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イタリア:トリエステ

久しぶりの投稿になってしまったが、仕事でトリエステに行ったので、忘れないようにいくつかのことを書いておこう。

バザリア法発祥の地

トリエステというと、イタリアの観光地としてはそう有名な方ではないし、なんせ北東の端っこ、スロベニアとの国境にある町なので、なかなか普通にイタリア旅行に来ると訪れることはないかもしれない。
しかし、ここはある分野においては、世界で最も有名な町である。どんな分野かというと、それは「精神医学」。イタリアは実は世界で初めて精神病院を廃止した国で、そこに導いたのは、トリエステの精神病院院長に就任したフランコ・バザリアという人であった。1970年代の話であるが、彼が精神障害者を病院に隔離するのではなく、普通に社会生活が送れるようにと、さまざまな働きかけをし、イタリアでは1978年に法律が施行されて精神病院を廃止し、患者の別の治療方法及び福祉についてが定められたのである。これが通称「バザリア法」と呼ばれるものである。

サン・ジョヴァンニ公園

トリエステの精神病院は、現在のサン・ジョヴァンニ公園というところにあった。昔はサン・ジョヴァンニ精神病院といったのである。
下の地図は左側が精神病院があった当時、そして右側が現在であるが、建物類はそのまま残して、現在では公共機関や大学などに利用されている。

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(写真=Itinerari Basaglianiのサイトより)

いくつものパビリオンから構成されており、1900年ごろに建てられた建物らしいが、外見は”病院”なんて感じはしないので、現在他の目的で使われていても、全く違和感がない。

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市の中心地からやや北西の方に行った、丘の傾斜にあり、上の写真は公園内一番上にある教会と、左側はバール兼レストラン。

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途中には左側に、この馬のモニュメントがある。これはレプリカだが、バザリア法の象徴とも言える「マルコ・カヴァッロ(Marco Cavallo)」という馬で、オリジナルは張り子の青い馬だが、精神病院の扉が初めて開かれた日に、患者たちが自分で作ったこの馬を掲げて、町中を行進したそうである。

パビリオンの一つには現在、「アトリエ・リステル (Lister Sartoria Sociale)」というショップが入っている。ここは精神障害を持つ人たちの雇用受け入れ口となっており、独創的なアイデアでリサイクルした衣服や使用済みの横断幕バナーから、バッグやポーチなどを作っている。
私もバッグを買ってしまった。

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これはジャケット一着から作られたバッグ。ポケットなどもそのまま残されている。全て一品もので、ジーンズやチロル風コートから作られたバッグもあった。また、壊れた傘から作った大きめの巾着リュックも面白かった。とトリエステではボーラ(Bora)という強風が吹くことが多く、傘がよく壊れるので、それを再利用したもの。Facebookにオフィシャルページがあるようなので、興味のある方は是非。

他にも全部は回らなかったが、美術館やバザリアの資料館もあるようだった。
ちょっと市の中心地からは離れていて、車かバスでないとアクセスできないが、トリエステの歴史を感じることができる一角である。

夕食に食べた「Cornetto di Bufala」。トリエステとは全然関係ない、クロワッサンの形をしたカルツォーネ(普通はピザを折って、三日月型にして焼いたピザ、トッピングがフィリングとなる)の中に、たっぷりの水牛のモッツァレッラチーズが入っていて、トッピングには生ハム、ルコラにグラーナチーズ。

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(写真は全て2021年11月に撮影)