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#21 クイズの見方が変わる1冊『君のクイズ』(著:小川哲)を読んだ感想

小川哲(おがわ・さとし)さんの『君のクイズ』
2023年(第20回)本屋大賞ノミネート作品です。


あらすじ

生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。
読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される! 
「不可能犯罪」を解く一気読み必至の卓抜したミステリーにして、エモーショナルなのに知的興奮に満ちた超エンターテインメント!

朝日新聞出版より

感想

  • クイズの見方が変わる1冊

  • 自分の過去は、良いことでも嫌なことでも後になって活きることを学んだ


本作では、主人公の三島玲央が、決勝戦での問題や三島と本庄の過去を探りながら、『Q-1グランプリ』の真相を追求していきます。

クイズといえば知識量の差で決まると思っていた僕。

確かに知識があることに越したことはないけど、クイズの強さは決して知識の量で決まるものではない。
本作で描かれているクイズプレイヤーの思考や技術を通じて、それが分かりました。

ボタンを押すときに見ている部分、押してから考えていること。

三島はクイズをする中で身に着けたものと言及していますが、本作を読まなかったら魔法使いに見えるのも仕方ないなと思うくらいの凄さや驚きがありました。

その他にも、プレイヤーと視聴者が考えていることや見ている部分が違うところがあり、新たな発見でした。

クイズの見方が変わる1冊だと思います。

クイズに対峙している2人の姿もイメージしやすかったです。
まるでクイズ番組を見ているかのようで、読者も解答者として楽しめる構成になっていました。


本作を通じて学んだのは、自分の過去は良いことでも嫌なことでも後になって活きること。

三島も本庄も、過去に得た知識や経験、思い出によって正解を導き出していきます。
その中には、思い出したくない嫌な思い出もありますが、クイズに正解することで肯定してくれます。

これは、クイズに限らず誰にでもあてはまることだと思いました。

どんなことがあってもそれは後に何かしらの形で活きると、自分自身のことも肯定されたような気がします。

そして、三島の回想シーンを通じて、人生という正解のない問題って何よりも難しい問題だよなってしみじみと思いました。

その中で僕が今思っていること。

それは、正解が分からないからといって何もしないのではなく、自分なりの回答を出すことです。


最後に。

本作の焦点にあてられていた『Q-1グランプリ』の最終問題、実は僕は分かりました。
答えを見た瞬間に勝手に親近感がわいて、心の中で盛り上がってました(笑)

印象的なフレーズ

クイズは世界のすべてを対象としている。世界が変わり続ける以上、クイズも変わり続けるのだ。

『君のクイズ』

クイズも現実世界も同じだ。なんでもやってみるに越したことはない。誰かに笑われたって構わない。恥ずかしいという気持ちのせいで自分の可能性を閉ざしてしまうことの方がもったいない。

『君のクイズ』

「世界は知っていることと知らないことの二つで構成されています。知っているということは、これまでの自分の人生に関わっていたということです」

『君のクイズ』

「ピンポン」という音は、クイズに正解したことを示すだけの音ではない。解答者を「君は正しい」と肯定してくれる音でもある。

『君のクイズ』

僕たちはいつもクイズを出題され続けている。競技クイズをしている必要はない。クイズは世界のどこにでも存在している。

どんな答えを出すかは人それぞれだが、なんにせよ僕たちはボタンを押す。過去の経験を思い出したり、誰かの知恵を借りたりしながら答えを出す。
競技クイズと異なるのは、この世界で僕たちが出題されるクイズのほとんどには答えが用意されていない点にある。

『君のクイズ』

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