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嘘は罪なのか『嘘~Love Lies~』by村山由佳

20歳の頃に読んだ「BAD KIDS」を読んでから、もうずっとファンな村山由佳先生の作品をそういえば最近読んでないな…と思い購入してみた。

電子書籍でいいじゃない、って意見もあるんですが…装丁とか集中できるとか含めやっぱり本持ちたくなるんですよね。

紙の本いいですよね…場所をとるけど。

美味しいコーヒーの飲み方とかでピュアな村山先生の印象がある一方、BAD KIDSとかこの作品の様に綺麗じゃない現実を描く村山先生の作品が私は大好きだったりします。

今回読んでやっぱりファンだなぁ…ほかの作品全部集めたくなってしまうっていうオタクの話だと思って読んでくだされば幸いです。

読んで欲しい為、ほぼネタバレはありません。

1.物語の主要人物4人がとにかく魅力的

中学で同じ班で自由研究をする、男2人女2人の20年の人生を描きます。

14歳の4人と34歳の4人…計8人の視点で物語が進行していくストーリーだなぁって思いました。

①刀根英俊(とねひでとし)

主役でほぼこの男性の描写が6割くらいだと思う。

母親ネグレクト義理の父親DV、893のオッサンに可愛がられる。

裏社会に片足つっこんでて足洗えない。

②桐原美月(きりはらみつき)

神社の娘、家庭は平和。

シングルマザーで、超能力を持っているというファンタジー風ヒロイン。

英俊にもう20年も片思い。3割がこの女性の描写。

③中村陽奈乃(なかむらひなの)

束縛支配系の毒母に縛り付けられるけど、それに従順に従う。

ほんわか系で、結構物事に敏感に感じ取る能力ある。

英俊と両想いっぽい感じで、それをずっと引きずっている。

④正木亮介(まさきりょうすけ)

クラス委員長のイケメン、世渡り上手、おぼっちゃま。

だけど内面は限りなくサイコパス、サイコパスなクズだなぁと思う。

亮介がクズならクズなほど、英俊が限りなくイケメンに見えるヒール。


と、いう感じの家庭環境がまったく違う4人で構成されている。

超能力というファンタジー要素が、まったく違和感なく盛り込まれているのがとても印象深い。

FF14が好きな私にとって、美月の能力は光の戦士の超える力だなうんって思いながら読んでました。

ひたすら秀俊が不幸で可哀想だけど、結局不幸な生い立ちの奴は裏社会の連鎖からもがくけど逃れられなくてどんどんがんじがらめにされていく。

ああ…こういう事ってあるなぁってとても共感してしまう。

そしてはたからは普通の家庭に見えていても、機能不全な家庭で育った陽菜乃が同じく機能不全の家庭で育った秀俊と心を通わせていく描写がとても自然だった。

そして最初から最後まで、亮介はヒール…本当にヒールだった。

結局4人の中ででも一番弱くて人間らしいのは亮介なんだろうなぁ、とも同時に思ったそんな物語だった。

2.文章の描写が天才だな?と改めて思う

読んでると情景がいとも簡単に浮かんでくる…村山先生の文章はそう思う。

夏の海が見える坂道、天気によって見せる顔を変える海、窓から見える夕焼けとか…本当に読んでると映像が浮かんでくるから映画見てる気分になる。

言葉の綺麗な選び方とか、今回893系の単語がちりばめられてて日本語か?って思う事も多々あったけど、昔からのそっち系の言葉ってこんなんなのかな?ってネットで調べてみて香具師ってなんだっけ?ってみたらテキヤの事かって知ったりとか。

極道系要素の強い小説だったからか、解説が馳星周先生なのがとても笑った、ごめんなさい…解説本当に面白いから読んでください。

そうだよな、不夜城とか漂流街の世界だったらもっとすごいよなって考えるととても楽しいよね。

で、文章の描写に戻ると村山先生のピュアな少年少女の心理描写ってなんでこんなに綺麗なの…って感動するんですよね。

する仕草も、そして大人びてるけどやっぱり4人とも中学生の子供だよな…とはっとさせられたりとか。

もしあの時あんな事がなかったら…違う人生を歩んでいたのだろうかという言葉が重い。

というかすべてに於いて、すべての言葉が重くのしかかる。

予想通り、読んだら止まらなくなってしまいました。

3.話の伏線回収で怒涛のラストのネタばらし感

細かい伏線が、結構な数はりめぐらされてる感じでそのパズルがぴたっとはまっていく小説だった。

だから止まらないやめられない、まさかのかっぱえびせんかよ…ってつっこみそうになるくらい、一気読みしてしまう。

893のオッサンがなんで秀俊にこんなに執着するのかって匂わせも、理解できる様なできない様ななんとなくこうなのか?と思ってしまったり。

狭い海沿いの街で起こる出来事だから、こうも狭い関係になってしまうのも仕方なかろうと思うのもあるし。

それぞれの主人公が、それぞれの人に惹かれるまたは嫉妬するって感情も、ああこういう人間だからこういう事が起こるのかっていうのもとても解りやすかった。

ほんと点と線じゃないけど、ラストは結構色々とカッチリとはまって衝撃なラストだった…サスペンスでいうと意外な人物がキーパーソンみたいなそんな感覚に陥った感じ。

おかげで読み終わった後、妙な爽快感があったりした。

4.嘘というタイトル

なぜ、嘘というタイトルをつけたのか…というのをインタビューで先生自身が答えていたけど、自分自身で考えてみる。

まず一番重要な嘘は、20年間全員を苦しめる「嘘」。

彼ら4人の人生を変えてしまうほどの事件があり、それにまつわる嘘をつき続けるというプレッシャーは並大抵じゃない。

物語のところどころに、嘘が散りばめられていて全員大なり小なり他人に色々な嘘をついて生きている。

果たして嘘は罪なのか、愛のある嘘とはいいとよく言うがそれが本当に本人を救うのか?というのがテーマなのかな?とも思った。

あいつなんか好きじゃない、っていう嘘が可愛いとも思うし、その嘘をついた事によって全員がすれ違っていく事があったり。

相手の人生に自分がいるべきじゃない、と思って嘘をついたりと…嘘をつくことはいいことか悪いことなのかってことを最後まで自問自答する作品でした。


という事でざっと書き連ねてみましたが、前回からかなり間があいてしまったので、もっとちゃんとコンスタントに本読みたいなと思います。

とにかく青春、あと人生うまくいかない、主人公が不幸になっていくのが何よりの好物な人にはとてもおススメの作品です。


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