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手段が目的化するシステム導入

本日は、公務員界隈のシステム導入について、現状と想いを書かせていただきます。自治体現場を見ていますと、システムを導入するという手段が目的化していると感じることが少なくありません。そんなエピソードをご紹介します。

デジタル化はインパクトが重要?!

私は、複数の基礎自治体で、RPA(Robotic Process Automation:ロボットを使った業務の自動化)の導入、運用担当を経験しました。あるRPAツールの有資格者でもあります。
RPAについては、以下に記事を書かせていただきましたので、よろしければ、ご覧くださいませ。

RPAを取り巻く環境ですが、令和に入ったころから、RPAに対する地方財政措置を行われるようになり、私の所属してきた自治体でもRPAツールが導入されることになりました。その頃、幹部職員の方とお話する機会があり、このように言われました。

「来年度はRPAを導入する!正直どんなものか分からんけどな!」

デジタル化やシステム導入は「課題や政策目標を達成するために導入するべきもの」なのに、「中身よりもインパクト(宣伝効果)が重要なんだな」と感じ、私は残念に思いました。

うたい文句と実際

私が現職でRPAの担当を始めた頃、実際の削減効果の時間数ほど、業務削減が出ていないものや、引継ぎがされておらず放置されているもの(野良ロボット)が散見されました。
俗に言うパフォーマンスのために導入され、放置されているシステムと同じ状態でした。例えば、年間50時間削減を謳った支出命令書の作成ロボットがあるにもかかわらず、担当者が不慣れであるため、そのロボットが使われていないというものがありました。また、IEサポート終了前にIEベースでロボットを作成したため、機能しないものもありました。
これらのような問題に対応するため、私はこれまでの情報部門の担当者が行ってこなかった現場担当者との継続的に対話をしています。中身のある運用を継続してもらえるよう、RPA利用の相談や技術的支援を行っています。

実際にロボットを作った時に「○○時間削減」とうたう割に、役に立たないものを作って評価される人がいらっしゃいます。一方で、私のように、宣伝効果度外視で、目立たないので評価もされないけれど、既存の野良ロボットをベースに、利用者が「実際に使えて効果がある」と感じることを第一優先に、修正や支援に尽力する人もいます。
後者は目立たず泥臭い仕事ですが、このような動きを理解してくれる職員の方が増えたらいいなと思っています。

中身のないシステム導入は分かる人には分かる

私がIPA(情報処理推進機構)のプロジェクトマネージャ試験に合格して以降、自治体のシステム導入の実態について尋ねられることが増えました。
その中で、大手企業の営業の方とお話していたときに、「自治体の方は、目的の前にRPAなどのシステム名が出てくることが多いです。自治体の方の多くは『手段が目的化』しているので、モノありきでシステム導入を考えられる方が多いですね。」と言われました。この言葉は、自治体の現状を端的に表現した言葉だと感じました。

まずは、組織としての課題解決をするという目的を意識して、システム導入やデジタル化を進めていくという姿勢を浸透していかなければならないと思っています。
住民の方に訴えるインパクト(宣伝効果)も大切ですが、それと同時に導入目的などの説明責任を負っています。そして、自治体DXに対応するためにも、導入時の宣伝効果だけではなく、職員の方や住民の方が、楽で、シンプルだと感じられるようなシステム導入を行っていくべきではないかと思います。


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