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風景のレシピ #56 “水に沈んだ遺跡”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #56 “水に沈んだ遺跡”

調理時間:7時間
 
材料: 
石の回廊:一回り
水:一面
池の魚:たくさん
葉の垂れ下がった植物:適宜
水の反射光:たくさん


1.見下ろした低い場所に水を流し込む。
  水は陽の光をあてて適度に温め、水面をきらきらと輝かせる。


2.水に浸かった状態の、石の構造物を建てる。
  それは瞬時にして古びて遺跡のような佇まいになる。


3.手前にも苔でいっぱいの古い壁をつくる。
  丸みのある壁の上部を手で撫でてみる。
  視界の上部は植物で覆う。


4.遺跡の向こう側には霧を漂わせる。
  水の中に魚をゆったり泳がせる。


調理のコツ
*心の中の水面を覗き込むように


ほんの僅かな水面の揺れ
構造物のアーチに映る反射光
壁は添えた手の跡ですり減っている
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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