わしらの貝しごと(下)
店に戻ってすぐ、バゲットを買いに来た佐藤親子と夕暮れの空で立ち話をしてから、仕事にとりかかる。ヒナタメと岩牡蠣を分け、一緒にくっついてきたストレンジャーシングス達を水で軽く落として水から茹でる。砂や泥は完全には取り除けない。燻製や山菜のアク抜きなどに使ってきた、実験用のボロボロの鍋が活躍する。
道後温泉くらいの熱さになったらヒナタメはぷくぷくと泡をふく。口が1mm程度開いて包丁が通りそうになったら火からあげる。
あの道後温泉の熱さが平気な人は、熱々のヒナタメに包丁を入れて身を