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Amazonが「衛星クラウド」ビジネスに進出していた話

従量課金のクラウドサービスとして確固たる地位を築いたAmazonグループのAWS。
実は、彼らの次の戦場は宇宙です。

AWS Ground Stationという新たな挑戦は、世界にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。
一緒に見ていきましょう。

AWS Ground Stationとは

2019年に正式ローンチされた、「衛星通信のコントロール、衛星データの処理、衛星運営のスケーリングを可能にする完全マネージド型サービス」です。

これは一体どういうことでしょう。

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そもそも衛星とは、惑星のまわりを周回する物体のこと。僕たちが夜眺める月もそのひとつです。中でも、地上の撮影や気象観測など様々な人間のニーズを満たすために開発・運用されたものを人工衛星と呼びます。

昔は宇宙開発といえば国家のものでしたが、近年は部品等の値段低下に伴って民間のスペーステックが盛り上がりを見せています。
衛星を「つくり、飛ばすだけ」なら1000万円ほどで可能だとか。

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稼働中の人工衛星はここ10年で2倍以上に増えています。

しかし人工衛星は地上にデータを送らなければなりません。
地球と衛星の位置が変わらなければ良いのですが、地球は休まずに自転を続けます。そのため、一定のタイミングで地上の通信基地(ground station)を切りかえる必要がありますね。

ところが、グラウンドステーションの建設には莫大なコストがかかります。ひとつ数億〜数十億円のステーションを複数台設置しなければならず、宇宙ビジネスの参入障壁は依然として高いまま。

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グラウンドステーションはパラボラアンテナのような形状をしています。

そこで立ち上がったのがAWSです。本業で培った優れたクラウド技術を活かし、世界各地のグラウンドステーションを従量課金制で利用できるサービスを作り上げました。
これがAWS Ground Stationの成り立ちです。

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AWSの顧客にはロッキード・マーティンやAmazon CEOのジェフ・ベゾスが立ち上げたBlue Origin、NASAなど豪華なメンバーが揃い踏みで、すでに「衛星クラウド」業界では最大手と言ってよいでしょう。

Amazonらしい戦略

AWS Ground Stationの強みは大きく3つあります。

まずは価格の低さ。
AWSならではのインフラ技術と従量課金制により、「従来の運営コストの80%を節約できる」とのこと。

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AWS Ground Stationの仕組み

次に速さ。
通常のグラウンドステーションは、地球の「極」、つまり北極や南極の近くに設置されることが多いです。これは磁場の関係で衛星が極を通過するルートをたどるためで、縦の線で衛星を捉えるイメージ。

しかし、それではデータ通信に時間がかかってしまいます。

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そこでAmazonは「横」に攻める決断を下しました。様々な場所に基地局を設置し、衛星がどの位置にいても通信ができるシステムです。
また、AWSのインフラを最大限に活用することで通信や処理そのもののスピードも一級品。

そして柔軟性。従量課金制のもう一つの利点は、簡単に利用タイミングの変更ができること。
なんと通信開始の15分前までキャンセルが可能です。

宇宙ビジネスにありがちな長期契約も必要ないため、スタートアップ等にとっても非常に使いやすいサービスでしょう。

潤沢な資金力とアイデアで、競合を寄せ付けないプロダクトに仕上げられたAWS Ground Stationは「向かうところ敵なし」と言ってよいと思います。

比較的参入障壁の高い市場にいち早く取り組み、市場を掌握する。Amazonの常套手段ですね。

熾烈な競争が待っている?

衛星用のクラウドサービス。超先進的なビジネスではありますが、クラウドコンピューティングで長年戦っているGoogleやMicrosoft、そしてニッチなニーズに特化したスタートアップ等もすぐに参入してくるでしょう。

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というのも、やはり宇宙ビジネスはスケールが大きいからです。

2026年までには300億ドル=3兆円規模の市場に成長すると予測されていて、その後も発展が続くことは明白です。

中でもクラウドコンピューティングは誰もが使うインフラ事業。「地上の」クラウド市場が1000億ドル=10兆円なので、伸びしろは大いにありますね。

AWSのライバル候補として、ドイツのスタートアップUp42に触れたいと思います。

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エアバス社の出資により設立された会社で、最近まで日系アメリカ人のイーライ・タマナハ氏がCEOを努めていました。

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イーライ・タマナハ
Microsoft、Netflix、Amazonなどでエンジニア職を歴任
世界最高峰のアクセラレーター、Y Combinatorを通して起業を経験(ドローンビジネス)
学生時代は日本で2年間の宣教ボランティアに従事

ちなみに、イーライ氏は今年の終わりごろから活躍の場所を東京に移すとのこと。彼の動向からは目を離せません。

…話がずれましたが、Up42のサービスはとても面白いです。

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Up42が所有する衛星が撮影した画像データをリアルタイム利用できるSaaSで、すでに1000以上のアクティブユーザーを抱えています。

AWS Ground Stationに比べれば用途や機能に制限はありますが、ユーザー自前の衛星を必要としない点で大きなメリットがあります。

2019年創業ながら注目度は抜群ですね。

今後に向けて

AWS Ground Station、そして衛星産業の今後を少し考えてみます。

まず、衛星というテクノロジー自体がどんどん身近になっていくと思います。

イーロン・マスク率いるSpace Xが昨年発表した衛星インターネット構想Starlinkはご存じでしょうか。

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今年1月にフロリダ州から打ち上げられたStarlink衛星。現時点で540個が稼働中、最高で42,000個まで増える計画らしい。

文字通り衛星から電波を送受信するシステムで、完成すれば格安かつ地球上どこでもインターネットを利用できるようになります。
数年後には「wi-fi」という言葉は死語になるかもしれません。

加えて、個人が衛星を飛ばすようになる日が来ることも予想できます。
「そんなわけあるか」と思うかもしれせんが、かつてパソコンやインターネットが家庭用ではなかったことを考えれば、むしろ当たり前の流れと言えます。

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小学生が夏休みの自由研究で気象衛星を打ち上げる。趣味で宇宙の映像を撮るために衛星を自作する。そんな日常がやってくるかもしれません。

そうなればAWS Ground Stationの需要はさらに拡大し、AWS本体と並んで世界中の人々が使うサービスに成長します。

すでに日本初の衛星データプラットフォーム(API)Tellus(テルース)が存在するように、環境はすでに整いつつあります。

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2018年にローンチ。光学衛星、SAR衛星、気象衛星など、幅広い通信に対応しています。

2020年代に入り、本格化してきた宇宙ビジネス。
いち早く覇権を握るのは誰でしょうか。そして、僕たちの生活はどのように変わっていくのでしょうか。

注視していきたいと思います。それではまた!

この記事を書いた人

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Neil(ニール)
ecbo (荷物預かりプラットフォーム) とプログリット (英語コーチング) でUI/UXデザイナーとしてインターン。現在はIT企業でデザイナー。 ハワイの高校。大学では法学を専攻。もともとはminiruとしてnoteを運営。

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