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試験を受ける学習者への声掛け:『頑張ってください』は使いたくない私。

私は日本語能力試験を受ける学習者や、日本の大学や大学院を受験する学習者にも指導しています。

ついこの間も、日本の大学院を受験した学習者がいました。

試験前日最後の授業。その人への声掛け。
『明日是非楽しんでください!』

それは、毎日・毎週積み上げてきたものを見ているから出てきた言葉です。



私は子どもの頃、運動が得意でした。得意分野は中長距離。小学生、中学生の時は、市で行われる陸上競技会やマラソン大会の代表選手としても選ばれることがありました。

バスケ部に入っていたのですが、大会前、放課後は先ず陸上部と一緒に校庭で練習。その後バスケ部の練習に戻り、毎日一生懸命練習していました。

中長距離、つまり800メートルから1500メートル・3000メートルの練習はそれはそれはしんどかった。内心ずっと短距離選手に憧れていましたが、自分はなれず。

大会当日、沿道にはたくさんの観衆。皆決まって「頑張れーー!」「頑張って!」と大きな声で声援を送ってくれました。

でも、実は私は「頑張れ」と応援されるのがあまり好きではありませんでした。

内心いつも「もう頑張ってるの!」と。今思うと、ひねくれ者だったのかもしれません。



【頑張る】
・ 困難にめげないで我慢してやり抜く。

デジタル大辞泉

とあります。

なるほど。もう色々と我慢しているんだけどなー。「まだ我慢して前に進み続けろ-!」と声をかけることにはやっぱり抵抗がある。

コロナが始まってから、娘さんがあまり学校に行けていない同じマンションに住む友だちがいます。その友だちの話を聞いたり、こちらから何か話したりした最後に、定番の挨拶のように「じゃ、頑張ってね」。私はやっぱり言えない。



試験に向けてずっと努力をつづけてきた学習者へ、いよいよ明日その試験だという時に「じゃ、明日頑張ってね!」。毎週難しい日本語文法と授業で向き合っている学習者へ、「じゃ、また頑張ってくださいね!」。

最後のシメの挨拶として、何かと便利でポロッと出てきそうなこの「頑張って」という言葉。私にはちょっと重いので、他の言い方を考えてみました。

「応援しています!」


「明日の試験、思い切り楽しんでください!応援しています!」


「頑張ってください!」ではなくて、「一緒に頑張りましょう!」だったらいいかもしれません。

「今日も難しい文法をたくさん勉強しましたね。じゃ、来週もまた楽しく一緒に頑張りましょうね。」

もちろんそう言ったら、私も難しくて取っつきにくい文法を工夫して『楽しく』学ばせてあげないといけない。


言葉はやっぱり、相手1人1人にちゃんと向き合って選んで伝えることが大切なんだなと。

定番を使うよりも時間と頭を使いますが、その分想いは伝わると実感しています。


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