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#133 賢治と出逢った700年前の僧侶【宮沢賢治とシャーマンと山 その6】

(続き)

詩に登場する「河原坊」は、早池峰にいくつかある登山口の1つの地名で(ただし河原の坊登山口は現在通行止)、「鶏頭山」は早池峰山頂から西に下った場所にある山だ。
 
不思議な賢治の心象がつづられた詩である。
気になる箇所はいくつもあるが、賢治が、この場所について語った言葉も残されているので、以下に引用する。
 
「僕はもう何べんか早池峯山に登りました。あの山には、ご承知かもしれませんが早池峯の七不思議といふのがありまして、その一つに河原の坊といふ処があります。
 
・・・いひ伝へでは何でも何百年か以前に天台宗の大きなお寺のあつた跡で、修行僧も大勢集つてゐて、随分盛んなものだつたといふことです。そこでは今も朝の小暗い黎明時にひよつとするとしんしんと読経の声が聞えて来ると噂されてをります。
 
 先年登山の折でした。僕はそこの大きな石に腰を掛けて休んでゐたのですが、ふと山の方から錫丈を突き鳴らし、眉毛の長く白い見るからに清々した高僧が下りて来ました。その早池峯に登つたのは確か三年ばかり前なのですが、その御坊さんに逢つたのは何でも七百年ばかり前のやうでしたよ。」
(小沢俊郎著『薄明穹を行く』より)

【写真は、霧中の早池峰山中から見た薬師岳方面】

(続く)

2024(令和6)年2月23日(土)


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