農場のコテージで共同生活を送ることに。彼等は、初めて接する外の世界に不安や喜びを感じていく。そして、いつしかルースとトミーが恋人になったことで3人の関係も終わりを迎えようとしていたが…。

哭声

あらすじ:警察官ジョングが妻と娘と暮らす平和な村に正体不明のよそ者が住み着いて以来、住人たちは彼のうわさをささやいていた。やがて、村で突然村人が自分の家族を手にかける事件が発生する。 序盤は『殺人の追憶』中盤は『エクソシスト』『ペットセメタリー』ラストは・・・。作品のジャンルがどんどん変化し、怒涛のクライマックスをむかえる大傑作。主人公の警官を演じるのはクァク・ドウォン。対峙するよそ者を演じるのが國村隼。今作品は客寄せパンダ的な役者を起用せず、難解な作品なのに韓国では大ヒッ

残穢

あらすじ:ミステリー小説家の私は、女子大生・久保さんから「今住んでいる部屋で、奇妙な音がする」という手紙を受け取る。その異変を調査するうちに驚くべき真実が浮かび上がってくる。 「呪いの継承」をテーマにした作品は大好きだ。その土地で起こった悲劇は先代、先々代と遡ると悲劇の理由が解明するというわけだ。有名な作品は「八つ墓村」である。「八つ墓村」は戦国時代、とある山中の寒村に財宝とともに逃げ延びてきた8人の落武者たちを村人たちが皆殺しにしてしまったことを発端にして呪いが継承されて

ザ・レポート

あらすじ:アメリカ合衆国上院調査職員であるダニエルは(アダム・ドライバー)9.11テロ事件以降にCIAが行っていた強化尋問プログラムの調査を進めると、CIAが国民に隠蔽していた残忍な行為が明らかになっていく。 昨日、Amazonプライムにて鑑賞。アメリカの映画でいつも羨ましく思うのが政府が行ってきたことを検証する作品が製作されるからである。 今作品では、2014年にアメリカの上院情報特別委員会が公表したCIAの拷問の実態に関する調査報告書を元に描いている。 「映画は教科

パルプ・フィクション

あらすじ:アメリカの低級犯罪小説であるパルプマガジン的なストーリーをコンセプトに二人組のギャング、強盗を計画するカップル、八百長ボクサーの物語が交錯する。 「パルプ・フィクション」を試写会で鑑賞したのが20年以上前。鑑賞後、即にCD屋へ飛び込みサントラを購入したことを覚えている。タランティーノ映画の名シーンに名曲あり! オープニングからの「ミザルー」☞「ジャングル・ブギー」 ツイストコンテストでは「ユー・ネヴァー・キャン・テル」 ミアのツイストコンクールから自宅に戻っ

シャイニング

あらすじ:冬の間閉鎖されるホテルに、作家志望のジャック一家が管理人としてやってきた。そのホテルでは過去に、管理人が家族を惨殺するという事件が起こっていた。 先日、北米公開版(144分)を鑑賞。オリジナル版(119分)なのだが、25分の追加シーンを観るのは初めてだ。追加されているシーンで印象的だった箇所を挙げると・・・ ⭐自宅でダニーが発作を起こし、ウェンディが呼び寄せた女医にアルコールを飲みすぎたジャックが息子ダニーに肩を脱臼させたことがあると説明するシーン。このシーンが

バッド・ジーニアス

あらすじ:優秀な成績を収め、進学校に特待奨学生として転入を果たした女子高生リン。テストの最中に友人のグレースをある方法で手助けしたリンの噂を耳にしたグレースの彼氏パットは、試験中にリンが答えを教え、代金をもらうというビジネスを持ちかける。 今作品は、中国の不正入試事件を題材にしています。「オーシャンズ11」や「ミッション・インポッシブル」のようなスパイアクションの要素を取り入れたカンニングシーンの演出は大変上手く、息詰まる展開に驚かされる。そしてストーリー内で登場人物の紹介

