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風景のレシピ #47 “シルトの岸辺”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #47 “シルトの岸辺”

調理時間:2時間30分
 
材料: 
海辺の町:ひとつ
河口:ひとつ
砂:一面
気水:一面
鉄橋:一基
蟹や貝類:無数
白く煙った空:一面
工場のような建物:適宜
放置されたボート:何艘か


1.砂を一面にばら撒き、四方に広げる。


2.砂に水を含ませる。よくかき混ぜ、シルトを形成させる。
  砂粒と水に光を乱反射させ、視界一面を白く煙らせる。
  そこかしこに塗装されたボートを置く。
  それらの鮮やかな色も、たちまち色褪せ始める。


3.遠くには真っ白な鉄橋を渡す。
  鉄橋の向こうに霞かかった高台を作り、工場のような建物を建てる。


4.その河口のシルトを、目を細めながら散歩している自分を思い浮かべる。


調理のコツ
*写真を色褪せさせるその秘密を覗き込むように

遠くに海が見える
白く霞んだ空
ひそかに潮が満ちるのを待っている
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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