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福岡市の現場担当者が語る、ハンコレスを実現させた3つのルール

「国よりも先駆けてハンコレスを実現」

先月福岡市は、福岡市で行政手続きが完了する申請書類3800種類の押印廃止を発表。このコロナ禍において、スピード感を持って改革を進める福岡市に今後の動きに注目が集まっています。

私たちSmart City戦略室は、福岡市との包括連携協定に基づき、2018年からSMART CITY FOR FUKUOKA プロジェクトを取り組んでいます。特に注力しているサービスである福岡市LINE公式アカウントでは、市民のみなさまの生活が便利に、かつ、行政窓口の業務軽減に繋がる機能を提供することでスマートシティ化に尽力しています。

このたび、LINE Fukuokaが定期的に開催しているオンラインイベント Smart City TVの第4回に福岡市のハンコレスを推進してきた2名の職員の方をお招きし、ハンコレス化への挑戦の記録と、福岡市のこれからの展望など、現場の生の声をお聞きしました。
行政が新たなプロジェクトを進める上で、どんな課題にぶつかり、乗り越えてきたのでしょうか。

私たちが行政や、民間企業と一緒にSMART CITY FOR FUKUOKA プロジェクトを推進する上で、参考にしたいと感じる点が多くありました。

当日の動画も合わせてご覧ください!

第4回 Smart City TVの登壇者のみなさま(敬称略)

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図2

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約2年で実現した、ハンコレス化プロジェクト

まずは、実際に福岡市役所でハンコレス化改革を行ってきた総務課 中川原敬子さんに取り組みの始まりから、その過程についてお話ししていただきました。

わたしメモ📝
コロナウイルス感染拡大後、行政手続きの必要性を強く感じたことから6ヶ月前倒しでハンコレスを完了。今年はコロナウイルスに伴う対応が大変多く行政の負担はかなり大きかったはず。そんな「コロナを追い風に」行政改革をやりきった福岡市の行動力に驚きました。

なぜ福岡市はハンコレスを進められたのか?

中川原さんのご説明の後からは、自治体DXに関心が高い池澤さんと、民間企業の立場で自治体DXに取り組む南方からハンコレス推進の実態をあれこれ質問。

会話のハイライトをまとめました↓ (🎤 マーク:質問)

池澤さん🎤「実際、市役所は市民サービスを改善させなくても潰れることはないし…何がモチベーションでハンコレス を進められたのですか?」

小玉さん「福岡市は人口が増え続けている都市。高齢者の割合が増え、支える側の割合が減っていくことが予想されます。その中で生じる課題をテクノロジーで解決したいという考えがありました。」

南方さん🎤「実際、このハンコレス化というプロジェクトを進めていく上でイラッとしたことやフラストレーションが溜まったエピソードなどありますか?」 

中川原さん「最初は、見直しを行う部署の担当者から”ハンコレス化できません”と回答された。なぜ見直しできないのかと問い合わせると”社会通念上押印が一般的です”と…。いやいやいや、それは違うだろ!って(笑)」

池澤さん🎤「そんな人たちをどのように説得して行ったのですか?」

中川原さん「”押印してもらう認印というのにどのような本人確認の効果があるの?”と聞くと、相手もはっきりとは答えられない。認印はどこでも誰でも購入できてしまう実態があることは明らかだったので。」

わたしメモ📝
市民にとっての利便性向上、社会課題の解決など現場の強いモチベーションに対し、庁内では今までの常識を覆すことがネックとなっていたため、説得する苦労が大きかったようです。「少しずつ少しずつ」「必要性を問いかける」がハンコレス化実現のための交渉術だったようです。

ハンコレスの効果はどうだったのか

南方尚喜さん🎤「ハンコレスによる変化は?」

中川原さん「市民の方からは印鑑を持ってくるのを忘れてしまった時に取りに帰るという手間がなくなって便利になったという声をいただいています。しかし、市役所の中でいうと紙の書類への押印がいらなくなっただけなので、目に見えた変化はありません。今後、ハンコレスによってオンライン化が進めば、人員配置の最適化が期待できます。」

池澤さん🎤「人員配置の最適化とは?」

小玉さん「介護や福祉関係、障がい者支援など、人のぬくもりが必要な場所に人員を回せる状態です。デジタル技術で解決できる部分はデジタル技術で解決できるように、新しい技術をどんどん取り込むスタンスです。」

