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中学時代に知ったインターネットの未来

中学1年時のある日、同じクラスにアメリカから転入生がやって来た。といっても、純日本人の男子である。つまり帰国子女だった。

教室で本人の挨拶が終わると、窓際の一番後ろの席に座った。窓に射し込む日差しが、整髪料で潤った黒い髪をいっそう輝かせた。

そして何より、清潔感があった。白いポロのベストを着て、ネクタイもビシッと決まっている。僕にとって、”優等生”とはこの男のことかと思った。

実際、彼が本当に優等生だと分かるまで時間はかからなかった。

勉強もできる上にサッカーもやる。ゲームもやる。日曜日には、ヘッドギアを装着してローラーブレードを一人で楽しむ彼と遭遇したこともある。性格といえば、お茶目なところもあって親しみやすい。

皆からすぐにニックネームで呼ばれて、クラスの友達とあっという間に仲良くなった。僕は彼とよく遊んだものだ。

当時、彼から送られてきた年賀状を見返してみると、自分の名前の横には「天才」とすべてに書かれていた。豆粒のように小っちゃく(天才)と書いている時もある。その年は自信がなかったのか分からないが、そういう彼から傲慢さや人を見下すような一面を感じることは全くなかった。

当時、世界的に大ヒットした映画「タイタニック」も映画館に一緒に観に行った。彼の家に何人かの友達と泊まりに行った思い出もある。ダンディーで優しそうなお父さん、気品があっていかにも知的な女性のオーラを感じるお母さんも笑顔で出迎えてくれた。

(あぁ、やっぱり両親も違うなぁ)

一番記憶に残っているのは、音楽の授業で彼と一緒にペアを組んで行われたリコーダーのテストである。

順番に2人ずつ、ステージの前に置かれた椅子に座り、クラス全員の目の前で演奏する。とうとう、自分たちの順番がやってきた。緊張が高まる。

僕と彼は椅子に座った。先生の掛け声とともに演奏が始まった。

僕は緊張で指が震え続けていた。中盤までは良かった。が、その指の震えのせいで上手く指が動かない。ついにリコーダーの穴を正確に抑えられなくなった時、僕のリコーダーから

「ヒュルヒュル、ヒュルルル~」

という間の抜けた音がみんなに伝わった。

クスクスという笑い声が僕の耳に聞こえた時、僕はテスト中にもっともやってはならない状況に陥ってしまった。

自分で笑いのツボにはまってしまったのだ。

口元だけは決して離さなかったが、中盤から後半にかけて僕の演奏はもはや曲になっていなかった。それでも僕はなんとか最後まで踏んばった。

「おいおい、頼むぜー!」

テスト後、当然ながら彼に声を掛けられる。彼はまだ笑ってくれたが、先生には酷く怒られた。僕のせいで彼もいい迷惑だっただろう。しかし、彼はそんな状況に動揺せず、坦々と自らの演奏を完璧にやり遂げていた。

翌週のテスト結果で僕は「C」、彼の評価は「A」であったことがそれを証明していた。

彼は中学卒業後、いわゆる名門と呼ばれる高校と大学に進んだ。そして今、大手商社マンとして世界に羽ばたいている。

僕がそんな中学時代を送っていたのは、1990年代終わり。97年から99年頃だ。中学3年時、学年に一人か二人だけ携帯電話を持ち始めているのをみんな珍しがっていた。

それはちょうど、「インターネット」というものが世に普及していく頃だったと記憶している。

ある日、授業の一環でオリエンテーションがあった。視聴覚室に移動して、そこで僕たちはある女性の話を聞いていた。

テーマは、まさにインターネットである。

「インターネットがますます盛んになる時代がやってきます」

「インターネットを通じて世界中の情報を瞬時に知ることができ、人と交流することができるようになります」

「今のうちに、みなさんもインターネットというものを知って、ぜひ活用できるようになりましょう」

当時の僕にとってあまり実感が湧かなかったが、その将来を見据えた女性の落ち着いた話し方、知的な雰囲気から説得力を感じた。だから、今でもその時のことが印象に残っている。

その女性というのは、学校の先生ではなかった。

”天才”と自分で名乗る彼のお母さんだった。

noteを始めて2ヵ月が過ぎた。今、インターネットという力を改めて感じている。

noteを始めたばかりの頃、まさかこんなに幅広い年齢層の人たちと繋がることができるとは想像していなかった。

一時期、Facebookで近況報告をするのに利用していたことがあるが、”友達”の多くがリアルな友達であり知人だった。

noteでは、フォロワーの人たちと誰一人として実際に会ったことがない。お互い会って話したこともなければ、もともと知り合いだったわけでもない。

Facebook以外のSNSから距離を置いていた自分にとって、noteはとても新鮮な場所に感じている。

記事を投稿すると、毎日のようにコメントを書いてくれるフォロワーさんもいる。僕にとって、コメントほど嬉しいものはない。

コメントのやり取りを通じて新しい発見があったり、学ぶことがあったり、また素晴らしい言葉を書き残してくれたりする。

小中学生の書いたnoteを読むことも、僕の楽しみの一つだ。

自分がアウトプットするだけでなく、インプットもできる場所。そして、遠く離れた場所に住んでいる人たちと交流できる場所。

そんなのはもう当たり前の時代なのかもしれないが、この歳になって、改めてインターネットの魅力をしみじみと感じている。

***

トップ画像は、現役中学生でカメラマンを目指している阿部優樹(あべゆう)さんの写真を使わせてもらいました。

彼は北海道に住んでいて、プロのカメラマンになるという夢を持っている。それがどんなことであっても、自分の夢を持ってそれに向かっていく気持ちは大事なことだと思う。未来を感じる。

そんな若さがあふれる中学生と繋がって、とても嬉しく思う。

あべゆうさんの文章や写真から、彼の地元愛、郷土愛を感じる。美しい自然の風景には、北海道ならではの動物や植物を撮った写真も多い。そうした自然を想う、人間味にあふれたあべゆうさんとの交流を僕は楽しんでいる。

北海道は、僕も学生時代に仲間とバイクで走った思い出の場所であり、今でも憧れの場所。

noteでは彼よりも”後輩”にあたる僕が、あまり偉そうなことは言えないけれど、ぜひ彼の記事も読んでみてください。

と、彼の記事のリンクを張ろうとしたら、記事に入ったら僕の名前が!?(笑)なんというタイミングだ。

さりげなく僕を登場させてくれるなんて嬉しい!

バイクに乗っていたのは僕ではないが、いつかそうなることを願いたい。


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