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『センス・オブ・ワンダー』を考える


私と『センス・オブ・ワンダー』


私にとって大切な本はいろいろありますが、その中の1冊はレイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』です。

数えきれないほど読み返し、講座を開く時などは、ほぼ必ず紹介しています。『センス・オブ・ワンダー』が大好きな方とても多いですよね。

子育ての本ではないですが、子育てにも大きな示唆を与えてくれる本だと思っています。私自身もこの本に書かれていることを読んで、子育てについてとても励まされたり、悩みや迷いが多い時に、私の考えていることは間違っていない!と確信を得ることもありました。でも実は最初に読んだのはいつだったのか定かではないのです。はじめての子育て中(約19年前)に「この本良い本だったな、前も読んだな・・・」と思いつつ再読し、最初に読んだ時とまた違うさらに大きな感動を覚えたのです。

本って出合う時によっても感動が違いますよね。そこがまた本との出会いの面白さ。最初は「良い本だな」と思った程度、でも二度目に会った時は涙が出てくるような感動で子育てのバイブルに。そんなことから子育て中の方には特におすすめしています。

おすすめするたびにプレゼントしたりして何冊買ったことか。先日はこの文庫版を購入しました。
『センス・オブ・ワンダー』についてここで書くと長くなるのでそれはまた別記事で書くことにして、関連書籍の紹介にうつります。

大判の英語版も持っていますが、2年くらい前でしょうか、X(Twitter)で若松英輔さんが『センス・オブ・ワンダー』に関する書籍を出版するという発信を見かけたのです。

若松英輔さんファンでもあるので、これは見逃せないと思い、出版されるのを楽しみにしていました。それが昨年5月に出版されたこちらの本です。

『いのちの秘儀 レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」の教え』について

『いのちの秘儀 レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」の教え』 作:若松英輔 亜紀書房(2022年)


この本が『センス・オブ・ワンダー』をより深く読み込むことへ導いてくれました。

若松さんの解釈が深くて温かい。共感しながら、ハッとさせられることも多かった。その時々でまた響くところが違う。タイトルのとおり「いのち」をひとつのキーワードとしても読み解いています。

もちろん精確な知識と見解は重要です。しかし、その奥に「いのち」そのものへの畏敬と愛がなければ、私たちは道を誤るかもしれない。「いのち」への畏敬と愛を生きること、その道程を『センス・オブ・ワンダー』に見出していきたいと思います

『いのちの秘儀 レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」の教え』 作:若松英輔 亜紀書房(2022年)

 元々、訳者の上遠恵子さんはレイチェルの評伝を訳したときは「sense of wonder」を「驚異の感覚」と訳されていたそうです。

しかし、その後語り切れていないことがあると感じ「センス・オブ・ワンダー」という表記にしたそうです。そして「神秘さや不思議さに目をみはる感性」と補足されていたと思います。
 日本語に置き換えにくいというだけではなく、言葉に表しがたいもののようであると若松さんも書かれています。

確かになんと表現して良いのか、ひとことではあらわせない深い意味を含んだ言葉であり、だからこそ長年読み継がれているとも言えます。

本書の中で若松さんは、レイチェルは第1級の科学者であり優れた詩人でもあると書かれています。詩人として何かを出版したわけではありませんが、私も本当にそう思うのです。

「センス・オブ・ワンダー」にあふれている詩情豊かな美しい言葉や表現。若松さんはそれを「『いのち』とのつながりを決して見過ごさない詩人の魂」と書かれています。

「センス・オブ・ワンダー」とは何なのか。

なんと言いあらわせば伝わるのか。

この本には実にたくさんの表現で「センス・オブ・ワンダー」が語られています。どれも深く頷く解釈であり、新鮮にも感じられたものもたくさん。

その中の一部をご紹介。

『センス・オブ・ワンダー』はかたちを変えた哲学入門です。
『センス・オブ・ワンダー』がはたらくとき、私たちは「いのち」の輝きをはっきりと認識します。
『センス・オブ・ワンダー』は言葉の奥にコトバを感じ取るちからであるともいえそうです。
『センス・オブ・ワンダー』を育むとは、ある意味で自分の感覚に謙虚になろうとすることかもしれません。
レイチェルもまた、『センス・オブ・ワンダー』は人生の「解毒剤」だと書いています。
『センス・オブ・ワンダー』はあった方がよいものではありません。むしろなくてはならない何かなのです。
『センス・オブ・ワンダー』はかたちを変えた愛である。
「小さい」けれどもかけがえのない存在、それを世界と自分の中に見出していくちから、それが『センス・オブ・ワンダー』です。

