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風景のレシピ #31 “灰色の運河”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ 31 “灰色の運河”

調理時間:10時間

材料:
灰色の空気:全体的に
水路:一本
橋:一基
街並み:適宜
街灯:数本
建物:数件
樹木:適宜
船:数隻


1.大きめの橋を置き、その下にしっかりと護岸された運河を通す。
  上空に灰色の空気を漂わせる。
  橋と運河が次第に灰色に馴染んでいく様子を眺める。


2.建物と樹木を並べ、その風景に奥行きをつくる。


3.橋のアーチの空洞に共鳴する、かすかな気流の音に耳を澄ます。


4.いくつかの街灯を灯して、できあがり。


調理のコツ
*一見、日常の風景のように見え、そうではない。切り離す。


光る音符のような街灯
喫茶店の横の控えめな階段
船と工場と思しき建物
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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