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【architect】ケンチクノオト

サッカーの中村俊輔選手は幼い頃からサッカーノートを書き続けている
その日あった試合や練習で感じたことや改善点を文字やイラストでまとめていた
このサッカーノートを書くことで世界でも活躍したサッカー選手になれたのかもしれない

野球の大谷翔平選手も高校生から目標達成のためのノートを書き続けていることも有名だ


話は変わるが、最近は自宅でのテレワークやzoomなどが増えて防音工事の依頼が増えているようだ
確かに自宅で仕事をしていて生活音をzoom会議で聞かれるわけにもいかない場面もあるだろう

また最近はオンラインゲームなどは会話をしながらするものが多いらしい
生活時間の異なる家族の生活音を聞く方も聞かれる方もしんどいので防音対策をして欲しいと言われることは少なくない

ギターやピアノなど家で思う存分奏でたいという方も増えているようだ
この場合は本格的な防音室が求められる
音の種類や波長によっても防音の方法は異なる

とは言え私は防音のスペシャリストではないのでよくワカラナイ

基本的な防音の対策はある程度は分かるが応急処置に過ぎない

本格的に防音や音楽室をつくる場合は音響設計の方に協力してもらいながらつくるようにしている


こうして考えると現代において建築における『音』ヤッカイなもので消し去りたいモノのひとつのようだ

私はそれほど音にこだわりはないタイプなのだがひとつだけ建築における『音』で嫌いなモノがある

それは以前私のnoteにも書いたのだが、玄関扉の鍵を閉める音だ

玄関で見送ってもらった後、外に出てすぐに玄関扉の『カチャッ』という音がすると寂しい気持ちになる
なんだか締め出されたような寂しさ

鍵は防犯上必要なものなので仕方ないのは分かっているし相手に悪気が無いのも分かっている

でも寂しい気がするので出来れば音がしないでほしい

最近は郵便や配達の方に対しても、そ〜と音が鳴らないように鍵を閉めるように意識している

しかし今ある鍵のほとんどは『カチャッ』という音がする
なんとかこの音がならないものかと思っていた


だが、最近反対のことを思う出来事があった
うちは玄関の近くにリビングがあるので誰かが帰ってきたらすぐに気づくことが出来る

ある日息子とリビングで妻の買い物のお留守番をしていたら、「グリグリ」「カチャッ」と鍵をさして鍵を回して鍵が開く音がした

すると息子は一目散に玄関に向かっていき妻の帰りを嬉しそうに迎えていたのだ

音に敏感な子どもならではの感性を感じると共に自分が帰ってくるときも息子は鍵を開けると「ただいま」と言う前から玄関で待ちわびてくれていたことを思い出した

出て行くときの『カチャッ』は嫌いだけど、帰ってきたときの『カチャッ』は素敵な響きかもしれないというなんともワガママな要望である

なんとか鍵メーカーさんにはこのような音がつくる人と人の出来事をデザインしてもらいたいものである

似たような話だが、昔の家の玄関扉は引き違いの扉が多かったように思う
農家さんなどは扉を外せば広く開けられるので便利だったのかもしれないが、あの懐かしい扉の『ガラガラガラ』と戸車が転ぶ音も、誰かが帰ってきたことを知らせる音である
私は好きな音なのだが最近はほとんど見かけなくなったように思う
今の引き戸はほとんど音はしないはずである

このような玄関で鳴る音はコンビニの自動ドアが開いたときの「ピコピコ」という音や散髪屋にありそうな「ジャラジャラ〜」という鐘の音とは違う

コンビニはお客さんが来たことを気付くためにわざわざ音化したものだ

一方鍵や扉の動く音は意図せずにつくられた嫌味のない音であることが『ミソ』である
このさり気ない気遣いをサポートしてくれる音をデザインしたいとこの頃は思う


建築において音は消したいものもあるが、音が出来事を演出することもある

風鈴は音で夏を感じさせてくれるし涼しさも与えてくれる
ガラスの風鈴が揺れる様は風も感じさせてくれる

ししおどし(鹿威し)は水の流れを音に変換して風流な景色を建築に引き込む装置である
もともとは田畑を荒らす鳥獣対策であったが風情あるものとして扱われている

日本には音を建築に取り込む文化があるようだ


日常にある『音』の出来事をデザインすることを私のケンチクノオトに書き残しておこうと思う


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