マガジンのカバー画像

【連載小説】0n1y ~生物失格と呪われた人間~

60
人間というのは随分と身勝手だ。 自己中心的で自己満足的で自己保身的で自己保存的だ。 自分が一番可愛くて、そんな自分を穢されるのが許されなくて、他人を貶して貶める。 その貶し貶めが…
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 4.5)

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 4.5)

1話目はこちらから。

Episode 4.5:夢も現も。『お前は、もう二度と日光を浴びられない』
『お前は、もう二度と外を歩くことは出来ない』
『お前は、もう二度と人間として生きられない』
『お前は、もう二度と幸せなど掴めない』

 引き裂かれた笑みを浮かべる人間共が、俺に言い寄って来る。
 やめろ、やめてくれ。
 そんな顔を、しないでくれ。

『お前は、もう二度と日光を浴びられない』
『お前は

もっとみる
小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 4)

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 4)

1話目はこちらから。

Episode 4:「霊前」カップルトーク。「……本当に行くことになるとは」
「だって約束したし!」
「まあ、したけど」
「じゃあ、つべこべ言わずについて来るっ!」
 午後10時過ぎ。子供が歩くには遅すぎる時間帯だ。警察に見つかれば補導確定――どころか、世間的には幼い男女2人で歩いている所を見られたら色々終わりだ。
 こういうのを、世間では不純異性交遊と責め立てるらしい。

もっとみる
小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 3)

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 3)

1話目はこちらから。

Episode 3:無彩色世界論と、彼女からのお誘い。 晩春を迎えつつある外は、心地よい暖かさを残している。
 雲ひとつ無い青空は清々しく、時折吹く風は肌を労わるように優しい。

 ……などと、今目の前に広がる景色を小説では描写するのかもしれない。
 だがはっきり言わせてもらえば、そんな記述は不要だ。
 その表現技術が小説家としての腕の見せ所の1つなのは分かるが、どう考えて

もっとみる
小説『生物失格』 目次。

小説『生物失格』 目次。

1章、英雄不在の吸血鬼。Future Preface 1:腹破れた失格者。
Episode 1:幼き同棲。
Episode 2:英雄不在の日常生活。
Episode 3:無彩色世界論と、彼女からのお誘い。
Episode 4:「霊前」カップルトーク。
Episode 4.5:夢も現も。
Episode 5:過剰心霊スポット。
Episode 6:シャイニング・オン・ベリー。
Episode -1:

もっとみる
小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 2)

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 2)

1話目はこちらから。

Episode 2:英雄不在の日常生活。「おいしーいっ!」
「それは何より」
 すっかり目が覚めた(というより覚めさせた)カナは、満面の笑みで朝飯をぱくぱく食べている。
 トーストにハムエッグと、少々の野菜。オーソドックスな誰でも作れる朝ご飯だ。カナの爆発的なエネルギーに見合う量であるかは分からないが、美味しそうに食べてくれるのならそれで良い。

「こんな美味しいもの作れる

もっとみる
小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 1)

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Episode 1)

 他人の立場に立って考えなさい――と、ある人は言った。
 自分を大切にしなさい――と、別の人は言った。
 どうでもいい――と、自分は2人を黙殺した。

***

Episode 1:幼き同棲。 ――体が重い、ということの原因には幾つかある。
 具合が悪いとか、嫌なことがこの先待ち受けているとか、金縛りとか。
 今自分の体が重いのは、別に体調が優れないからではない。万全快調だ。嫌なことが待ち受けてい

もっとみる
小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Future Preface 1)

小説『生物失格』 1章、英雄不在の吸血鬼。(Future Preface 1)

Future Preface1:腹破れた失格者。 ――深夜の廃屋、というのは人を惹きつけるらしい。
 散乱した硝子片。積みあがる綿埃。不気味な壊れかけ人形。ギシギシと鳴り響く床板。不気味と不安の不協和音が織りなす、独自で独創的な空気感。
 こうした怪談チックなものにスリルを求めているのだろう。『日常では飽き足らない』『刺激が欲しい』といった、脳の壊れた愉快者の愚劣な思考だ。
 そう、壊れている――

もっとみる