濃霧

詩など

濃霧

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永久に

どこまで行こう  布にくるまっていた赤子たち、今は元気かな   きみに会いたい 外はもう青白く光り始めた  まだ私は鉄球を引きずっている まだ私は、わからない私の眼の奥のことを恐れている  この焦りは何だろう いつもより加速している      ああまたこうして道に迷っていくんだ鮮明に目線の上で流れている映像はいつ山場を迎えるのかもわからないし白い布のようなものはまた海面を漂って岸壁の下に流れ込んでいく 外に出るととても天気が良くて気分が良くなる わたしは植物になりたいと思っ

    • 3:50

      淡いオレンジの空が唸っている 海辺の工場がフル稼働しているようだ 今日の丘は空気が異様で、てっぺんまで行くことができなかった (非通知設定からの電話が一瞬だけ鳴る 茂みの中で人影が動く いつもは気がつかない細い路地がいくつも目にとまる 学校から変な音が鳴っている) 夜明けがわたしの心と同期し始める この人生は何に始まり、どこへ向かうのかという問いの重みが一瞬軽くなった気がした 気にしないで走ろう 波はきっと穏やかじゃない 世界はずっと、ここにある

      • 薄紅

        それは天使のようだ 私の視界は急激に狭まっていく  それでいい   それでいい

        • 生きた死体

          あまりにも自然な体温の上昇がわたしの理解を遠ざける 前を向くにはこの街の正しさが必要だって何回も言っているじゃない 私に みんな穏やかな顔をしている 私だって穏やかであった 間違えていた過去に戻って直すつもりはない 今はそうであるというだけ 部屋の想像が遠くなる 誰が思考することの困難さをわたしの体に組み込んだのですか? 新幹線で聴くR&Bは耳を締め付けるし、すれ違う人はこちらを睨んでいるように見える はやくこの空に飛び降りたい 海の怪物になって深海へ潜りたい 全部嘘だ

          骨髄のことはわからない

          想像がなければ距離が現実のものになり存在をぼかしてゆく 世界は、きみは、遠く、直近にあり、私の中にもある 濃い霧で視界が霞んだとき、見えていなくてもその場にある、はずであるが、今回ばかりはどうも怪しい    ゆめをみる 空は雲ひとつなく晴れていて、海岸で笑顔の祖母と話している 祖母と別れ、話した内容を反芻しながら目覚める が、何も覚えていない わたしはすべて忘れている わたしは、自分の愚かさも忘れている  気づけば私は荒地に思いを馳せている 気づけば私は荒地の写真を撮っている

          骨髄のことはわからない

          せせらぎ

          ぬるま湯のような未来に手をかざしてみたものの、空気が裂かれて部屋に籠る 明日の私がきみの香りを連れてきて、占いを始める。 平和と自由の文字が重なって、空が暗くなってゆく 青い目にはわたしが小さく映る 目覚ましく光が変化するあの星を思いだす 内側の詩 曖昧な部屋  私のかたちは雲のように変わり、流され続けている この風景を歌にする それはせせらぎである 気づかないで わたしときみは、間違ってなんかいない 足りない言葉を二人の間に挟んだ温度で補う 深く沈む朝の地底 澱む

          せせらぎ

          春灯

          どうしても身体と精神の乖離をなんとか落ち着かせたかったので、あえて移動をしてみることでブレを補正していこうと考えたりもしたのですが 「そういえば数年前に流されるがまま引越してきた頃にも冊子を作ったんですね 写真とささやかな言葉を入れた 今見れば拙いものだけどそれも身体と精神の移動についてをテーマにしてて」 晴れなのに雨が降っているのは喧嘩なのですか?それとも連携ですか わたしだったらそこで大きな幕を広げない それじゃあ世界に伝わらないと言われても、すでに世界はわたしのか

          無題

          末長い地獄が待っているらしい 待つだけ待てばいい 置いてきた空気はわたしの形を保っているだろうか どうかそのまま耐えてくれと願うのです ここは草原、入り口の地点 奥まで触れられてるってのに何の感覚もありはしないって だって わたしには麻酔が打たれている また山のこと、丘の上のこと、考え始めようかなと思う きみも手伝って 工事中立入禁止の柔らかい地面に踏み入って海まで行ったことは忘れていないし、そこにわたしの足跡を付けるべきであったはず 今はその上に真っ新な祈念公園が整備さ

          (無題)

          記憶から無くなるのが怖い   私は言葉に、絵に、作品に、人生をかけている  ずっと燃えている この覚悟に嘘はないよ    ずっと胸が苦しい この感覚にも嘘はないよ  もういっそ、このまま死んだっていいとも思ってる  でももっと言葉のことを知りたい もっとせかいのことを知りたい もっと表情のことを知りたい もっと、わからないことが多すぎるから、どうせなら全部確かめてから死にたい いやでも、その頃には死んだら駄目と思ってるかも  これは人に贈るものじゃない 私に贈るもの   わた

          無題

          またこの街で長期的な工事が始まる  私はそれで安心する   しかし工事員の怒鳴る声が聞こえて 私はここでの期待を放り投げる  家に帰って扉を開けた瞬間、大きな蜘蛛が棚の隙間に逃げ込んでいく 私はそれで安心する

          2:09

          もっと近いところにあると思っていた体温が、距離を想像して少し離れていくような気がして 汗みたいでしょ  山から海に行くの この街はそうできてる 建物の向こうに海が浮かぶ この街は、そうできている

          夜の兵

          朝に痒くなる 青白い襖の光 原発のことじゃないよ 踊ってみようよ 砂の上で 空の上で

          新しい山道

          新しい山道 空のスチール缶 機械みたいな鳴き声の鳥 一瞬だけの茶室の香り いま君の頬をなぞって ことばにして ことばにしないで 今日はここに空気を残していく 私は宙に浮けると思う 君は君の歌を歌ってよ

          新しい山道

          逃亡 #2

          映画館を出て、ふと海に、砂浜に行こうと思ったので向かうことにした。ここから歩いて向かうと1時間ほどかかる距離だったと思う。途中の道は、いつでも工事をしているから、ルートには確信を持てないけど、日が暮れる前には着くようにと、とりあえず歩き始めた。いつも工事中の場所を通りかかると、そこは綺麗さっぱり何もなくなっている。その先に目をやっても、工事が終わっている箇所だらけだった。私は混乱した。一体何が終わったっていうんだ。これで良いはずがない。ここはいつでも、工事中のはずなんだ。そう

          初夏のこと

          流れているはずなのに停滞している 対流とも違う 丘の向こうの空気の違いが、もうすぐ形にできるかもしれないってことだけが今の希望で、だからその後どうなるかってことはまだわからないよね まだ会ってもいない人に、この体温が伝わっているのだとしたら、それは本当にすごいこと そこにだけ、また新しく空気が生まれたらそれでいいよ

          初夏のこと

          崩落

          水中から伸びている水草の間を通り抜けるその感覚はどんなだろう   微かに鳴るオルゴールの音色とやわらかい光は何    きみは丘の上の  赤い屋根 なんだかくらくらしてしまう   今は空よりも、もっと湿ったもの  不幸じゃない  顔を見た瞬間にわかるものってあるよね 私は今、そのことで頭がいっぱいだよ わかっている ここは何よりも一番、静かに光っているはずなのだからね