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#19 見えない繋がりが生む感動のラスト『月の立つ林で』(著:青山美智子)を読んだ感想

青山美智子さんの『月の立つ林で』

2023年(第20回)本屋大賞ノミネート作品です。

本作で3年連続のノミネートで、一昨年、昨年と2年連続で2位を獲得しています。
(本屋大賞2年連続2位は史上初)


あらすじ

長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。

つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。

ポプラ社より

感想

  • 自分のおこないは何かに繋がったり、誰かのためになると思わせてくれて、何事に対しても前向きになれる1冊

  • 目に見えない繋がりが生んだラストに感動!


久しぶりに青山ワールドを堪能しました✨

青山さんの作品といえば、登場人物たちが繋がる短編集。

読了後は、優しい気持ちになれて1つ1つの出来事や出会いが素敵に感じるんですよね。


僕が本作で1番感じたことは、目に見える繋がりだけでなく、「目に見えない繋がりも素敵」なことです。

本作のテーマは「月」
その中でも目に見えない「新月」がどの章でも取り上げられています。

また、どこか上手くいかない日々を送っている登場人物たちを繋ぐのはポッドキャストの配信。
配信を聴いている登場人物たちは、互いに顔は知らず直接的な接点はありません。
配信者も謎に包まれています。

しかし、それぞれが取り組んでいることが少しずつ繋がっていくことで、感動のラストを生んでいきます。 

繋がりって顔や名前を知っている人にだけにあるものではない。
顔や名前を知らない、どこにいるかも分からない人でも、実は何かを通して繋がっている。

それって凄く素敵なことだなと思いました。


自分が行っている仕事や趣味って誰かのためになっているんだろうか?

僕は、これまで何度も思ったことがあります。

でもきっと、どんな些細なことでも自分が取り組んでいることは何かに繋がる。
名の知らない、見えない誰かのためになる。


だから、何事も前向きに取り組もうと思いました。

たとえば、今こうしてnoteで発信していること。

『月の立つ林で』の僕の感想を読んだ方が、本を手にして明日への活力になるかもしれない。
僕はどんな本でもこのような想いで書いていますが、その想いがさらに強くなりました。


青山美智子の作品で読んだことがあるのは、
『お探し物は図書室まで』(2021年(第18回)本屋大賞ノミネート作品)
『赤と青とエスキース』(2022年(第19回)本屋大賞ノミネート作品)
『木曜日にはココアを』
『月曜日の抹茶カフェ』
の4作品。

今回の『月の立つ林で』は、これまでの作品よりも「見えない繋がりの素敵さ」を強く感じたような気がします。

五章の中では、登場人物と世代が近いこともあり感情移入した二章が印象的です。


「月」ってロマンチック。

本作で出てきた月にまつわる話は、日常にもリンクする部分があります。

月といえば目に見える「満月」や「三日月」のイメージが強いですが、見えない「新月」にも色んな意味や言い伝えがあることを知りました。

そして、新月はこれまで意識してなかったなと思い知らされました。

もしかしたら、僕が普段意識してなかった物事にも素敵なことってたくさんあるのかもしれない。

「見えない」けど、ちゃんと「ある」

目に見えないことにも意識を向けられるような人になろうと思いました。

印象的なフレーズ

「すべてをゼロから始めるのも素晴らしいことですが、リセットという新しいスタートもあると思います。新月も、まったく新しい天体になるのではなく、再生の繰り返しです」

『月の立つ林で』

「(夢は)叶えなかったらダメなのかな。夢を持ってるっていうことそのものが、人を輝かせるんじゃないかな」

『月の立つ林で』

「私は脚本も書きますが、現実はつくづく、シナリオ通りにはいきませんよ。人と人は、理解し合うためにむしろ離れなければならないこともある。どれだけ愛していてもね」

『月の立つ林で』

「新月に合わせて何かをスタートするとうまくいくって考え方は、昔からあるみたいです。でも、月の満ち欠けに興味を持ち始めてから感じるんだけど、自分でそうしようとしなくても、自然にその流れがくることがあるんですよ」

『月の立つ林で』

太陽も月も、地球に影響を与えようとしているわけじゃなくて、地球にいる私たちが勝手に右往左往してるってこと。

『月の立つ林で』

「好きとか嫌いとか、そういうことじゃないんじゃないかな。ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う」

『月の立つ林で』

「あたりまえのように与えられ続けている優しさや愛情は、よっぽど気をつけていないと無味無臭だと思うようになってしまうものなのよ。透明になってしまうものなのよ。それは本当の孤独よりもずっと寂しいことかもしれない」

『月の立つ林で』

心が温まり何事に対しても前向きになれる1冊

青山美智子さんの作品は、背伸びせずに今の自分にできることを頑張ろうと思わせてくれます。

今回の『月の立つ林で』も、心が温まり何事に対しても前向きになれる1冊です。

響くフレーズも何個もあり、本は付箋だらけになりました(笑)


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