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風景のレシピ #64 “自転車の男”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #64 “自転車の男”

調理時間:4時間

材料:
自転車の男:ひとり
道:一本
広大な荒れ地:一帯
朝の光:ひとつ
海風:適宜
雲と雲影:適宜
無人の家:数軒
草花:適宜


1.どこかへ自転車を走らせる男を配置する。
  彼のために、適度の起伏のある道を用意する。


2.道の左右には広大な荒地をひろげ、朝の光を全体に振りかける。


3.激しい海風を吹かせる。
  風と塩に長年耐えてきたような無家をぱらぱらと配置する。


4.地平線の彼方から雲ひっぱり寄せる。その影を荒地に落とす。


5.あの自転車の男のように、道の向こうに行きたくなったら、できあがり。


調理のコツ
*誰も知らない映画の始まりのように。


海風に揺れる草花
木はひとつも生えていない
広大な風景を独り占めする男
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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