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伸びる人、伸びない人

組織の変革には人材教育が必ずセットになります。組織とは人の集まりなので、「組織が変革された」ということは「組織メンバーが何らかの行動変容を達成した」ということです。組織図が変わったとか、組織の名前が変わったとか、縦の組織が横になったとか、決してそういうことではないです。

ただ、この「行動変容」、意外と難しいこともまた確かです。この課題について人の成長に焦点を当てて、自分の経験とも照らし合わせながら考えていきたいと思います。

なぜ伸びる人と伸びない人がいるのか?

会社、学校、大学、塾、サークル — 組織や団体の中では、必ず伸びる人と伸びない人が出てきます。全員が伸びている組織もないし、全員が伸びない組織もないでしょう。この差は何故生じるのでしょうか?

組織や団体では、もちろん優秀な人ばかりを集めたいし、集まってほしいと思っているはずです。多くの会社でも、入社時に様々なテストを行ったり、優秀な学歴の人を中心に採用活動をしているでしょう。しかし、そう思って人を集めていても、優秀だと思って集めた人の中から、その後伸びる人と伸びない人の差が出てきます。

人によっては才能とか運や環境のせいにしたりすることもあるでしょう。個人的な考察では、いくつかの要因が考えられます。確かに才能や運、そして環境の影響はゼロではないと思います。ただ、それが大勢を占めるでしょうか?環境についての考察は別の機会にするとして、今回は自分で制御できる範囲のことについて考えてみます。

指導を受けた時の対応方法

上司や師匠に何かを指摘されたとき、人によっていろいろな反応をすることがあります。前向きに考えて工夫をする人、落ち込んだり考え込んだりしまう人、反抗する人、無視する人等、様々です。 

私自身、いままでいろいろな部下、上司、同僚、チームメンバーを見てきたし、私自身の過去を振り返って伸びた時期、伸び悩んだ時期やご指導いただいた内容なども思い出してみると、上司や師匠に何かを指摘されたときに自分で制御できる範囲内でできる一番良い対応方法は、「言われた通りのことを、すぐにその通りにやってみる」ことです。つまり言われたことを「丸コピー」してみるのです。

これは何もサラリーマンだからそうするのが良いと言っているわけではありません。読者の貴方が自営業であっても組織に属さない人であっても同じです。つまり、言われたことをそのまま再現してみる実験をなるべく早く行い、その可能性について調べ終わることが、次に進む最速の道になるということです。また、行うまでのスピードも重要です。「すぐに」やらないと、言われたことを忘れてしまったり、やること自体を忘れてしまい、実験の機会がなくなる確率が大きく上がるためです。

人によっては「いわれたままだとカッコ悪いので、自分で考えたことを加えて試す」という人もいるでしょう。実は、これもお勧めしません。とりあえず手心を加えずに、言われた通りにやってみることをお勧めします。これは行動変容ともかかわってくるのですが、自分で考えて手心を加えてしまうことで、かえって自分の凝り固まった思考が実験の中に残ってしまうことが多いからです。とにかく最初は自分で考えずに言われた通りにやることをお勧めします。

指導を受けた後の人を客観的に観察していると、最初は指摘された内容を復唱しているものの、そのうち自分の元の思考にいつの間にか戻ってしまい、同じ過ちを繰り返している例が何と多いことか! これで無限ループにハマっている例をかなり多く目撃しています。

子供も同じ

同じことは子供の教育にも当てはまります。最近は、「親ガチャ」のようなキーワードが流行り、自分がこうなったのは親が選べないからだと主張する風潮もあります。社会が停滞している時には、そのような論調になりがちなのですが、先ほども触れたように、才能や環境がすべてではありません。自分で気づいて努力することで、突破できる余地が残されています。

よく、政治家、芸能人などの特殊な職業は二世が多いといわれます。これはなぜかというと、主にそうなるための技術が一般に公開されておらず特殊なものであるからだと思われます。背格好や容姿、コネなど、才能や環境によるものは他人には真似ることはできません。ただ、二世を見ていると、必ずしも親のように容姿端麗ではない人や、親のコネを使って就職しているわけではない人も多くいることがわかります。

政治家や芸能人の子供は、親が毎日どう時間を使い、何を重視しているかを普段の生活の中から自然に理解します。それらの中には、その職業になくてはならない要素が多く含まれています。これらの技術が自然に身についているだけで、他人と比べると既に大きく有利なのです。もし、このような技術を何らかの方法で教えてもらう、知ることができれば、これらの職業を目指す子供にとって、とても有利になるでしょう。

