ナイキ(NIKE JP)のCMと消費者の関係性について
かのNIKEです。
まずはこの(どっかで炎上してるらしいけど、CM(宣伝・広告)としては大成功ですね)を見て頂きたい。これは皆が知るグローバル企業であるNIKE(JP)が制作したものです(以下)。
日本を舞台に、「在日コリアン」、「ミックス」、「日本人」(と思われる女子高生)」を対象に、彼女たちが自らの外国人としてのルーツと周囲の反応に(多少なりとも)敏感になりつつ、「自分らしさ」≒アイデンティティについて苦悩、奮闘、もがき苦しむ姿が表現されています。もちろんNIKEですからスポーツ(sport)が存在するのですが、今回はサッカーです。
大きく捉えれば、俗にいう "自分探し" ('90年代から2000年代初頭にかけてはよく使われた言葉)ですが、ここでは昨今の社会情勢に鑑みて、グローバリゼーション、高度な情報化社会を基盤としつつ、日本(特有ではない)の社会問題のひとつである " いじめ ” がテーマ化されています。
※NIKEですから大坂なおみ選手の存在も大きいでしょうが、大坂選手がこのCMについてどのように考えているかは知りません。
さて、被いじめられっ子は、先に挙げた「在日コリアン」、「ミックス」そして「日本人」の3名に焦点化(ある意味でヒロイン化)されています。前2者は、ルーツの問題を自覚する女子高生、後者は情報化社会としての高校と言う「世間」に生きる女子高生と言えます。
「世間」というアホみたいな集団的反応主体は置いておいて、このCM(広告)を現代の日本社会を生きる我々個々人がどう思うかを、少し乱暴だけど、大きく3つに分けてみましょう。
①感動する気持ち=「すごい!チョゴリ着てる!」
②ちょっと違和感を感じる=「なんか・・・なんやろ?」
③差別感情が助長される=「はぁ?あってたまるか」
それこそ人それぞれとなります。
僕としては、巨大資本(経済)が思考、思想、感覚を操作(下部構造が上部構造を規定)しているという点で、②にちかい。もちろん①もよくわかる、わかるけれど、①がきた後に②がくるって人も多いのではないでしょうか。但し、①→②への転換は、ある程度の知識と知恵を備えた人が考えるであろう内容で、" 整然とした軍隊の行進を目の当たりにした状況 " と言えます。どの国(政治的に国家と認められていなくとも)でも、軍隊(自衛隊も含む)の観閲式(観覧式)は、それがナショナルな式典である以上、見た目は折り目正しく秩序立っている(むしろダラダラな不良集団みたいな軍隊を見てみたいぐらい)。一見すれば、
「美しい」
と感じる、これは不自然ではないでしょう。
ただ、今回のCM(広告)は、あまりにドラマチック過ぎて、実際的に日常で起こっている差別や格差の詳細は削除されて、なんや綺麗にまとめましたなって感じは否めないなぁと思います。
問題としては、本来ならばCMの中で現実化されているポジティヴな未来が実現するかどうはともかく、まず必要なのは日常に存在する差別の諸要素を微視的に観察して明らかにすることであって、その結果としては(おそらく)安易に "Happy End" に決定付けられないところにあります(実際、120秒のCM表現に現実は追いついていないし、在日コリアンに関わる課題は70年以上を経過しても政治経済社会文化的に解決されていないじゃないの)。
そのため、②の見方のひとつとしては、
「自由主義経済が差別を曖昧化したうえで、消費者(多くは当事者か?)の欲望を「差別によって」喚起しているという構造」
とも換言可能となります。しかも登場人物が「こども」である点も注目されますね。大人は何処にいる?大人の不在化?大人はいじめと無関係?
それを踏まえてひとつ提言するとすれば、
「これ、まずは「大人」を主人公にして創るのが先じゃないの?」
って問いです。
あるいは、「老害」(何歳代を言うの?誰のこと?)、60代、50代、40代、30代、20代、10代、一桁代を、共時/通時、つまりヨコの線、タテの線それぞれで創って発信する(しないでしょうから個々人が考える)。
となると、ルーツも含み込みつつも「アナタの知ってる世界!」になるでしょ?
この問いかけが無ければ、市場を意識した陳腐なCMでしかない。そもそも、一般的には「オトナ」と区分される僕自身としても次世代の彼女/彼らに繋ぐバトンがないことに猛省しているところです・・・・と、考えさせられる、問いを投げかけるCMとしては、100000000000歩譲って言えば、消費者によっては社会派とも言えるのではないでしょうか。あくまで消費者ですけどね。
can or can not は、企業じゃなく、playerである我々が、考えて、決めるんです。
※ちなみに色々と問題が取沙汰されるNIKEですが、僕は嫌いではありません。RUSHやPatagoniaと同様、不買運動もしません。
※冒頭に戻りますが、なんや、このCMが各方面で炎上しているらしいですが、それこそがCMの効果のひとつなので、広告的には大成功ですね(笑)。各自それぞれが考えればいいと思います。
じゃ、また。
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