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#144 「日蓮主義とはなんだったのか」【宮沢賢治とシャーマンと山 その17】

(続き)
 
これまで、花巻の大迫地域、修験道、神仏習合などについて書いてきたが、その中で、私が最初に興味を持ったのは神仏習合だった。
 
賢治作品を理解する上で、宗教はどうしても避けて通れない。しかし宗教は難解なテーマだ。避けられるなら避けてたかったが、やはり宗教抜きでは、賢治の世界を理解できる気がしなかった。

重い腰を上げ、法華経、日蓮、日蓮宗、日蓮主義などについて調べ始めた。
 
中でも日蓮主義は、第二次世界大戦へ突入する日本の軍国主義に大きな影響を与え、賢治が日蓮主義に影響を受けたという事実をどう消化すべきか戸惑いを覚える。しかも、満州事変の首謀者達の中心的人物である陸軍の石原莞爾は、賢治と同時期に日蓮主義に影響を受けた、賢治と同時代の人物だ。
 
日蓮主義の負の歴史的経緯もあってか、日蓮主義に関する書籍は決して多いとは言えない。しかし、近年、「日蓮主義とはなんだったのか」という本が出版され、私も手にする機会を得た。この本の作者自身も、後書きの中で、この本を書いたきっかけの1つが、一般の人から「賢治が日蓮主義に傾倒したのはなぜか?」という問いを受けたためだと言う。

大変に興味深い本で、私がその後、明治から第二次世界大戦までの日本の宗教運動に興味を持つきっかけとなった。

日蓮主義を巡る思想で大変に驚いたのが、日蓮主義の指導者だった田中智学の理論の中の、仏教の開祖・釈迦の一族と天皇の関係だった。

明治維新後の日本は、天皇を頂点とした神道を精神的支柱としたが、その天皇とインドの釈迦一族は無関係だと考えるのが、現代の普通の発想ではないだろうか?

私も上手く説明できる自信がないが、簡単に智学の理論を説明するとしたら、

「インドの釈迦の一族が東方に移住した結果、日本国を作った天皇の一族のルーツとなった」

と言う理論であろうか。

【写真は、 「日蓮主義とはなんだったのか」表紙】

(続く)

2024(令和6)年3月6日(水)

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