見出し画像

【CHOOSEBASE SHIBUYA潜入レポ】DX・SDGsとマーケティングを考える

こんにちは!B2C商材を主に扱う事業会社でマーケティングの仕事をしているまっぴです。

皆さんは買い物をする際、何を基準に選んでいますか?
そして、その商品が完成するまでの過程、買い物をする際の工程を意識したことがありますか?

先日訪れた新しい購買体験ショップ【CHOOSEBASE  SHIBUYA】にて、これらの購買体験について考え直してみたいと思う部分がありましたので、そちらをシェアしたいと思います。特に、マーケターの方々が「作り方」「伝え方」「届け方」について見つめ直すきっかけになれば幸いです。


この1年半で変化した当たり前・価値観

この1年半コロナ禍で、大きく当たり前の生活というものが変わりました。
働き方、食事の仕方、人との関わり方、エンタメの楽しみ方など。

・オフィスに出社していた→自宅からテレワーク
・人としゃべりながらお酒を楽しむ→家で一人飲みかZOOM飲み
・とりあえず友達に会おうと誘う→SNSやオンラインゲームでのコミュニケーションを取る
・ライブはチケット抽選に当たったら現場に行ける→オンライン配信で誰もが最前列で楽しめる

変化したものはこれ以外にもまだあります。それは「買い物の仕方・物に対する価値観」です。

外出がほとんどできなくなったため、買い物は店舗に行く頻度をできるだけ減らし、ECで完結させるようになりました。

自宅にいる時間が長くなったことで、家の中のモノに目が向くようになり、私をはじめ多くの人が断捨離を行うようになりました。

そして、本当に自分にとって大切なモノとは何かを見つめ直し、必要なものにフォーカスし、無駄にモノを買わなくなりました。

また、モノを買うときの必需品だったレジ袋が有料化されるなどSDGsをベースとした施策や商品・サービスが身近な生活の中に浸透し始めました。

そのように、これまでの買い物のあり方を見直す機運が高まっている中、購買体験の中でサステナビリティの課題提起をしてくれるショップ「CHOOSEBASE SHIBUYA」が西武渋谷にOPENしたので、行ってみました。


CHOOSEBASE  SHIBUYAとは

画像1

(FRACTA様のnoteより)

「CHOOSEBASE SHIBUYA」は、常に新しい出会いと学びのある購買体験を提供し、”意味に出合い、意志を買う”という次世代の店舗のあり方を提案するメディア型OMO*ストアです。


店頭/ECのシステムやオペレーションを融合させ、オンラインとオフラインを自由に行き来できるOMOストアの仕組みを導入。西武百貨店は、百貨店業態としては珍しい店舗とECの完全在庫連携を実現し、店頭で見た商品を帰宅後オンラインで購入する、あるいはオンラインで購入した商品を店舗で受け取るといった、顧客目線での購買体験のあり方を追求したショップです。


<CHOOSEBASE  SHIBUYAのコンセプト>

意味に出合い、意志を買う

まだまだ知るべき世界、変えていくべき課題が山積みな時代。
社会の分岐点に立っている今、わたしたちは一体どんな未来を描いていくのだろう。

意味に出合い、意志を買う

ひとつひとつの選択が、わたしたちの未来をつくる。
ここは、未来への選択肢を届けるストア。
この大きな十字路を通って、未来への選択を選んでいこう。
自らの手で。
ここ、渋谷から。

参考▶︎https://choosebase.jp/pages/aboutus

このコンセプトが示しているのは、これまであまり目を向けられてこなかった商品のストーリーやナラティブ(物語)に目を向けて買い物をすることの提起だと思います。

「今とりあえずよければ良い。今の課題が解決されれば、どんな素材で、どんな過程を経て作られた製品であっても良い」という考えで買い物をすることは地球環境の持続可能性を損ね、最終的に我々が被害を被る事になる。

だからこそ、「未来を念頭において、今の購買選択をする」のはどうか。
まずはこの場所から課題提起をしたいというコンセプトのショップなのです。

実際、このショップのクリエイティブディレクターである辻愛沙子さんはインタビューで以下のように答えていらっしゃいます。

お客さまが未来を選べるような「課題提起」をしていきたいので、もし何も買わなかったとしても、来ることで気づきがあったり、もやもやが残ったりすることが理想だと思っています。(途中省略)普段自分たちが生活している環境が、いかに人工的なものなのか、自分たちの環境が巡り巡って彼らにどんなメッセージや負荷を与えてしまっているのか、考えるきっかけになればと思います。

