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激化するチャイナ・バッシング(中国叩き)

米商務省がHuawei社への輸出規制が日本で報道された当日、たまたまその夜にHuaweiの方とお会いする機会があったので率直に話を伺った。色々伺う中で今回の決定は日本の産業界へも大きな影響があることに驚き、翌朝その事をTwitterへ投稿したところ、最初の投稿だけで1342のイイネ、1086のリツイート(2019年5月22日22:13現在)と反響があったので改めて関心の高さを実感する。今年は日本から8千億円もの調達を見込んでいる企業だけに、今後の動向次第では日本国内企業への影響も大きなものになる。後世、「Huaweiショック」などと呼ばれる事態に陥らぬよう祈るばかりである。

さて、中国を代表するグローバル企業を封じる様は、かつての日米貿易摩擦が問題となっていた時代の「ジャパン・バッシング(日本叩き)」を彷彿させる。製品内に悪意あるバックドアが仕掛けられているのが見つかったとか、日々耳にする”きな臭い報道”は、自分自身で調査を行う事ができない以上、その真偽を判断する事はできない。しかし、英国やドイツなどの西側諸国はHuawei社への疑いは持ちつつも現時点では排除する決定をしていない以上、米国民の総意として中国を規制するためのゆさぶりだろうと言う意見については、日米間の通商交渉の歴史から見ても一定レベルで同意せざるを得ない。

しかも、日本との通商交渉の学びをいかしているのだろう、実に効果的な手をうっている。ネットワーク機器の王者は言うまでもなく米シスコシステムズ社である。Huawei社のネットワーク機器の要である「信用」を失墜させ、米国の経済圏(欧州)から追い出せたら、巨大なディールが世界中で動くであろう携帯の次世代ネットワーク(5G)関連の調達で、米国シスコシステムズ社(と米国)らに莫大な利益が生じる可能性は大きいだろう(*1)。更にHuawei社は世界第3位のサーバ機器ベンダーである。今回の規制によりHuawei社へ米国製のOSやIntel製のCPUが供給されなくなれば、国外の企業は購入が難しくなる。そうなればサーバ機器大手の米国IBM社、HP社、Dell社に莫大なる恩恵があるだろう。スマホについては既に各所で説明があるのでここでは省略するが、今後の交渉過程で中国政府が譲歩をしてきたとして今の規制が外れたとしても、購入する側は購入する側で、再度の規制を恐れてHuawei社製機器の調達を新規に決断するのはなかなか困難である。

実はHuaweiという会社を、以前から良い意味で注目をしていた。従業員のモチベーションは高く、自社製品へ強い愛を持っているように感じることも多かったので、強い組織と感じていたからである。昨年、ある展示会でHuawei社のブースへ立ち寄った際、技術営業担当者へ相当突っ込んだ質問をした。競業他社製品についてかなり詳しく知っていたし、意地悪な質問にも嫌な顔せず自信満々に笑顔で熱心に答えてくれた。確かにコストパフォーマンスに優れている製品だったので自信もあったのだろう。最後は製品の中を見せてくれ、「ね、空洞が多いでしょう?競合他社は技術が低いのでパンパンに詰め込んでいます。しかし、当社の製品は日本の技術を多く活用しているのでスッキリしているのです。使われチエル部品の多くが日本製なら安心できるでしょう?値段?競合他社のどこよりもお安くできますよ!」とユーモアたっぷりに答えてくれたのが強く印象に残っている。

中国と言う巨大なマーケットや中国企業・中国資本家とどう向き合っていくか、我々のような小さい企業にとってもしっかり情報を収集して、検討せねばならなくなってきた。上記のような背景もあり、Huawei社と手を組めるところがあれば当社としても手を組みたいと考えていたのだが、こうなってしまった以上、米国の経済圏を捨てて考えるくらいの覚悟がなければHuawei社との良いお付き合いは難しい雰囲気である。他の中国技術系企業との提携も相当慎重に考えなくてはならない。それにしても、隠し持っていた打ち手のひとつを封じられてしまったなぁと頭が痛い限りである。

*1 Huaweiは通信基地局の売上高シェアでスウェーデンのEricsson社を抜きTopの地位にいる。携帯5Gネットワーク関連でEricsson社の勝利が続いた場合、同社と提携している米Cisco社への恩恵は計り知れない。

追記:投稿後、Twitterを覗いたらHuawei社の頼みの綱でもある英ARM社(親会社はソフトバンク/CPU製造大手)もビジネスをサスペンドする旨のニュースが出ていますね。中国は、CPUもOSも自国内で作れるでしょうが、このニュースはHuaweiにとって泣きっ面にハチです。
https://www.bbc.com/news/technology-48363772


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