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風景のレシピ #46 “夕闇の港町”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #46 “夕闇の港町”

調理時間:5時間

材料:
薄暗い夕闇の空気:全体的に
強風に荒れた海:ひとつ
遠くの山:ひと連なり
波止場:ひとつ
建物:適宜
燈火:適宜
木々:数本
波の音:かぎりなく
ほうき星:ひとつ

1.夕やみをゆっくりとかき混ぜながら
  暖かい空気に冷涼な風を加えていく。


2.強い波の繰り返しがタペストリーのように織られて
  風景を組み立てていることを意識する。


3.暗い湾の中に家々を浮かび上がらせ、灯りを点す。


4.湾の向こうの、遠くない場所に小山をつくり波の残響を深める。
  手前には波止場をのばし、灯りを連ねる。


5.家々の間に木を植える。
  木々のシルエットは夕暮れ時の陸地と海の境目があいまいな景色の中、
  そこが陸地であるということを確かにする。


6.誰にも気づかれないようにほうき星を落とす。
  暗さの調子をととのえ、できあがり。


調理のコツ
*マジックアワーのひとときを確かめるように

ぼんやりと光る町の時計
波濤のしぶきが町に染み込んでいく
山の向こうはまだ明るいかも
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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