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わるい顔を見せることの意味

「その、わるい顔を見せられる人を好きになりなよ」

8年ぐらいの付き合いになる人と食事に行った時、あることを話していたら言われた言葉。

その時は意味が分からなくて、「どういうこと?」って笑いながら返したっけ。「じゃあ、どうして俺にはできるの?」って聞かれたから、何も考えることなく「別に嫌われてもいいから」ってまた軽く笑いながら言ったら、「おい」って突っ込まれた。


「別に嫌われてもいいから」

その言葉も正しい。でもすこしだけ違ったかな。
「嫌われてもいい」だけじゃない、
「嫌われないって分かっているから」だった。



その人に恋愛感情を抱いたことは一度もなくて、出会った頃から今も変わらず、歳上(とも思ってない)の知り合い。友達でもなくて、ただの知り合い。

だけどなんだかんだその辺の友達よりも長い年月を、ほそーくながーく付き合い続けてる。なぜかその人の前で猫を被ることはないし、素の自分でいられるみたい。


その人は何年経っても私の話を聞く度に、「◯◯ちゃんのこの先が本当に楽しみすぎる」っていっつも楽しそうに笑う。笑えない状況でこっちがめちゃくちゃ悩んでてもそう言う。なに呑気に笑ってんの、って一瞬イラっとすることもあったけれど、割とそういう感情も出せる。

その理由は、やっぱりこの人は私を嫌わないから。
これまでどんなことがあっても、どんな私であっても、何も関係性は変わらなかった。それにある意味、私の人生にいろんな山あり谷ありなエピソードが次々と足されることを愉しんでいる。本当、わるい人。



冒頭の言葉は何の話をしていたか忘れてしまったけれど、何かに対して私が嫌味っぽいことを言った時の顔について言われた言葉だったと記憶している。

私のそういうところが面白くて好きなんだと。
でもその部分を完璧に隠して人と付き合う理由は何?って言われて、こういう私は好かれないと思うから、というのが私の答えだった。



だけど思い返すと私のことを人間的に好きだと言ってくれる人たちに共通しているのは、その「わるい顔」を出せる関係性にある人ばかりだった。

自分の考える"好かれるはずの私"でいればいるほど、なぜか好かれたいと思う人には好かれるどころか印象にさえも残らなくて、好かれたとしてもそれは本当の私じゃなくて好かれるはずの私のことを好いてくれただけで。

人に本当の自分を見せる、の意味がずっと分からなかったけれど、"わるい顔ができる"に置き換えたらしっくりときた。



この間、別の友人に「◯◯は可愛くて綺麗で誠実で優しくてよく笑う。家事もできるし料理も美味しい。スタイルもいいしセンスもいい。仕事もできるし、好きなものも一緒に楽しんでくれる、共有してくれる。アホなことだって一緒にできる。」と褒めちぎられて、最後に「大好き!」と可愛いスタンプがぽんっと送られてきた。


「アホなことだって一緒にできる」

この一言がなんだかいちばん嬉しくて。
私はきっと、彼女の前でわるい顔ができる。
本当の自分でいられる、ということを証明してくれたような言葉だった。




好きな人に好かれたい。

それは性別関係なく、好かれたいと思う人が何人もいる。
というより、人生で出会う人全員に好かれたい。
好かれたかった。


だけどそれって難しくて、十人十色という誰もが知っている言葉があるように、当たり前に人それぞれの性格や個性がある。その人たち全員に好かれるためには私自身も出会う人の数だけ必要みたい。それって現実的だと思う?

現実的ではなくてもその目標に近づけるように、どんな人が相手でも自分を自由自在に変えて形を合わせられるように無難な自分で居続けてきたけど、結局それって無個性で、私がいなくなっているようだった。

だから誰にも本当の意味では好かれない。
無難な人止まり。むしろ八方美人。嫌われる側と紙一重。


そのことに気づかせてもらってから、すごく心が軽くなったな。そんな私のことを「本当に面白いよね」「ギャップすぎて笑える」「そういうタイプだと思ってなかった」と言ってくれる人が突然何人も増えて、私って面白いんだ、って調子に乗る寸前。というより、すでに乗っている。


友人が言ってくれたような「仕事もできる」(本当にありがとう、嬉しくてたまらないよ)と思ってもらえるような私はもちろん、維持というよりもっとスキルアップしたくて頑張っていたら、「◯◯ちゃんがいると空気が明るくなる、それに一緒に仕事してると本当に楽しい。」と言ってもらえた日があって、もう全身の穴から涙がでます。昔の私ならきっとあまり素直に受け止めなかったけれど、今は嬉しいと思える。



みんなに好かれることも大切だけど、
人の記憶に残るような人になりたいな、と思う。
私は私だけしかいない。当たり前のことだった。


「悪い顔」って言われたとき、脳内に浮かべた漢字からしてなんだか性格が悪いみたいで嫌だった。

でもきっと、そういう意味でその人は言ったんじゃない。
性格の悪さを表す顔のことじゃない。

きっと、人間味が見えるようなことで、その部分を隠しすぎる必要なんてないのだと。その部分こそがあなたらしさだよ、と。そういう意味で「わるい顔」と私に伝えてくれたんだと思う。


愛らしくて、可愛らしくも受け取れる言葉に個性を込めて。



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