ミスト

あらすじ:激しい嵐が過ぎ去った町に不気味な深い霧が立ち込め、住民たちは身動きが取れなくなってしまう。やがて霧の中に潜んだ正体不明の生物が彼らを襲いはじめる。 今作品は、正体不明の生物をツールにして人間の本質を描いている。人間は結束して立ち向かうのか、圧倒的な力に精神が崩壊してしまうのか、恐怖で人を支配するのか・・・。 太刀打ちできない状況に人間は思考回路が停止し、自分で選択するよりも人に支配されることを選び、その集団を批判する人を排除しようとする展開はリアルで大変怖ろしい

女王蜂

あらすじ:昭和二十七年、伊豆天城の月琴の里にある大道寺家の大時計で、大道寺智子の求婚者の一人、遊佐三郎が廻る歯車に体を引き裂かれ死んでいた。遊佐のポケットには智子から誘いの手紙が入っていた。金田一耕助は、事件直後、京都の山本弁護士の依頼で、十九年前の事件の真相調査のため大道寺家を訪れる。 市川崑監督の金田一耕助シリーズはどの作品も何度も鑑賞するほど好きなシリーズだ。その中で一番好きな作品が「女王蜂」である。 昨日、BSプレミアムにて「女王蜂」を再見。冒頭の殺人シーンから頭

テッド・バンディ

あらすじ:1969年、ワシントン州シアトル。とあるバーで出会い恋に落ちたテッド・バンディとシングルマザーのリズは、リズの幼い娘モリーとともに3人で幸福な家庭生活を築いていた。しかし、ある時、信号無視で警官に止められたテッドは、車の後部座席に積んであった疑わしい道具袋の存在から、誘拐未遂事件の容疑で逮捕されてしまう。 今作品はテッド・バンディと付き合っていたエリザベス・ケンドールが1981年に発表した回顧録『The Phantom Prince: My Life with T

西鶴一代女

あらすじ:社会の底辺で生きている女は、ふと入ったお寺の五百羅漢を見ているうちに、過去に出会った男達の顔を次々に思い浮かべる。そこで生まれた悲喜こもごもを静かに回想し終わると、女は何処 ともなく闇の彼方へ去っていくのだった。 国内では「キネマ旬報」ベストテン第9位の評価だったが、『羅生門』(1950)がグランプリを得た翌 年のヴェネチア国際映画祭で国際賞を受賞、以降この作品は「お春の一生」の題で日本映画を代表するようになり、フランスをはじめとする欧米各国で溝口監督は神格化さ

ハイテンション

あらすじ:マリーは試験勉強のため、親友のアレックスと一緒に彼女の実家を訪れた。その晩突然玄関のドアベルが鳴り、マリーは父親がいきなり男に刃物で斬りつけられるのを目撃。彼女は慌てて自分の痕跡を消し、ベッドの下に隠れるが……。 殺人鬼と渡り合うボーイッシュなヒロインを体当たりで演じた『ロシアン・ドールズ』のセシル・ドゥ・フランスが美しい。 『カルネ』のフィリップ・ナオンが冷酷な殺人者を熱演しているが、無表情に人を殺す姿がリアルすぎて怖い!! そして、アメリカのホラー映画の

デトロイト

あらすじ:1967年の夏、アメリカ・ミシガン州デトロイトで大規模な暴動が発生し、街が騒乱状態となる。暴動の2日目の夜、州兵集結地の付近で銃声が鳴り響いたという通報が入り、デトロイト警察、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元警備隊は捜査のためにアルジェ・モーテルの別館に入る。数人の警官が、モーテルの宿泊客相手に捜査手順を無視した尋問を開始する。 今作品は50年以上前に起こった「アルジェ・モーテル事件」を描いている。アメリカには未だ、有色人種に対する差別が蔓延っているし、社会