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トイレに籠って泣いて出てこない3つ歳上の後輩をクッキーで誘き出した深夜2時。


私がバンコクのホテルのフロントで働いていた時、とっても嫌いなシフトがありました。

それが「ナイトメアシフト」と呼ばれる(勝手に私が悪意を込めてそう呼んでいました。)13時から22時までのシフトでした。

22時までならナイトメアって呼ぶには大袈裟じゃないと?と思われる人もいるかもしれませんが、22時に終わった試しなんてありません。
このナイトメアシフトの時は、だいたい深夜の1時前には終わればいい方でした。

ナイトメアシフトが続く月は、私の顔の肌荒れは最悪で、まるでサイの背中🦏のような肌触りになり、説明のつかない場所にニキビができました。

ある時まだ私がそのホテルで働き出して2ヶ月くらいしかたたない頃、新しい中国人の後輩Sindyが入ってきました。
後輩といってもSindyは私の3つ歳上で、身長は私より30cm以上も高く、初めて会った時はパリコレモデルかと思うほどのオーラがあり圧倒されました。

そんなまだまだ未熟な私と、まだほとんど何も分からないSindyが2人きりのシフトにならないように組まれていました。
しかし、ある日同じチームの先輩がどうしても誰も入れない日があり、私とSindy2人きりでナイトメアのシフトをやらなければならない日がありました。

たった2ヶ月先に働いていただけの私でも、その時は先輩としてSindyをサポートしながら自分のタスクをやらなくてはならず、その日はロッカーで制服に着替えながら、朝日が来るまでにお家へ帰れるだろうか、、、なんて考えていました。

そんな日に限ってチェックインがすっごく忙しい1日で、他にもやらなくてはいけない仕事が山積みでしたが全て後回し。

私はホテルで働く前、フロントの仕事はチェックイン、チェックアウト以外にどんな業務があるのか全然想像できませんでした。
きっとお客さんとしてホテルを使っている皆さんもそうではないでしょうか。

しかし実際に働いてみるとフロントでチェックイン、チェックアウトをする以上にバックオフィスでやるべき重要な仕事がたっっくさんありました。
(きっとどんな職業もみんなに見えている仕事はほんの一部なんだろうなと学びました。)

締め作業をするためにシフトが終わる1時間前にバックオフィスに入り、その日1日分の自分のタスクを終えなければなりません。
その日はあと1時間しかない状況で、やるべきタスクが10あるとしたらまだ3しか終わってない状況でした。

絶望感に襲われながらバックオフィスに入り、Sindyと12時には絶対に帰ろうね!と約束しました。(本当は22時に終わるシフト泣)
刻々と時間が過ぎる中で、それぞれ自分の終わらせるべきタスクをこなし22時があっ言う間に過ぎていった頃、となりで作業するSindyが明らかに何か問題を抱えていました。

ものすごく嫌な予感がしながら「Sindyどうしたの?」と声をかけると、お客さんとのお金の収受の際にシステムに誤った入力をしてしまったみたいでした。
助けたかったですが、私は何を隠そう高校で数Iの成績に1か、調子が良くても2がつくほど数字がとにかく苦手でした。

とりあえずマネージャーに助けを求め、Sindyはマネージャーに任せて私はとにかく自分のタスクに集中していました。
そしてふと、、、気づくと隣にいたはずのSindyが居ないのです。

私も他のフロントスタッフもマネージャーも、みんな慌ててSindyを探しました。(真夜中の1時)
最終的にマネージャーがトイレの個室に籠って泣いているSindyを発見し、同じチームの一応先輩である私が、Sindyを連れ戻すように言われました。

私はまだやらなくてはならない仕事が山積+早く帰りたい気持ちでいっぱいでしたが、こんな真夜中に私はほんとに何をやっているんだろうという気持ちが大きくなってきて笑えてきました。

「Heeeeyyy Are you OK?」とトイレのドアの外から声をかけると、泣いてるSindyが「Ayakooo I wanna go HOOOOMEEEE」と叫びました。

だったらはやくそこから出てきてよ🥺叫びたい気持ちをグッと堪えて、トイレのドアの外から必死に泣いているSindyをなだめました。
それでもなかなかトイレから出てこないSindyをトイレから出すために、私は最終手段を使いました。

それは、ランチの時にサンドウィッチ屋のSubwayで買った、チョコチップクッキーをまだ食べずに残しておいたのを思い出し、走ってバックオフィスからそのチョコチップクッキーを持ち出して、Sinyが泣いているトイレの下の隙間から差し出す作戦でした。

「Do you like chocolate chip cookie mai? Let's eat together naaaa!!!!」と呼びかけました。
(mai?というのはタイ語で疑問系の文末につけるもので、naはタイ語で可愛く何かを言う時に語尾につけるもの。バンコクに住んでいた時の私の英語は、完全にタイイングリッシュでした。)

そんな子供だましみたいな作戦が効くのか?とこれを読んでいる人は思うかもしれませんが、なんとこの作戦が大成功しました。

「私そんな甘いもの好きじゃないし」と言いながらトイレから出てきたSindyの手に、ガッツリチョコチップクッキーが握られていた光景は忘れることができません。

後輩とはいえ3つ歳上の28歳、そして私より30cmも身長が高いSindyは、当時25歳だった私からみて偉大な大人でした。

そんな人が泣きっ面にチョコチップクッキーを抱えてトイレから出てきたことがあまりにも面白すぎて、泣いていたSindyには申し訳なかったですが、おもわず吹き出してしまいました😂笑

それにつられて泣きながら笑い出すSindy。
その時時刻すでに深夜2時。
2人とも頭がおかしかったかもしれないです。

それから2人でまた肌荒れしちゃう〜なんて言いながらチョコチップクッキーを頬張り、残りの仕事を終わりにしてなんとか朝日が登る前にお家に帰ることができました。

あのチョコチップクッキー事件の日は2度と戻りたくないほど辛い1日でしたが、何度Sindyがトイレから出てくる瞬間を思い出しても、毎回同じテンションで思い出し笑いしてしまいます。

これを書きながらも、やっぱりチョコチップクッキー片手にトイレから出てきたSindyを思い出して口角が上がってしまいます。

バンコクでのホテルの仕事は体力的にすごくキツかったですが、いつもSindyみたいな愉快な仲間達に囲まれて、なんだかんだ毎日はとても楽しかったです。

今は私もSindyもそれぞれ自国に戻りましたが、そんなナイトメアシフトを共にしたSindyがたまにとっても恋しいのです、、、。

Sindyが辛くて泣き出した時は、いつでも私がチョコチップクッキーを差し出してあげたいな。

みなさんももし、周りの人が辛くてトイレに籠って泣き出したらチョコチップクッキーを与えてみてください。

なんとかなるかもしれないし、ならないかもしれません。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

それではサワディーカー。

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