『いのちの秘儀 レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」の教え』 作:若松英輔 亜紀書房(2022年

 これはほんの一部です。まだまだ書いてあります。とても考えさせられる内容で、ますます『センス・オブ・ワンダー』のファンに。

私も自分なりの「センス・オブ・ワンダー」を言い表すことばを探してみたいと思いました。

『13歳からのレイチェル・カーソン』について


『13歳からのレイチェル・カーソン』 上遠恵子:監修レイチェル・カーソン日本協会編 かもがわ出版 2021年5月


 こちらは2021年に出版されたもの。レイチェル・カーソンの伝記的な詳しい記述とともに作品についても詳しく書かれています。『沈黙の春』出版60年を機に企画されていた本ですがちょうど新型コロナ感染拡大が拡がる時期とかぶり、あらためて自然と人間の関係を考えなくてはならないと感じることとなったというようなことをあとがき(原 強さん)が書かれていました。まさにです。

この中で上遠さんは『センス・オブ・ワンダー』を「強靭な感性」とも表現されています。

「センス・オブ・ワンダー」という感性は、自然に対して感じるだけではなく、社会のあらゆることにアンテナを張り巡らせて感じることだと私は考えています。国際情勢、平和、貧困、差別、紛争に巻き込まれる子どもたちのことなど、社会の様々な出来事にも関心を持ち、考えていく強靭なものでなければならないと考えています。

13歳からのレイチェル・カーソン』 上遠恵子:監修レイチェル・カーソン日本協会編 かもがわ

自然界だけではなく社会情勢に目をむけることも「センス・オブ・ワンダー」であり、そこへ向かう心や、立ち向かう強さを育てるのも「センス・オブ・ワンダー」なのだと感じた。

絵本 『レイチェル・カーソン物語 なぜ鳥はなかなくなったの?』について

『レイチェル・カーソン物語 なぜ鳥はなかなくなったの?』 文・絵:ステファニー・ロス・シソン 監修:上遠恵子 訳:おおつかのりこ 西村書店 2022年10月4日


こちらの絵本は友人がSNSで紹介されているのを見て2022年に購入。
レイチェルの人生についてかかれた伝記絵本です。科学者としての活動、『沈黙の春』での功績なども描かれています。様々な動物が可愛らしい絵で出てきます。

絵本『レイチェル 海と自然を愛したレイチェル・カーソンの物語』について

レイチェル 海と自然を愛したレイチェル・カーソンの物語』 文:エイミー・エアリク  絵:ウェンデル・マイナー 訳:池本佐恵子  BL出版(2005年7月)

こちらもレイチェルの伝記です。時系列で年号も入ってレイチェルの少女時代から亡くなるまでの生涯が描かれています。

少女時代から文才を発揮し、大学ではもともと文学を学んでいたこと、そこから科学へ目覚めていくことなども描かれています。絵もとても美しいです。最初に紹介した絵本より高学年向きだと思います。

最後に

こんな風に『センス・オブ・ワンダー』だけではなく、関連書籍を何冊か読むと、また違った視点で読んだり、新しい気づきを得ることができました。
若松さんも書かれていましたが、『センス・オブ・ワンダー』はほんの60ページほどの本です。けれどその中には様々な深い学びが含まれているとあらためて感じた。
また別の関連書も読みながらもう少し深く読み込み自分なりの解釈やそこから得たものをまとめていきたいと思っています。読書会もしてみたいなと考えています。

お読みいただきありがとうございました。






#絵本#センス・オブ・ワンダー#レイチェル・カーソン

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