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【漫画】チェンソーマンが描く今までにない「異能」のかたち

 ライトノベル、漫画を初め、世の中には多種多様な「異能」モノの物語が蔓延っている。

 アニメ化が決定し、PVも発表された藤本タツキ著『チェンソーマン』も間違いなく「異能」モノに含まれるだろう。

 しかし、『チェンソーマン』が描く「異能」は今まで僕が見てきた「異能」モノとは決定的に異なるものがあるのだ。今回は『チェンソーマン』と同様に人気を博している芥見下々著『呪術廻戦』と比較して話して行こうと思う。

 ただ一つ最初に言っておきたいのは、僕ー雨瀬はどちらの作品も大ファンだ。どちらかを貶すつもりもないし、優劣をつけるつもりもない。書き方次第でそう思われる箇所が生まれる可能性があるので、先に言っておきたかった。

 また『チェンソーマン』の軽いネタバレも含みます

1.あらすじ

「悪魔」と呼ばれる存在が日常に蔓延る世界。少年デンジは死んだ父の借金を返すべく、「チェンソーの悪魔」であるポチタと共に、悪魔を駆除する「デビルハンター」として生計を立てていた。しかし借金は中々減らず、ごく普通の日常を願いながら、叶えるには到底届かなかった。ある日、デンジは仕事を斡旋していたヤクザに騙され、「ゾンビの悪魔」によってポチタと共に殺害されてしまう。しかし、ポチタはデンジの血を飲んで蘇生し、契約と引き換えにデンジの心臓となる。復活したデンジは「チェンソーの悪魔」へと変身する力を手に入れ、ゾンビの集団を一掃する。デンジは現場に駆け付けた公安のデビルハンターであるマキマに導かれ、その身を管理されることになる。
東京の公安本部へ移ったデンジは、マキマの命令を受けて先輩の早川アキ、デンジのバディとして選出された「血の魔人」パワーと同居する。公安ではかつて7分間で110万人を殺した「銃の悪魔」の討伐を掲げ、世界各地に散った銃の悪魔の肉片を集めていた。一方で銃の悪魔に従う悪魔や契約した人間、さらにデンジと同じ「人間でも悪魔でもない者」らがデンジの心臓を狙っていた。
(Wikipedia「チェンソーマン」より引用

2.「異能」モノを初めとした一般的なバトル作品の特徴

 先述した通り、『呪術廻戦』をメインに比較していく。

 『呪術廻戦』のあらすじも軽く紹介しておこう。呪霊が蔓延る世界で、呪術師である主人公たちが術式を用いて呪いを祓っていくというアクション漫画だ。術式はこの記事で言う「異能」を示す。赤血操術という血を自在に操るものだったり、式神という鬼神を呼び出す力だったりと能力は呪術師によって様々だ。

 そしてこの記事を開いてくれたあなたなら一度は聞いたことがあるはず。

領域展開

 という言葉を。

 『呪術廻戦』より五条悟の領域展開シーン

 
 呪術廻戦において必殺技の立ち位置である領域展開。

 全ての呪術師が発動時に「領域展開」と口にする。

 他の作品であれば、デクは「デトロイト・スマッシュ」と、悟空は「カメハメ波」と、円堂守は「ゴッドハンド」と叫んで技を出す。

 物語にのめり込んでいれば気にならない、当たり前のことなのだが、一度「普通は技名言いながら攻撃しないよな」と思ってしまえば終わり。それが気になって仕方がなくなる。

 もちろん、これは物語を盛り上げるための演出にかかせないものだ。それは理解している。


 しかし『チェンソーマン』では技名を口にするキャラクターがいない。

3.『チェンソーマン』が描く異能

 チェンソーマンだって技と言えるような攻撃の仕方を持っている。

 例えばチェーンを飛ばしたり、自ら心臓を取り出して投げ、その心臓が再びチェンソーマンに変身したり。

 しかし彼は技名を叫ばない。

 特にこのシーンは強敵を仕留めるシーンであるにもかかわらず無言だ。

 他のキャラクターもだ。どんなに強い力を持っていようと叫ぶ言葉は「うおりゃあ!」のような掛け声だけ。

 やはりそれだけだと盛り上がりにかけるのかもしれない。それなのに、怖さと面白さを感じる。

 きっと違和感が生まれない事とリアリティが脳に直接恐怖の信号を送る事を可能にしているのだろう。

  
 
これがチェンソーマンの奇妙さと美しさの理由であり、そして新たな「異能」の描き方だ。

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