20231102「器の前後」
手のひらから
零れ落ちて
ころころ最果てまで転がり
聞こえなくなるまで
その音の反響を聞く
届かない途中に聞いてみて
所々に潜ませたそれを
違う角度で拾って
再集合したら
ひとつの碗として
結晶するのかもしれない
それはひとつの夢
もしくは遠く離れた星の欠片
合わさりつつ
離合して
含みつつ開け放つ
離した指から
砂金の眩さを泥水に見ている
映ったそれを反射させ
伸びた枝振りが
それを覆う
影間をひかりが形どり
魚影がちらほら移動して
窪みに隠れて行く
落雷で焦げた枝
ぐるりと回し
もうひとつの椀を得る
年輪の数を数え
人の数倍を刻み
吸い上げた水と
吸い込んだ空気を
繰り返し循環させる
しばらくそこに居座り
木陰で休憩
暖を取って
ひとくち飲み込む
緑の粉の苦味と
甘さの勘所で
含んだ風味を
さらさらと味わう
季節のものをいただき
その出所と誰かの手わざ
報酬の出来前
点と点
天と転
添えられた眼差し
見えることない体内の働き
様子を展ろげ
まざまざとその出来事を馳せる
追いつけないのに
思考の前提を置き去りにして
行き渡る水の衣
接点の肌ざわりと風合いで
素肌のざわめきを聞いている
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