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【architecture】光の教会②|安藤忠雄

前回の続きである(前編はこちら↓)


基本設計がまとまり、具体的な詳細設計に入ると単純な箱のはずの設計は困難を極めた

正面にある十字の切り込み
この建築の肝である

一見単純だが切り込みにより構造的には切り込みから上の壁は浮いたことになる
その浮いた壁を支えるためにこの壁の中に大量の鉄筋が埋め込まれているのだ

コンクリートは型枠の中に鉄筋があり、そこにコンクリートの塊を流し込むことでできる
鉄筋量が多いとコンクリートがうまく流れ込まれずに綺麗で堅固なコンクリートにはならない

しかも箱に貫通するL字型の壁
これがなかなかどうして施工が難しい

おまけに建物の重さが大きいのと、運悪く地盤が良くないために地盤補強の費用がさらにのしかかることに

そして世はバブル突入…

建築費が日に日に高騰していく
東京では雨後の筍の如くビルが出来ていく
すると建材の価格は高騰していく

この頃千葉でビッグプロジェクトが進行していた
幕張メッセである
この巨大建築の建設のため職人は賃金の高い千葉へ大阪から移動していた
人件費まで高騰していたのだ

この現状の中でも工事を引き受けたのは、安藤忠雄の建築であれば少ない利益でも引き受けると男気を見せた工務店の社長である

ほとんど利益の残らない仕事と分かっていながら、精魂込めて建築をつくった工務店なくしてこの建築はできあがらなかっただろう

そして工事は不安を抱えたままはじまった
しかし職人がつかまらない
工期はどんどん遅れていく

でもゆっくりとではあるが形が見えて来ると、周囲の期待は高まって来た

内装などですったもんだあったが、ようやく完成を迎えたのだ


物質ではなく、光で表現された十字架に信者さん、工務店の監督、みんなが頷いた

『こういうことか…』


暗闇に浮かぶ十字架がすべてを物語っていた
そこに言葉はいらないだろう

(つづく)

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