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BtoBの商談で受注率を最大化するためのポイント

このnoteではBtoBマーケティングと営業の戦略の立て方から、個別の戦術や施策について順序をたてて解説しています。

こちらのマガジンにまとめていますのでご覧ください。

前回に続いて、商談における営業スキルについてです。今回は受注率を最大化するためのポイントをガンガン紹介していきます。

あえて納品に時間がかかるように見せる

これは法人営業で使えるテクニックですが、あえて納期に“時間がかかる”ことを示すのも大事なポイントだったりします。これって結構意外だと思いませんか。

ふつう、納期は早いほうがいいですよね?

一般的には「来月からでも導入できます」と宣言したほうがすぐに決まりそうなものです。「うちは半年後じゃないと無理です」なんて言おうものなら、受注率が下がるんじゃないかと思われがちなんですけれども、実はその逆です。

そもそもBtoBの場合、「今すぐにでも導入したい」というお客さんはあまりいないんです。

もちろんそうでない方もいますが、10件商談があったとすると、「今すぐにでもやりたい」「来月からでもやりたい」という方は2割もいなくて、残りの8割は「いつからやろうかなあ」という温度感です。

そうすると「今すぐにでもやりたい」という1〜2割の方は何もしなくても決まっていきますが、「年末でもいいかな」「来期でもいいかな」という残りの8割の方の場合、営業は困るわけですよね。

それで、そのときに見せる資料がこの手のものです。

これを見せると、「半年後に導入するならいま申し込まないと」みたいになるわけです。

たとえば、仮に今が8月で、「来年の年明けから使えればいい」というお客さんがいたとします。

こんな説明をするといいでしょう。

「1月から本格稼働させるとなると、11月から12月がオンボーディング期間になります。時間的なバッファを持って準備をしていくと3ヶ月はかかりますし、8月中にご検討いただければ」

あるいは、

「ハードウェアを調達するための時間を1ヵ月と見積もると、8月末までにご発注いただければ、10月からキックオフを開始できますし、3か月間の余裕をもってセットアップをして、来年の1月から本格稼働できますね」

あえてちょっと長めのスケジュールを伝えるんです。

いつでも本格稼働できたとしても、相手が「1月から始めたい」と言うのであれば、「半年後なんですね、ちょうどよかったです」と言えるようにしておくのです。

「年明けからですか。それだったら何とか間に合いますよ、よかったですね」みたいにです。

そう言われると逆に「そうか、いまなんだな」と思うわけです。

BtoBのほとんどのお客さんは「今すぐ導入しなければいけない」とは思っていないので、営業が上手い会社は、クロージングをこういった感じで進めています。

もちろん、これを説明する前に価格も提示していますし、いつ頃からスタートする予定なのかということは営業がすでに知っているので、「今すぐにでも」と言っているお客さんであれば、さきほどの資料は見せないわけです。

でも「どうしようかな」と悩んでいるお客さんや、「うちは12月決算だから、来期からかな」というお客さんに対しては、先にそう言われることを想定して、「そうですよね、おそらくご検討の準備期間に半年はかかると思いますから、ちょっとした資料だけ用意しておきました」と説明することによって、来年の1月から本格稼働する案件を8月に受注できるわけです。

自己紹介のスライドから営業はスタートしている

あとは会社のストーリーや思想を伝えることもかなり重要です。

たとえば商談の場で営業が会社紹介や自己紹介をするために1〜2枚のスライドを用意することがあると思います。

あれも普通ではもったいない。可能な限り、「掴み」のある自己紹介をつくっておくべきです。

たとえばカミナシという会社の場合は、社長の創業ストーリーが書いてあります。

「カミナシは、諸岡社長が食品製造業で働いていた時に経験した、壮絶な苦労をもとに作られたプロダクトなんです」という紹介からはじまります。

お客さんがこの創業者のストーリーを聞くと、きっとこんなふうに思うはずです。

「我々の業界のことをよくわかっているな、今どきのキラキラしたIT系のスタートアップじゃないんだな」

僕はよくある普通の自己紹介のスライドを見ると、「諸岡さんのように現場感が伝わる写真にしてほしい」と指導しています。

以前、自己紹介の資料に、「私は小学生のときにニューヨークで暮らしていて、バスケをしていました」みたいなことを書いていた方がいたんですが、そういうプロフィールも良くありません。

