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物食日記

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美味しいもの、美しいものが好き。 散歩とスナップに夢中。
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2022年1月の記事一覧

葉山の新米

葉山の新米

昨年末に葉山下山口在住のグラフィックデザイナー&ニホンミツバチ愛好家レイジローさんによる初めての米づくりを手伝いしたのは昨年5月末。

裏山の湧水を引きこみ田んぼを起こすところからなんの経験もなく着手したレイジローさん。小規模とはいえ、無農薬で愉しみながら稲刈りまで無事成したことにただ感服。ニホンミツバチの巣箱設置、そして田んぼ。地域と深く佳い関係を築きながら、(傍目には軽やかに見える)野生を愛で

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生まれ変わった木皿

生まれ変わった木皿

20数年前、「クラフトフェアまつもと」の会場で木工デザイナー三谷龍二さんにオーダーした山桜の木皿。

使い始めて数年後にコンクリートの土間に落としてしまい縁が欠けてしまった。以来、何の手入れもせずに長く放置。そんな冷淡な無精者が昨年末ふと、この木皿を修繕できないか思案し、三谷さんのショップ「10cm」に現状写真をメール送付しつつ相談。応じてくださると快諾を得て発送。

多忙な方と想像したが、年明け

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メキシコのカクテルグラス

メキシコのカクテルグラス

俳優ジョージ・クルーニー監督作品、ベン・アフレック出演のAMAZONオリジナルムービー『僕を育ててくれたテンダー・バー』を観て、バーでたびたび主人公に振る舞われるカクテル、ドライマティーニと三角形をしたグラスに惹かれた。

ふと思い浮かんだのは三浦市金田湾の工藝古物商「讃々舎」がインスタに投稿していたメキシコのカクテルグラス。ふっくらと厚手、大ぶりなそのグラスでカクテルをたっぷり味わいたくなった。

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オーストラリアの箱ワイン

オーストラリアの箱ワイン

学生のとき、父とオーストラリアのシドニーを旅した。仕事でこの地を行き来していた父は現地のレストランへ連れ出してくれた際、近くのスーパーで買った紙パック入りの赤ワインをテーブルに置いた。酒は持ち込み自由というおおらかなシステムが一般的なことに驚いたが、値段もパッケージもえらく気軽なそのワインの美味しさに瞠目した。1980年代の日本では敷居の高く気取った酒だったワインがオーストラリアではまるで水がわり

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平林奈緒美さんのRIKU

平林奈緒美さんのRIKU

葉山長柄の「クリエイト」でキリンのウイスキー『陸』を見つけて思わず手に取った。ウイスキーを買うのは何年ぶりだろう。久々に買いたくなったのはパッケージのアートディレクション(AD)を平林奈緒美さんが手がけたことを知っていたので必然の行動に至ったのだった。

ウイスキーの良し悪しがわかる酒呑みではないが、ロックで嗜んだら、軽やかながら豊かな風味と深い余韻に旨い!と声が漏れ出た。キリンのHPが謳う「オレ

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土に触れる

土に触れる

2週間ぶりに土と植物を触れねばと考えたのは、見習い中の自分が植木仕事の現場へ無事戻れるのか不安に苛まれたから。なにしろ毎晩、現実と同じく失敗ばかりでひたすら叱咤される夢に魘された。冷や汗をかいて連日起き上がる正月休み。深層心理の闇が表出し続けたから年明け初日の仕事前日は緊張感が極まってきた。

そんな弱気を和らげたいと願い、ベランダに長年放ったらかしにしていた多肉植物オブツーサを机に飾り移した。器

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心地良さを綴る本

心地良さを綴る本

年始の休みも正月七日を過ぎていよいよ植木屋の仕事が始まる。昂る心のこわばりをほぐし整えようとエッセーを開く。木工作家・三谷龍二さんの『木の匙』は20数年前から家にあった一冊。編集者、文筆家・若菜晃子さんの『途上の旅』は昨年末に購入。

室内と野外。両者が向ける視線の先はそれぞれ異なるけれど、光の陰影、指の触感、景色など心と眼が感応し、悦ぶ心地良さとは何か、静謐な言葉で曖昧な輪郭を明確に表している。

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オレンジ好き

オレンジ好き

正月休み、電池切れのまま洗面所の杉合板壁に留めていた『ボール・クロック』を居間の南方壁、東北ザルの隣に移し留めた。家のなかでもっとも寛ぐ場、寝椅子に寝転びながら視界に入る位置に。この時計はスイスのヴィトラ社が復刻したものだが、オリジナルは1949年にジョージ・ネルソンのオフィスで働くディレクター、アーヴィン・ハーパー氏がデザインし、北米の時計メーカー、ハワードミラー社が製造したものとか。北米が経済

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