この場所ではお客さまである皆さんが主役です。正解を提示するのは私たちの仕事ではありません。誰もが声に出さなくても主義主張を心の奥に持っているはずで、私たちはその考えや行動をどこまでも信じて、選択肢を提示するだけです。次の渋谷を作っていくのはみなさんの思いや行動。変わり続けるこの場所で、皆さんが見ている未来を一緒に作っていきましょう。

私はその課題提起に対してどう思うのかを肌で感じてみたいと思いました。


私がCHOOSEBASE SHIBUYAに行こうと思った理由

今回私がこのショップに行ってみようと思った具体的理由は3つです。

①ECでなんでも買えてしまう今、店舗というリアル業態がどう価値を示していくことができるのかが気になったから。
実店舗ではどのようなDXが可能なのかを知りたかったから。
サステナビリティをどうプロモーションに取り入れていくべきかを考えたかったから。

その3点を踏まえてショップを回ったときに私なりの気づきがありましたので、マーケティングに携わっていらっしゃる皆様の参考になればと思います。店内での体験フローを示した後、私の解釈をお伝えします。


お店の中はどんな感じ?

店内は薄いグレーカラーで統一。細かいですが、天井の配管やエアコンも全てグレーで塗られています。無機質さを表現し、ここにディスプレイされている商品の背後にある資源の有限さを伝えているように感じました。

画像8

画像7

画像3

画像9



TAILORED CAFEというカフェも併設されていました。さすが渋谷といった感じで、カフェだけ大学生くらいの若者が集結していました笑
完全に映えスポットとして機能していました。

ここでの決済ももちろん完全キャッシュレス。ただ、飲み物注文後は番号札を渡され、飲み物が出来上がったら声で呼ばれる仕組みで「そこはアナログなんかい!」とツッコミを入れたくなる感じで面白かったです。

画像11

画像12

画像13



どうやって買い物するの?

買い物の大まかな流れは以下です。

画像2


商品ディスプレイに設置されているQRコードを読み込むことで、その商品をアプリ(ブラウザ)内でカゴに入れることができます。この時点で、はっきり購入することが決まっていなくても、とりあえずキープしていく感覚で。

画像7


最終的に買う商品が決まったら、自分のスマホを持ってレジに向かいます。

画像11

(FRACTA様のnoteより)


支払い用のQRコード発行にはLINEかメールアドレス登録が必要のようです。ここでつまづく人は出てきそう。ある一定のリテラシーが求められますね。私の50代後半の両親には多分無理です笑

画像7


LINEで試してみた画面です。LINEのメッセージで送られてくるQRコードを提示して決済する流れですね。

画像8

今回は友人と併設されていたカフェに行きそのまま出てしまったので、欲しかった木村石鹸さんのシャンプーが買えずじまいに。このnote書き終わったら、ネットショップから買います💦

店舗でも、宅配で家に届けてもらう選択肢もあるようです。多く買ってしまった時にも身軽に次のショッピングやアクティビティが楽しめて安心ですね!


「CHOOSEBASE SHIBUYA」を通して考え直させられた3つのこと


1.ECで事足りる今、問われる店舗の存在意義

正直サイズ感や自分に合っているかが問われる商品以外はあまり店舗に行く必要を感じなくなってきています。下手したら、返品OKのECもあるので買うと決まっているものがある場合には、ECで十分なのかもしれません。

しかし、今回久々に実店舗でショッピングをしたときに実店舗でしか味わえない体験価値がありました。

それは「セレンディピティ(偶然の出会い)」です。

ECでは自分の閲覧履歴や購買履歴をもとにレコメンドされるのが当たり前になり、そこでは自分の興味関心に沿った商品にしか出会えません。

特に家族や友人などと行動にする際はなおさらで、その人が持っている文脈・知識で持って、普段一人の買い物やECでは目につかない商品を勧めてくることが多々あります。

そして、今回はあまり店員さんが介在することはありませんでしたが、店員さんとの会話の中で自分の眼中にはなかったものと出会えることもあります。

CHOOSEBASE SHIBUYAは、「自分の興味関心の文脈にないものとの偶然の出会い」が実店舗でのショッピングの価値だと改めて認識する機会になりました。



2.購買体験のDXと、ユーザーにとっての利便性の差

今回はショッピングカゴが「スマホ」、決済機能を「QRコード」「キャッシュレスサービス」が担っていました。

CHOOSEBASE SHIBUYAを訪れる前は、QRコードを読み取ってショッピングって、近未来的だなぁと思ってワクワクしていたのですが、実際やってみると不便さが加えられた感じがして少し残念に感じました。