それを見た方は「ふーん」としか思わないわけですよね。下手したら、「ちょっと鼻につくやつだな」と思われてしまうリスクもある。

商談における自己紹介の目的は「お客様の心を掴むこと」と、「商談を進めやすくすること」です。お客様の業界との接点や熱い想い、一貫したストーリーが求められます。

自己紹介は自分のことを紹介するためにあるのではなくて、掴みとしてお客さんに気に入ってもらうためのもの、というわけです。

たとえば、「僕は入社してから○○業界で500拠点の工場のDX化を支援してきました」という自己紹介をすれば、「この人はわかっている人だな」と思われますよね。

一方で、「外資系のIT企業でトップセールスでした」みたいな自己紹介もたまに見かけますが、そういう自己紹介は最悪です。

なぜなら、「これから売り込むぞ」という自己紹介になってしまっているからです。

転職の面接であればそれでいいんですけれども、商談の場で「まずは情報収集したい」という温度感の方に対してはマイナスな自己紹介になってしまい、受注率も下がってしまう可能性があります。

失注原因のデータも大事に

受注率を最大化させるには、失注理由の蓄積もかなり重要です。失注したときのデータが正確に取れていれば、再びチャンスがやってくるからです。

失注データをきちんと蓄積しながら営業組織をまわしていくと、売り上げの3割程度は失注客からの掘り起こしになります。

たとえば「○○という機能が足りなかった」「予算が足りなかった」「他のツールを導入したばかりだから依頼できない」というよくある失注理由は、時間が解決することが多いんです。

お客さんの状況と同じように自社の状況も変わります。「機能不足」という原因に対して要望が多ければ、そこを改善する機能がアップデートされて実装されることもあります。

それから、「このAさんという担当者と商談する限りは進まないな…」ということであれば、違う人にコンタクトが取れさえすれば商談が進む可能性もあります。マーケティング活動によってAさんという方以外から問い合わせをもらえれば、そこを突破口にして進む可能性も出てきます。

それに、その部分がどうしても突破できなかったとしても、Aさんが退職して後任の方になれば商談が進むこともありますよね。

あるいは「100万円以上だったら決裁できないけれど、99万円以下だったらなんとかできる」という問題があったら、廉価版のプランが出たときに商談が進むわけです。

そんなふうに「なぜこのときは失注したのか」をきちんと蓄積しておくと、解決できるタイミングでピンポイントな提案ができるんです。

失注理由はお客様と商談をしない限りは入手できませんし、外部から買うこともできないデータなので、すごく貴重です。

営業の成果は受注だけではなく、失注にもあると言えます。

失注理由をきちんと集めることも、営業の成果とする組織文化があるといいですね。

受注企業にも傾向がある

そして忘れてはいけないのが、受注企業の傾向を分析すること。これは失注理由と同じように、次の受注の手がかりとなります。

僕がよくやるのは、これまでの受注企業を法人データベースに突合させることによって、売れる可能性のある会社を見つけること。

具体的なツールでいえば「FORCAS」というツールを使っています。これはSPEEDAを提供するユーザベースのサービスの1つで、顧客分析やターゲットリストの作成に特化したSaaSです。

顧客リストをFORCASにインポートすることによって、優先的にアタックすべき会社を導き出してくれます。

たとえば業界の大分類だとITのお客さんが多いことがわかり、小分類で見るとアプリのシステム開発が特に狙い目だということもわかったりします。

マーケティング活動をするときは業界を絞ったほうがリソースを一極集中できるので、FORCASのデータをもとに業界を選んでいます。

さらにすごいのは、WEBに公開されている情報は一通りクロールしているので、利用しているツールや求人情報もわかるのに加えて、それを全部スコアリングできることです。

既存顧客のスコアを100として、取引がない会社だとしても、その会社の業界や使っているツールや求人情報を全部勘案したスコアが出てくるんです。受注した企業との類似度みたいなものですね。

こうしたツールは市場にいくつかあります。価格も使い勝手もかなり異なりますので、自社のフェーズにあったものを選んで導入してみるといいと思います。


ここまで法人営業とBtoBマーケティングについて、戦略の立て方から、実際の営業活動まで順をおって解説してきました。

BtoBマーケティングの教科書は戦略策定など、上流工程からの進め方が網羅できています。よかったら最初から読んでみてください。


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