尾も白い犬のはなし 3 高安犬物語
“俺は金で犬は売んねえゾとぶっ叩いてくっちゃシ(高安犬物語)“
著者は沢山の作品を著した、本邦における動物文学の第一人者である。その作品から短編5編が収められている。表題の「高安犬(こうやすいぬ)物語」は、初期作品にして直木賞受賞作(第32回、昭和29年)。高安犬とは、山形県の高畠町高安を中心に繁殖した日本犬で、北方系のアイヌ犬と南方系の紀州犬の混血により生じたとされる(1)。現在では絶滅しており、その最後の一頭の物語である。続く2編も、高安犬の血の入った猟犬の物語だ。