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押し珍道中膝栗毛 ~魅力がすごいよ品川篇~

「オットおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!お天気いいしどっか行こうぜえぇぇぇぇぇい!!!!!!!!ってかさ、こないだからこのスタンプラリーが始まってね……………」

春らしい、暖かないいお天気になった週末。

「またヨメは………天気がいいと絶対出かけようって言うなぁ……………………まぁいいけど」

「うおっしゃぁぁぁぁぁぁあ😆!!!!!!!!よっし、スタンプ帳と~、御朱印帳と~、あ、あとあのパンフも忘れずに……………」


我が家の週末の朝は、たいていこんな感じではじまる。


ヨメは天気がいいとすぐソワソワしがち。
平日に楽しそうなイベントを探してきては、ネタを貯めておき、週末、オットのよさげなタイミングを見てプレゼンするのである。


今回のプレゼンで採用されたのは、京浜急行線沿いにある東海道、品川宿の歴史をめぐる、「東海道品川宿スタンプラリー」という企画だった。



私の独断と偏見によると、「日本人てけっこうスタンプ大好き」説というものがある。
そして私は、まさにそんなスタンプを押すのが大好きな日本人のひとりである。

たとえば、観光地で探してみるとじつはさりげなく置いてある、その観光地のデザインがされた記念スタンプ。「○○来館記念」とか、なんならその日の日付まで入っちゃってる、メモリアル感満載のやつ。

JRの各駅に常設されていることが多い、通称「駅スタンプ」。つい最近知ったのだけれど、鉄道ファンのなかには、「乗り鉄(乗るのが好き)」「撮り鉄(撮るのが好き)」のほか、なんと「押し鉄(スタンプ押すのが好き)」と呼ばれるカテゴリがあるらしいのだ。


数年前、旅行で行った熱海城で偶然記念スタンプを見つけ、当時スタンプ帳なんぞ持っていなかった私が、お財布に入っていたマックのレシート裏に、そのムダにデカいスタンプを押したのをきっかけに、私のスタンプコレクションライフはスタートした。

スタンプを押すためのノートを買い、毎日ノートを持ち歩き、どこかへ出かけた際にはかならず駅と観光地でスタンプを探す私。
もはやれっきとした「押し鉄」である。





そんなわけで、今回もほくほくしながらスタンプラリーに向けて準備をするヨメであった。




地元の駅で、スタンプラリーのパンフレットをゲットした我が家。



今回のイベントでは、まずスタンプを押すための木製手形をどこかのポイントでもらい、そこにスタンプを押していくらしい。4種類あるスタンプのうち、3種類を手形に押して、引換所へ持っていくと、先着でグッズがもらえるとのことだった。
エリアとしては、北品川~大森海岸の東海道沿いで、歩いても回れる距離のようだ。




「ヨメ、とりあえず北品川から攻めようと思うんだけど、品川まで出る?」

パンフレットでポイントをチェックしながら、オットが聞いてきた。

「うん?でもポイントは北品川が最寄り駅なんだよね?ムダに歩かなくても………………」

「品川で駅スタンプもらえるかもよ?」

「ぜひ品川で」

イイ顔で返事をしたヨメであった。








オットの優しさで、最初のポイントに着く前にまず品川駅の駅スタンプをゲットした我が家。
マイスタンプ帳に押し、さらに駅でもらえる台紙にも押させていただいた。


品川駅からいよいよ、今回のメインイベントを遂行すべく、てくてく歩いて、最初のポイントへ。


「ソーシャルカフェ PORTO」さんで、フレンドリーなスタッフのお兄さんから、無事にスタンプ台紙になる「品川区通行手形」をいただき、ひとつめのスタンプをゲット!!

旧東海道に出て、ゆるっと散歩をしながら次のポイントへ向かうことにする。



途中で、道沿いにあったこじんまりした素敵な雰囲気のお寺、一心寺さんへ寄り道。

お参りのあと、本堂の柱に「御朱印等のご用事の方はこちら」というインターホンがあったので、御朱印をお願いしようとボタンを押してみた。

インターホンで、御朱印をお願いしたい旨をお伝えすると、しばらくしてご住職らしきおじいちゃんが出てこられた。

そのご住職が、突如謎の疑問符を投げかけてきた。


「御朱印、どっちのほう?」

「え………………?」


あとでわかったのだが、こちらのお寺は「東海七福神」のひとつとして寿老人をお祀りしているところでもあり、御本尊のものと七福神のものと、2種類の御朱印があるらしい。

「七福神?それとも御本尊のほう?」

とご住職が仰ってくださったので、

「あっ、ええと、御本尊のものでお願いします」

なんとか答えることができた。


と思ったら、さらに確認事項が。


「アルコールってかぶれたりしない?大丈夫?」

「え!? だっ………大丈夫で……す………」

「じゃあ消毒しといてあげるねっ」

「あっ…………ありがとうございます…………」

ご住職は本堂の奥へ入っていった。


予想外の質問にかなり挙動不審になってしまったが、どうやら記帳後に御朱印帳の表紙をアルコールで消毒してくださるとのことだった。
このご時世で、御朱印が書置きのみの対応になっているところが多いなか、直書きのうえ、消毒までしてくださるとは。
ほんとうにありがたい。