また、子供のより一般的な進路として、いい大学に入って学歴をよくしたいと願っている親は多いでしょう。有名大学に多くの卒業生を輩出している進学校ではどのような勉強法を行っているかというと、詰まるところ高校3年生までの学科内容を高校2年未満で終わるように指導しています。つまり小さな頃から前倒しで、より速いスピードで勉強をさせているのです。こうすれば、少なくとも1年間たっぷりと受験勉強をする時間を取ることができ、現役で一浪の人と同等以上の力を発揮することが可能になるのです。この学習スピードを保つことができれば、大抵の子供はよりよい学歴を身に着けることができます。この方法を知っていれば、子供が小さいうちから手を打つことが可能になり、より有利となります。

良い師匠は重要

このように、一見難しく思われることでもノウハウを知っていさえすれば逆に乗り越えやすいものも世の中には多数存在しています。それを教えてくれる人の存在はとても重要になります。大成した人の伝記や逸話では、必ずと言っていいほどそのような師匠の話が出てきます。社会人になって間もない頃に出会う師匠の存在は、その後の社会人人生を成功に向かって効率よく歩むうえでとても重要となってきます

しかし厄介なのは、自分が出会った師匠や上司が必ずしも100%正しいとは限らないことです。そして残念ながら上司や師匠は選ぶことができない場合が多いです。まさに「上司ガチャ」です。しかし、環境のせいだと嘆いてばかりいるわけにもいきません。自分ができる最善の選択は、指導を受けた時には、先ほど述べた通り「とりあえず手心を加えずに、言われた通りにやってみる」をすぐに実践することです。その通り実践することで、指導が正しかったのか、自分のやり方が間違っていたのか、などをすぐに知ることができるため、早く次の手を打つことができるようになるからです。

限界は自分で決めている

もうひとつ、自分で制御できる範囲で重要な事柄があります。それは自分で「行動変容」する意思をしっかり持つことで、行わない理由を他責にしないことです。

若いうちは怖いもの知らずで何事にも積極的にチャレンジする人が多いものの、年齢を重ねると既視感もあるのか、チャレンジをする人の割合が減ってくるといわれています。頭の回転や記憶力も年齢とともに衰えるとよく言われます。しかし、実際に衰えているかどうかはともかく、年齢を理由にチャレンジや学習を辞めてしまっている人を多く見かけます。

新しい技術や語学の習得、職種変更、再入学、転職・起業など、一昔前は年齢が上がると不可能と言われたものが、いまはいろいろな社会的仕組みや技術の発達により、実際に行っている人が増えてきています。

何もオリンピック出場やノーベル賞を取るといった世界最先端レベルの技能を身に着けるわけではなく、多くの人が習得しているスキルを身に着けるのに年齢制限は実はあまりないと思われます。たとえば、語学や算数、スマホやパソコンのスキルなど、世界数億人レベルで習得している人がいるため、年齢が上がっていても習得できなくはありません。前に立ちはだかるのはただ一つ、年齢を理由に限界を決めてしまっている自分です。自分の気持ちを入れ替えて「行動変容」を実践すれば、限界を突破することも十分に可能でしょう。

迷ったら先ずはそのまま丸コピーしよう、ただし一般化されたアドバイスには注意

以上、いくつかのトピックについて見てきましたが、結論としては「迷ったら先ずはそのまま丸コピーしてみよう」ということをお勧めします。何かを変えるための「行動変容」をすぐに実践してみる、ということは突破口を開く可能性を広げます。

ただし、丸コピーするにあたっては、自分の個別の状況へのアドバイスではない、「一般化されたアドバイス」は注意が必要です。つまり、他人の成功体験や「伝記」「私は〇〇することで〇〇できた」(これだけ稼いだ、社長になった、など)、そして他社の「ソリューションの導入事例」などは、その人、その組織、その時代、そのタイミングだから成り立ったというものが多く含まれているため、丸コピーをしてもうまくいかない場合がほとんどです。これらの場合は、そこから得られる教訓のついてのエッセンスを抜き出すステップが必要になります。「自分の状況への個別アドバイス」なのか「一般化されたアドバイス」なのかはよく見極めましょう。


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