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風景のレシピ #62 “Aquarium”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #62 “Aquarium”

調理時間:3時間

材料:
海水:大量に
地中海のいわしの大群:一群
町:ひとつ
月:ひとつ


1.ひとつの町をつくる。
  地図を描くように始める。通りや塔のある建物、広場をつくる。
  看板を飾り、街灯を立てる。
  人や車は配置しない。


2.日が沈んだころ、その空間にミネラルたっぷりの海水を流し入れる。
  しばらく経つと、海底となった地面から気泡が立ち昇りはじめる。
  街灯や窓明かりの光源はそのまま点くにまかせておく。


3.地中海のいわしの大群を遊泳させる。


4.月を水に浮かべる。
  光がいわしの背中や建物の屋根を冷たく照らすように。


調理のコツ
*初めて水族館を訪れたときのように


水溶性の月
水中のカフェ
月に照らされたいわしの一群
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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