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オーストラリアの箱ワイン
学生のとき、父とオーストラリアのシドニーを旅した。仕事でこの地を行き来していた父は現地のレストランへ連れ出してくれた際、近くのスーパーで買った紙パック入りの赤ワインをテーブルに置いた。酒は持ち込み自由というおおらかなシステムが一般的なことに驚いたが、値段もパッケージもえらく気軽なそのワインの美味しさに瞠目した。1980年代の日本では敷居の高く気取った酒だったワインがオーストラリアではまるで水がわりに呑まれていた。シドニーでは海辺に住む普通のサラリーマンたちが庭先にヨットを係留し、週末は海上を散歩していた。その日常生活の豊かさに、日本とは根本的に何が違うのだろうと格差に大きなため息をついたのを覚えている。
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35年前に驚嘆したものとおそらく同じワイナリー製品をコストコで見つけて思わず手を伸ばした。『ハーディーズ・カベルネソーヴィニヨン』である。5リットルも詰められているからワイングラス1杯(100ml)あたり約54円。当時のオーストラリアとたぶん同程度のコストパフォーマンスでワインを家呑みできるようになったと感慨に耽った。
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無難で呑み易い。食事の水がわりにゴクゴク堪能したいから、厚手なイランの手吹きグラスで杯を重ねた。我が家の食卓も少しは、かの地の情景に近づけたのかなとほろ酔いで上機嫌になった。
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