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「嗣永桃子」に寄せて。

突然だが、私は現在イタリアで暮らしている。
景色は美しく、気候も穏やかで大好きな場所だ。

小さな頃からの夢でもあった海外での生活。とても充実しているのに、私は毎晩泣いている。
理由はホームシックでも、コンビニがないことでも、電車がストライキで止まることでもない。

彼女が歌い、踊る姿を画面越しに観ていると、どうしても、毎日欠かさず涙が出てくるのだ。



その人とは、かつてハロー!プロジェクトに所属し、Berryz工房、Buono!、ZYX、カントリー・ガールズのメンバーとしてアイドルをしていた女性のことだ。

彼女の名前は嗣永桃子(つぐながももこ)。
トレードマークの二つ結びと、「ももち」の愛称をご存知の人も多いのではないだろうか。
彼女は2017年に、惜しまれつつも芸能界を引退している。
私は、彼女の存在によって人生が変わってしまった「おとももち」の一人だ。


彼女を初めて意識したのは、15歳の時だった。
アメリカでの短期留学を終えた私は、海外での非日常的な経験を反芻しながら、ごく普通の日常に戻る最中だった。流し見ていた歌番組のほんの7分程度の時間で、私は彼女に強烈に惹かれてしまった。

「ももちで〜す」とダウンタウンに絡みにいく彼女の声は、地声とも歌声とも異なっていて、完璧に演じていることがみてとれた。
それだけ賢い人なのだろう。
自分に出来ること・やるべきことを分析し、どのように人の記憶に残るかを計算しているその姿こそが、私が考えていた「中途半端」なアイドル像を粉々に砕いた。

正直なところ、当時の私はアンチアイドルだった。
口パク、誰かに与えられた曲をなんとなく歌ってるだけ…。
大変失礼ながら、まだまだ現役で中二病に罹患していた私はバンドやシンガーソングライターこそが音楽家であると大きな勘違いをしていたのだ。


ところがどうだ。
彼女、ひいてはBerryz工房のメンバーは、笑顔を振りまきダンスをしながらもずっとずっと生歌でパフォーマンスしていた。
そして、何よりもそのパフォーマンスのすべてが、ありえないくらいに可愛く、強かったのだ。
本当に、本当に衝撃的だった。
また、私の非日常が始まった瞬間だった。




あれから13年が経ち、彼女はステージから降りたままだ。
聡明で堅実な彼女のことだから、今後舞台に舞い戻るより、かねてから勉強していた幼児教育の道を極めているんだと思う。
きっと、もう二度と会うことは叶わない。


それでも、毎日毎日彼女の歌を聴く。
毎日毎日彼女のことを考える。
初めてあなたを知った日から、私はずっとずっと小指の魔法にかかっているのだ。

もう二度と会えなくてもいい。だって、あなたを知ることができたんだから。
あなたより好きになれるアイドルなんて、今後一生現れなくて構わないんだ。
ただずっと、ずっとあなたのことが好きです。


幸せでいてほしい。
アイドルとして本当に本当に長い時間を過ごしてくれたあなたの人生は、アイドルじゃなくなってからの方が長い。だから、アイドルでいた頃より幸せに生きていてほしい。
こんなことを願ってしまうことだけは許してニャン。


猫も杓子もアイドルを名乗る時代で、あなたを見付けられて本当によかった。これからのあなたの面影を探したりはしないよ。
でも、もし、来世でも歌って踊ってくれるなら、私は地球のどこにいたってあなたを見付けるし、今世よりもたくさん会いに行くよ。


ファンレターもラブレターも届けられない今だけど、彼女への気持ちは留まることを知らない。だからこうしてネットの海に、ボトルレターを流している。

彼女のファンであったひとも、そうではない人も、彼女以外のもう会えない人を好きでいる人にも、私の一方的な彼女への愛の告白を聞いてほしくて、今も泣きながら文章を綴っている。


何がしたいのかと聞かれたら、
とにかく愛について話がしたいんだ。
オタクっていうのは、話が長くなるように出来ている。こんなに長く話したら、握手会なら引っ剥がされてる。

それでも、今日も彼女のことを愛しているんだ。
この街で「Buono!」と言う度に奇跡を感じながら。


ももち、元気でね。

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