わたしメモ📝
*デジタル技術で全てを解決するのではなく、人手が必要な部分のためにデジタル化を進める。

*できる範囲を見極めて、改革を進める
例)オンライン化のため、市で可能な範囲でのハンコレス化を実施
例)部分的なオンライン化。引越しの手続きのための来庁予約をネットから可能に。対面確認が必要な手続き部分はオフラインでの対応。

*新しい技術も積極的に取り組んでいくこと

このようなマインドが、福岡市が約2年でハンコレスを実現できた秘訣なのだと感じました。

ハンコレスの先とは。

南方さん🎤「ハンコレスの次はオンライン化を推進していくとのことですが、オンライン化するにも様々なコストとかかると思います。その中で何を優先的にオンライン化するのですか?」

小玉さん「福岡市の行政手続きは、2020年3月末時点で、件数ベースで73%〜74%がオンラインで利用可能です。今後、さらにオンライン化を推進する上で、優先するのは、まず受付件数が多い手続き、そしてオンライン化のニーズが高い手続きですね。例えば,教員採用試験の申込みをオンライン化したところ,9割以上がオンラインで申請されました。」

南方さん🎤「その73~74%の申請は法律の観点でもオンライン化が可能なのですか?」

小玉さん「そうです。今までもオンライン化に力を入れてきているので今後もどんどんオンライン化を進めていきたいです。」

南方さん「やりましょう!(笑)」

南方さん🎤「オンライン化を進めていますが 、デジタルに使い慣れていないような人たちはどうなるのでしょうか?

小玉さん「まずは、使いやすいユーザーインターフェースにすることが大切です。また,インターネットのことがよくわからない方を対象に出前講座などの講習会を開いたりもしています。ただ,それでもデジタル技術よりも対面でという方もいらっしゃいますので,対面のやり取り自体をなくしてしまうということは考えていません。デジタルに慣れていない人でも、24時間申請ができるとか、使いやすくてパッと完了できるなどといったオンライン化のメリットを感じてもらえるよう利便性を高めていく必要があると思います。」

わたしメモ📝
出前講座などで公民館のお年寄りの方々との会話の中では、「やっぱり役所に行った方が早い。」と言われてしまったこともあったそう。そんな状況を打破するためにも、LINE公式アカウント「福岡市粗大ごみ受付」のように早く簡潔にできるサービスを提供していきたい、とコメントいただきました。

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Smart City TV #4 の終わりに

トークセッションの最後に、出演者のみなさまからコメントをいただきました。

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池澤さん「国がオンライン化に乗り出そうとしている中、福岡市はハンコレスを”完了”したというニュースが出て話題になっていたけれど、その裏側には約2年という歳月の努力があったのだと改めて知ることができて、面白かったです!」

中川原さん「ハンコレスに取り組んで、目標を共有することの大切さを知った。福岡市の取り組み、そしてノウハウを他の自治体も参考にしていただければと思います。」

小玉さん「ハンコレスというのは手段であって、それ自体が目的ではありません。ハンコレスによって環境が整ったということで、オンライン化を今まで以上に推進したいです。」

南方「福岡市では、市長のリーダーシップはもちろんあったけれど、現場の方のリーダーシップもハンコレス実現の秘訣だったと思います。トップと現場がリーダーシップを持ってやるか、やらないかの差なのですね。」

わたしメモ📝

福岡市がハンコレスを実現した背景には、3つのルールがありました。


1.本質を見極め、古くからの習慣を疑う。
└押印は今までの”常識”だったが、その必要性を問い続けたことで説得することができた。



2.ブレない目標を設定し、周りに共有。組織一丸となって取り組む。
└現場だけでなく上層部も巻き込み、全体でプロジェクトに取り組んだ。



3.くじけそうな時は「今日はもう帰る、また明日から頑張ろう。」

└中長期プロジェクトでは自分の心身の状態を健康に保つことも大切。意外と忘れがちなことかもしれません。

最後にパシャリ📷

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わたしたちLINE Fukuokaは、Smart City事業を初めて約2年。
今年はGovTechプログラム(福岡市LINE公式アカウントのソースコードを無償で公開するプログラム)を開始、福岡市のモデルを全国に普及する取り組みを開始したばかり。
今後も今回のようなイベントでの学びを活かし、Smart City化を福岡市から推進していきます!

出演者のみなさま、関係者のみなさま、本当にありがとうございました!
それでは、また次のSmart City TVでお会いしましょう✨

第4回Smart City TVのアーカイブはこちらから


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