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映画の感想「アンモナイトの目覚め」(2020)

原題:Ammonite
主演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン

あらすじ
1840年代、イギリス南西部の海辺の町ライム・レジスで、世間とのつながりを絶ち暮らす人嫌いの古生物学者メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)。
かつて彼女が発掘した化石は大発見として一世を風靡し、大英博物館に展示されるに至ったが、女性であるメアリーの名はすぐに忘れ去られ、今は観光客の土産物用アンモナイトを探しては細々と生計をたてている。そんな彼女はある日、裕福な化石収集家の妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)を数週間預かることとなる。美しく可憐で奔放、何もかもが正反対のシャーロットに苛立ち、冷たく突き放すメアリー。だがメアリーは、自分とはあまりに違うシャーロットに惹かれる気持ちをどうすることもできない。そしてシャーロットの存在が、次第に、メアリーが頑なに心の奥底に隠していた恐れや秘密、そして彼女自身も知らなかった本当の想いをつまびらかにしていく。

映画.comより引用

これまで一人で生きてきたメアリー。彼女の居場所は、化石が見つかる地元の海岸なのだ。必要以上に他人と関わることなく、毎日、淡々と、家と海岸の往復の日々を繰り返す。

自分が海岸で発掘した化石を、自宅の土産物屋で売ることで、年老いた母と二人でひっそりと生活しているメアリーのもとへ、何やら沈んだ様子の若くて美しいシャーロットがやってくる。

風が吹きすさぶ海岸で、メアリーとシャーロットは心を通い合わせていく。夫に置いてけぼりにされたシャーロットと、一人で化石を採集する孤独な日々を送ってきたメアリー。孤独を抱える者同士が出会ってしまった。

しかし、二人を引き裂く知らせが届く。シャーロットの夫が、自分のもとへ彼女を呼び寄せる手紙を送ってきたのだ。この時代、妻として、夫のもとへ戻らざるを得ないシャーロット。見送るしかないメアリー。

後日、メアリーの老母が亡くなる。とうとう一人になってしまったメアリーは、シャーロットが住むロンドンへ向かう。シャーロットの自宅へ到着したメアリーは、喜ぶシャーロットから、彼女がメアリーのために部屋を用意したことを知らされる。ぜひ、自分と一緒にこの屋敷に住んでほしいと誘われるメアリー。そのための部屋を用意したのだとはしゃぐシャーロット。

そこで、メアリーは気づいてしまう。シャーロットも、自分がかつて発掘した化石を博物館に飾る男性たちのように、自分を手に入れたいのだと。シャーロットは悪気があって、一緒に暮らそうと言い出したわけではない。シャーロットにとっても、メアリーはお互いの孤独を分かち合える唯一の相手だったのだ。そんな相手に出会ってしまったら、ずっと一緒にいてほしくなるというもの。

でも、メアリーは誰かのものになることは受け入れることはできないし、シャーロットと一緒にロンドンで暮らすこともできない。メアリーの居場所は、風が吹きすさぶ、故郷の海岸なのだ。メアリー自身も、それをわかっていたんじゃないかな。

映画のラストシーンで、博物館のガラスケースに収められた化石を挟んで、メアリーとシャーロットがお互いに気づく。あの永遠のような瞬間を、ぜひ、映画を観て、確かめてみてください。

お互いの人生がもう交わることは無くとも、二人だけの時間は確かに存在した。

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