やがてご住職が戻ってこられ、無事に御朱印帳を受け取った。


「ありがとうございました」


お礼を言ってお寺を後にし、御朱印帳をしまおうとしたそのとき。異変に気がついた。




「おにぎり滲んどる!!!!!!!!!!!!」



恐るべしアルコール。
すこしでも汚れないように、ふだん持ち歩く時はカバーまでつけて大事にしていたのだけれど、それを瞬殺で無にするみほとけのようなおじいちゃんのご好意………………………………いろんな感情が一瞬にして頭をよぎったが、すべてを受け入れよう、と固く誓ったのだった。






御朱印はものすごく素敵でした。

涙を拭いて、いざつぎのポイントへ。







「オット!!見て見て!!!!!!駄菓子屋さんだよ~!!」


駄菓子屋さんがあったのは、品川宿交流館という、無料で入れる資料館のなかで、展示資料や写真を見て品川宿の歴史を学んだあと、ワーワー言いながら懐かしの駄菓子を買い漁るいい大人たち。
交流館のスタッフさんも、駄菓子屋さんのおばあちゃんもとてもあたたかな雰囲気で、人とのふれあいの良さを再認識したひとときだった。






いいお天気のなか、旧東海道をお散歩。







丁度よく公園があったので、休憩がてら、さっきのお菓子を食べようと寄り道。

交流館のすこし先にあった洋菓子屋さんで、「しながわ満月」と「しながわ 米娘」も買い、ご当地スイーツもぬかりなく入手した。

ちなみにいちごオレは自販機で買ったもの。
オット曰く「懐かしのアイテムで揃えたかったのでこのチョイス」とのこと。


そういえばチョコバットは当たりつきだったことを思い出して、1人ずつ開けてみることにした。
くじにはアウト、ヒット、ホームランがあるらしく、ヒット4枚か、ホームラン1枚で、もう一本チョコバットがもらえるらしい。


「あ、ダメだ………アウトだった」


オットがちょっと残念そうに呟く。
それを見て、もうひとつの自分のチョコバットを開ける私。


「これでホームランが出たら面白いよね~…………ん!?」




「ホームラン出たんだけどおぉぉぉぉ!!!!!!!!!」


謎のくじ運で、見事にホームランを引き当てたヨメ。



「当たりの交換は、お買い求めのお店でお願いします」と書いてあるため、いそいそとさっきの駄菓子屋さんへもどり、あらたにもう一本チョコバットをいただいてきたのだった。



お菓子も食べて、オイシイくじ運も使ったので、スタンプラリーへ戻る。

旧東海道をすこし外れて、つづいてのスタンプポイント、青物横丁駅で、2つ目のスタンプを押すことができた。








「江戸六地蔵」と書かれたスタンプで、このお地蔵様がどちらにいらっしゃるのか、ちょっと気になりつつも、最後のスタンプを目指してまた旧東海道へ戻った。



またてくてく歩いていると、突如として現れたお地蔵様。






「おぉぉぉぉぉ!!!!!!!さっきのスタンプのお地蔵様!!!!!!!!!」


青物横丁駅からすぐ近くの品川寺という大きなお寺で、なんとさっきのスタンプのもとになったお地蔵様とお会いすることができたのだった。


せっかくなのでお参りしていこうとお邪魔すると、ほうきを持った作務衣のイケメン(マスク越しでもわかる爽やかさ)と目があった。
軽く会釈をして、本堂へお参りに行こうとすると、そのイケメンが話しかけてきた。

「こんにちは、御朱印はご入用でしょうか?」

「あっ、はい…………お願いしたいんですが……でも………………えっと…………」


御朱印はお願いしたいのだけれど、まだ本堂へのお参りが済んでいない、と言おうとしたのだが、「初対面の」「男性」「しかもイケメン」というハードルの高さにまたもしどろもどろになるヨメ。