今までであれば、

商品に直に触れて、ぐるっと360度見回す

良いなと思った商品があれば、カゴに入れてキープ

やっぱり違うと思ったらもとに戻す

こっちの商品の方が自分に合っているかな〜

などと、「商品を選ぶ」というフローの中の試行錯誤に楽しみがありました。そしてそのフローの中に、面倒はありません。

ただ、今回のショップはカゴに入れるためにはそのものを手にするのではなくQRコードを読み取り、違うと思ったらアプリの中でカゴから出す作業をする必要があります。字面だけ見ると、何が面倒なのと思うかもしれませんが、実際にフローとして体感すると目の前にモノがあるのに、デバイスでしかコントロールができないという不便を感じます


Amazonが運営する無人レジコンビニ「Amazon Go」のように、商品をカゴに出し入れするというフローはそのままに、一番時間がかかって人々がイライラしてしまう決済のフェーズをテクノロジーで簡素化するイメージであれば、利便性を高める方にテクノロジーを使うことができると思いました。


DXが叫ばれている今、新しいテクノロジーを様々な場面に入れようと試みます。しかし、それはユーザー体験をテクノロジーなしの時よりも向上させられているのか、使いやすくなっているのかというUI/UXの観点で考え直す必要があると思いました。

人が使いやすいと思っている領域はわざわざテクノロジーを入れなくても良いかもしれないという視点もDXでは大切だと感じた1日でした。


3.サステナビリティとユーザーインサイトの差

今回私が訪れた期間のコンセプトは「TIMELIMIT」と設定されていて、サステナビリティについての課題提起がなされていたと解釈しています。

実際、ヴィーガンの化粧品や、何度も洗って使い続けられるフェムテックの下着、人工添加物が含まれていない食品など販売されていた商品からメッセージの一貫性を感じました。そして、世の中にこんなにもサステナビリティを意識されて作られている商品があるにもかかわらず知らなかったことにも気づきました。自分は現時点で環境問題にあまり関心を寄せられていないのだなと…そしてそこで見たメッセージで購買まで気持ちを高めることができなかったというのが正直なところでした。

そのことから、サステナビリティ(持続可能性)を考慮したマーケティング活動には「課題提起する側が提起される側(ユーザーサイド)に歩み寄り、ユーザーが自分ごと化できるメッセージにまで落とし込む工夫」が必要であると感じました。

環境にいいよと言われても、自分にどう繋がっているのかがすぐにリンクしないと動かない。「それ食べたら太るよ」とか、「体に悪いよ」とか言われても食べてしまうものがあるのと同じように。

悲しいのですが、それが真実だと思いました。

人権問題なども同じです。差別されている側や差別を無くそうと活動している側は、差別をしている側との隔たりをなくすには差別をしている側に歩み寄ることが必要なのでしょう。

このようにSDGsに通ずるマーケティングでは特に、「敵対してしまうものへ歩み寄り、敵側から見た世界を理解した上で、どう伝えることで行動変容ができるのか」が鍵だと感じました。


最後に

私はあまりSDGsの視点を持ってマーケティング活動ができていないので、大口を叩ける立場ではありません。ただ、自分がユーザー側に立っている今見えた視点を忘れずに、今後のマーケティング活動に生かしていきたいと思いました。このような体験価値にフォーカスを置いていたり、課題提起をするような取り組みには、今後も足を運んでみたいと思います。半年後の新しいテーマ(コンセプト)も楽しみです!


参考記事

CHOOSEBASE SHIBUYAでの購買フローなど


クリエイティブディレクター辻愛沙子さんのインタビュー

株式会社そごう・西武によるプレスリリース



この記事が参加している募集

もしよろしければサポートいただけると嬉しいです…!noteの執筆の題材となる書籍の購入などに充てさせていただきます。