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【ホスト万葉集】短歌でワインを詠む

2020年7月6日に「ホスト万葉集」が発売されました。この万葉集は、スマッパ!グループのホスト75人が詠んだ短歌を集めて、歌人の俵万智さん、野口あや子さん、小佐野彈さんが選び、編集してくださったものです。
ホストならではの専門用語で短歌を詠んだり、もの珍しいだけでなく、夜の街でひとくくりにされてしまいがちですが、75名ひとりひとりの表情が見える歌集になっています。

興味ある方は是非、読んでみてください、

僕もこのホスト万葉集に参加しており、ふとワインについての短歌はあるのだろうか?と気になりました。今回はワインにまつわる短歌を紹介していこうと思います。

【カラスミのパスタ淫らにブルネッロディモンタルチーノ で口説かれている】

最初に紹介するのは、いつも優しくホストへ短歌指南してくださる、俵万智さんのチョコレート革命から。

この歌は、大阪府立中央図書館さんのHPからこのように紹介されていました。

カラスミはお酒のあてのイメージがありますよね。僕なりの解釈ですが、そのカラスミが使われたパスタを好む女性(口説こうとしてる男性なら、事前に女性の食べ物の好みなどを調べてると思うので)はきっとお酒好き、またはお酒が強い女性と想像できます。
その女性が淫らになるくらい、既に食前酒や白ワインで気分良く酔っている状況なのでしょう。
そこでトドメのブルネッロ。男性はこのワインの濃厚で官能的な香りと艶やかな味わいで、更に女性の気持ちを高めようと、イタリアワインの女王とも呼ばれるブルネッロディモンタルチーノを選んだのでしょう。
男性のトドメの口説き文句を、ブルネッロに込めて。

続いての短歌は、

【赤ワイン干したグラスに白ワイン注ぐあやうさの性欲がある】

野口あや子さん

こちらの歌は、男性とワインを飲んでる女性が強く浮かびました。

ワインを飲むなら、順番的に白ワインから赤ワインへの流れが一般的ですね。赤ワインを飲み干したところで飲むのをやめようとしたけど、この先の展開に少しの期待と不安を抱え、
これ以上飲んだらとあやういと思いつつ、心の何処かでこの先の展開を期待してる自分が、自ら白ワインを注いだのかなと感じました。

特別なワインではなく、日常的なカジュアルなワインを飲んでいるワンシーンが浮かびます。この行為を見ると僕としては、なにかあったのかな?とか、いつもと違うな、とか気になってしまいますね。

【ワインならまかせなさいと云い乍らグラス倒すかこのタコおやじ】

本下いづみさん

この歌も、すぐに情景が浮かびました。
それにしても、「タコおやじ」ってなかなか言わないですよね笑
親子っぽくも恋愛(愛人含む)っぽくも感じられないので、上司と部下の関係性なのかな、、。

きっと着席してから、聞いてもいないワインのウンチクや自分の自慢話などを、料理が運ばれてきてからも続け、ようやく乾杯出来ると思ったところで、グラスを倒してしまい、私は何もしてないのに、周りの席から一気に注目を浴びてしまい、恥ずかしめに合うという場面が想像出来ました。

ドラマにありそうなシーンですよね。
男性にありがちですが、昔話や、自分の武勇伝を嬉しそうに語る人に似て、俺はこんなにワインに詳しいんだよ!世界のあらゆるワインを飲んできたんだよ!って自分を大きく見せたいあるある。

そう考えると、女性の側には全くその気がないのに、男性は頑張って口説こうとしている、残酷なすれちがいの歌なのかもしれません。

【ワインラベル剥がさんとしてこの妻は我の知らざる器具を取り出す 】

斉藤 真伸さん

ワインラベルというのは、最初エチケットの事かと思いましたが、妻の取り出した器具で、瓶口を覆ってるキャップシールのことなんだと気付きました。

この歌からは、いつも通りに2人でワインを開けて飲もうとした時に、妻がいきなり自分の知らない器具を取り出し、使い始める。
「私はあなたの一枚も二枚も上手なの、隠し事しても無駄。」と、妻の行動から無言のメッセージを捉える夫の姿が浮かびます。

さて、先日僕もホスト歌会にて短歌を作ってみました。

【五年前、問いかけられたタメ(同い年)ワイン。今こそ対話、シャトーラトゥール。】

これは僕自身の実体験で、五年前、誕生日祝いにシャトーラトゥール'85を頂きました。僕と同い年のラトゥール。想像も出来ない深さと広さを感じました。何一つ言葉が出ず、ただただ圧巻。
まさに星が瞬く宇宙につつまれるような。
魅了され、呆然と宇宙を見上げたまま。
あの時の記憶と体験は、同い年のラトゥールから問いかけられたような気がして、今までも覚えています。

それからワインに関しての知識と経験と体験を重ね、同い年のラトゥールからの問いかけに対話が出来るくらいにはなっているのではないか。という、期待、自信、挑戦の気持ちを歌にしてみました。

きっと対話出来たとしても、僕が惚れるだけ惚れて、また新たな課題のようなものを見つけてしまう気がします。

そして、最後に紹介する短歌は、こちら。

【愛された証のワイングラスたち そのままに詠む冬の夜更かし】

三上りょうさん

この歌を詠んだ瞬間、この情景がすぐさま頭に浮かび上がり、歌に惚れました笑
「愛された証のワイングラスたち」。グラスの中に、ほんのわずかに残るワインや、グラスの淵につく女性のルージュ、グラスを覆う指紋、、、。語り合い、気持ちを伝え合い、愛されている事の証(証人)としてワイングラスがあるのかなと。

それに気付いた時には、【そのままに詠む冬の夜更かし】時を忘れたかのように、あっという間に時が過ぎ、夜更かししてしまった。きっと冬の夜更かしなので、この後の2人はもう……笑

と寂しさと憧れの感情が入り混じり、短歌の深みを感じました。

ワインを知っていなければ、深くまで読み取れないワイン専門の短歌集があったら、とても読んでみたいですね。是非、皆さんもワインと触れ合うのはもちろん、ワインがある風景を短歌を作ってみてください!

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