そのテンパりぶりで伝わったのか、イケメンさんはさらに爽やかな笑顔(マスク越し)で声をかけてくださった。


「御朱印帳はお持ちですか?では、お預かりしてお書きしますので、本堂のほうをお参りしていただきながらお待ちください」


…………仏門に入ると読心術も身につけられるんだろうか。


さらに驚いたのが、御朱印帳をお預けするときだった。


私が御朱印帳のページを開くか開かないかくらいのタイミングで、イケメンさんが声を上げた。

「あっ、一心寺さん行かれたんですね~。ご住職いらっしゃいました?去年ちょっと体調を崩されて、しばらくお休みしていらっしゃったみたいで。」


やはり仏門に入(以下略)

おそらくアルコール消毒のそれと思われる。



御朱印をお願いしているあいだ、本堂のお参りを済ませ、オットとふたりでのんびり待っていると、こんどは綺麗な女性がこちらへやってきた。
どうやらさきほどの作務衣のイケメンは副住職さまで、女性は奥さまのようだった。
奥さまには、お寺の秘仏である水月観音様や、貴重な大梵鐘についてを丁寧に教えていただいた。






本堂の向かいにあるこの大きな鐘は、一時期行方不明になっており、現在の副住職のおじいさまが必死に探したところ、なんとスイスのジュネーブにある美術館に保管されていることがわかったのだそうだ。

その後、おじいさまの懸命な努力で、鐘は無事、もとの場所に戻ることができた。
また、そのことがきっかけになり、品川区とジュネーブとの友好条約が結ばれ、その証として、ここからほど近いイオンにある花時計の針がジュネーブから送られたそうである。



なんと壮大なロマンと縁を感じるエピソードだろうか。

お寺を後にした私たちは、迷わずこの花時計を見に行くことに決めたのだった。




花時計を見に行く前に、本来の目的であるスタンプラリーを終わらせよう、ということになり、また旧東海道を通って、いよいよ最後のスタンプポイントの鮫洲駅へ。






スタンプを押し、先着でいただける達成グッズのエコバッグも無事にいただくことができた。

これでスタンプラリーは終了なのだが、つぎの目的地はもちろん、さっきの「イオンの花時計」である。



その花時計までは、歩いてだいたい20分くらい。
お高級そうなマンション群を見ながら、またてくてくと散歩をつづけたのだった。







「着いたー!!!!!!!!!!!!!!」


休憩しながらとはいえ、さすがに結構疲れた。

綺麗な花時計を見てひととおり満足したので、ベンチに座り、途中で買っておいたご当地グルメをいただくふたり。





旧東海道にあるお寺、長徳寺の閻魔さまにちなんで作られたという「閻魔いなり」と、めちゃくちゃ美味しそうだったのでつい買ったみたらし団子。

閻魔いなりは一味唐辛子がごはんに混ざっており、甘辛さがクセになる美味しさだった。カバンのなかでちょっと潰れちゃったけど。
お団子も疲れた身体と心を癒してくれる絶妙な甘さでよかった。



腹ごしらえも済ませ、帰り道のことを考えはじめたところで、オットがふと思い出した。


「ここから近くにモノレールの駅があるらしいんだけどさ、どうやらそれで天空橋に行けるらしいぞ。前にヨメ、"天空橋に足湯が出来たらしい"って言ってたよね?歩いて疲れた身体にちょうどいいんじゃないか?」


「オット!!!!!!!!!!!超ファインプレー!!!!!!!!!!!!」







イオンからまた歩いて、モノレールの天王洲アイル駅へ到着。
はじめて乗る、「外の景色を眺められるタイプ」の座席に興奮して海を眺めながら、天空橋へ向かった。

天空橋に最近オープンした、羽田イノベーションシティという建物の屋上で、無料で足湯が楽しめるらしい。








ついに無料で入れる「足湯スカイデッキ」へ到着。

足湯自体はそんなに大きくないのだけれど、開放的な空間で、飛行機の離着陸を眺めながら足湯につかることができるという、なかなかの絶景癒しポイントだった。


お湯も歩き疲れた足にちょうどいい温度。ムダにタオル2枚持ってきといてよかった~、とか、大した問題でもないことを考えつつ、のんびりこの旅の疲れを癒したふたりなのだった。







足湯でゆっくりしたあとは、地元にもどり、あらためてお疲れさま会を開いた我が家。御用達のトリキです。

結局これがいちばん疲れがとれるんじゃないかという、キンキンに冷えたビールで乾杯。
この日、愛用のスマートウォッチによると、ざっくり2万歩くらい歩いてたらしい。そら疲れるわ。

でも近場のスタンプラリーで、まる1日使って、いろんな人とのふれあいがあって、こんなに楽しめるとは。


こうして我が家の東海道中膝栗毛は、楽しくおいしく幕を閉じたのだった。



















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