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風景のレシピ #55 “Lost Corner”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #55 “Lost Corner”

調理時間:4時間30分

材料:
石畳の路地:ひとつ
建物:適宜
工事用ごみ箱:一台
建材ごみ:適宜
ランプ:一灯
錆びた時計の文字盤:ひとつ


1.壁に挟まれた誰もいない空間に石畳を敷きつめ、路地とする。
  石畳の隙間から草が生えてくる。
  しばらく佇みながら、反響する都市のノイズを聴く。


2.工事用の大きなごみ箱を置き、廃材ごみで満たす。
  ごみは路上にも溢れる。


3.腰掛けたくなるような石段をつくる。
  古びた壁には金属のランプシェードをとりつける。
  壁に無人の窓を開ける。
  窓の無い壁は番地のプレートや剥がれたポスター跡で彩る。


4.一角に時計の文字盤を置く。
  時計の針は失われていて、錆びているものを選ぶ。


調理のコツ
*時のはざまに迷い込んでしまったように。


無骨な工事用ごみ箱
電球の切れたランプ
停まってしまった時間を表す
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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